序
その惑星は『ドルセット』と呼ばれる。
淡い輝きを持つ二つの月がその惑星を見守っている。
その惑星『ドルセット』には様々な種の『人』が住んでいる。
例えば『獣人』。獣人とはその言葉通り獣と混じりあったような姿をしており、その獣の特性をもち合わせている『人』である。
例えば『精霊』。精霊とは敢えて表現するのならば、実体をもたないエネルギー生命体であり、その属性により見合った外見を構築する『人』である。
例えば『翼人』。彼らは翼を持ち空を駆けゆくことができ、そして魔力と呼ばれる力をとても強く持つ『人』である。
例えば『人間』。彼らが最もこの惑星内に多くいる種族であろうと思われる。
そして、どの種族にも共通することだが、その種分けはひどく細かく、同じ種族でもその能力、寿命はかなりの幅が有る。
そして、彼らは共通して互いの種を尊重した。
種によって異なる外見・習慣・生活・能力・習性・感性・思考。
それ故に彼らは互いの種を知るということを重要視する。
互いに尊重し、共に暮らしてゆく手段として。
だからといって特別に偏見、誤解、差別がないという訳ではなく、ただ、同じ時間、同じ世界に過ごす存在。異種族間の争いを避ける。それだけの為のようにも見受けられる。
惑星の科学発達レベルは低いが、かわりに『魔法』と呼ばれる特殊な技術が発達している。
『魔法使い』・『魔導師』・『魔女』と呼ばれる魔力を行使する『人』は各種に居り、その技、知識を競う様は我々が科学技術を探求する様と重なる。
この惑星の経済レベルは高くなり低くなりと定期的な変動を続け、一定を保っている。
国家間の争いがないわけではないが、時を測ったかのように現れる共通の敵『魔王』の存在が国家間戦争を引き起こさないためのストッパーになってると思われる。
『魔王』については理解できるほどの情報が少ない。
解っていることだけを述べるのなら、『魔王』は『魔族』と呼ばれる種族とその範疇に入る種である『魔物』を統べる存在であり、大概において『世界の破滅』、『世界の支配』を望むものであるという。
『魔王』となるものは強き力を持つ『人』であるという。
この世界で最も長く続いている王家は天空高くに浮び、結界に包まれた浮遊島『浮島・シリス』を統べるスカイロード王家。
彼らは不可思議な時間律に生きる『人間』であると思われる。
結界により閉鎖されている彼らへの接触は困難を要する。
世界に生きる種。それは数え切れぬほどに多く、『シリスの民』以上に会うことの出来ぬ種。『竜族』を初めとし、『幻始精霊』、『森の民』、『聖霊獣』などと、そう呼ばれる彼らが本当に存在すると言い切るには疑問が残る。
残った謎、そして解明されぬ疑問は多く、今後とも長き目での観察が必要と思われる。
ドルセット・レポート
惑星ドルセット観察者ナンバー7
エゼンリィ・ハウゼン
後記
その後、エゼンリィ・ハウゼンは惑星ドルセットに降りたと思われるが連絡が途切れ、回収された船に残ったレポートは同様に行方不明になった観察者のレポートをまとめたものだと思われる。
しかし、ドルセットについてのレポートはこの一通のみであり、その功績を讃え議会はエゼンリィ・ハウゼン氏を中央政体研究所員より、名誉議員とする事をここに記す。
追記
エゼンリィ・ハウゼンの規律違反に対し、中央政治政体研究室より除名す。
不干渉規約違反、不当侵入罪については帰投しだい喚問を行うことをここに記す。




