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第53話(最終話)千秋楽

 

 凛音引退公演の千秋楽。蒼月と悠遊、清切が揃って観劇に来てくれた。舞台が跳ねて、皆が充実した達成感でいっぱいの中、楽屋に三人は顔を出した。


「やあ、咲弥。千秋楽おめでとう」

「清切様、ありがとうございます。楽しんでいただけたでしょうか」

「もちろんだよ。素晴らしかったよ」

「ありがとうございます」

「私は紫苑の楽屋へ顔を出して来るね」

「はい。座長が喜ぶと思います」


 清切はにこやかに去って行った。


「千秋楽おめでとう。お疲れ様」

「姫ちゃーん。すっごい良かったよ!ぼく感動した!」


 清切との挨拶を黙って見ていた蒼月と悠遊は、ようやくサクに声を掛けた。


「ありがとうございます。自分にできることは出し切れました」

「そうか。それはよかったな」

「でも本当に姫ちゃんが舞姫になっちゃうなんて、びっくりだよね!」

「はい、自分でも信じられないくらいです」

「まさか、座長さんが清切様と結婚するなんて!」


 そう、紫苑の引退の理由は清切との結婚だった。

 紫苑のアプローチに清切が落ちたようだ。

 清切は結婚しても座長を続ければよいと言ったが、紫苑は引退して清切にだけ尽くしたいとの意向だった。


「清切様は素敵ですもの。座長が恋するのもわかるわ」


 サクがそう言うと、蒼月が少しだけ拗ねたようにサクを見つめた。


「清切は、素敵なのか?」

「ええ、素敵です」

「そうか…。咲弥は清切のような男が、その、好ましいのか?」

「清切様のようなお方は、女性ならみんな好ましいのではないですか?」

「そうか」


 無表情でもいじけているのが伝わって、サクは思わず噴き出した。


「ふふふ、もちろん蒼月様も素敵ですよ。私は蒼月様が好きです」

「…そうか」


 そんなやり取りを悠遊はげんなりした顔で見ていた。


「一体僕は何を見せられているんだ…?」


 見渡せば、どこもかしこも恋人たちばかり。

 それぞれに幸せを手にし、新しい人生を歩み始めている。


「わーん、ぼくってあぶれてる?そうだ、彩喜さんはお一人様なんじゃ?彩喜さーん」


 彩喜のもとへ行った悠遊は相手にもされなかったようだ。

 怒った彩喜に、今後神楽座への立ち入りを禁止されたとか、されなかったとか。




 その後の話をしよう。


 雷門と凛音は、たたらの里へ戻り、祝言を上げた。 翌年には男の子を、その後も数年続けて子供を産み、5児の親となった。凛音はたたらの女衆の取りまとめ役となって、男たちをも牛耳る肝っ玉母ちゃんとなった。そんな凛音をいつまでも雷門は愛しつくした。たたらの里からは時々、堪能な横笛が聞こえてくると評判になった。


 ヤタガノ村では、デグとミツが長年の純愛を実らせ入籍。幼馴染の祝言に咲弥も駆けつけた。チナは神社の巫女の跡を継いだ。いつか王都へ行って神楽座で舞うと夢を語るも、ついに一生を村で過ごし、堅実な幸せを築いた。


 紫苑は清切と結婚した後、平凡な家庭に憧れてしばらくは家で清切のためだけに過ごしていたが、子宝には恵まれず、美容の商売を始めた。紫苑が開発した化粧品はどれも肌を美しく見せる上、安全性も高いと人気となった。清切の親戚の家から養子を取り、我が子のようにかわいがる姿が目撃されている。


 彩喜は素晴らしい経営手腕を発揮。ヒット作をいくつも産み出し、瑠璃光院から人気の役者もどんどん排出した。若くして舞姫となった咲弥は長くその地位を務め、朱雀の王都にこの人あり、と周辺各国にまでその名声が響いた。中でも紅蓮の天女を得意とし、再演を重ねる度、国中からひと目見ようと人々が集まる騒ぎとなるほどだった。


 咲弥の活躍を側で支えた蒼月は、王の実子でありながらそうとは知られず、その能力が買われて天翔王の治世を中枢で支える傑物となった。その見目麗しさから女性に人気であったが、中年と言われる年まで独り身だったことから、様々なことが陰で囁かれていた。


 もう結婚をする気はないのだろうと、皆が思っていたところ、大人気の舞姫が引退した直後に婚姻を結んだことで、二人の恋物語が純愛として世間で大変な話題となった。


 引退後の咲弥はその後一切、公の場に姿を現さなかったと言う。






たくさんの作品の中から本作を読んでいただき、ありがとうございました。

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