042:勝利の宴?
さてさて、報酬はしっかりと受け取らないとだよね。
粒子となって消滅したスケルトンキングの代わりに出現した白色に輝くする魔石に舌を伸ばした。
毎度お馴染みのドロップアイテムだ。
ボウリンングの球ぐらいの大きさがあるな。
そういえばボウリングの球って、人間の頭とほぼ同じくらいの重さだと聞いた事がある。
持ってみた感じ、この魔石もそれくらいの重さだな。
それとスカルドラゴンの魔石と比べるとかなり光り輝いているようにも見える。
ずっしりとした重み、魔石の明るさ、これはたっぷりと経験値も詰まってそうだし、味も期待できそうだ。
――じゅりゅり。
よだれが出てしまうほど期待している自分がいるぞ。
いけない、いけない。
早く食べないと体中の水分が失われてしまうな、これは。
ではでは、いただきまーす!!
――ガリガリボリッ!!
うっ!?
うぉおおおおー!!
なんだこの美味しさは!?
手羽元を骨の髄までしゃぶりついているこの感じ!
スケルトンキングの魔石なのに、肉の味がするのはなんでなの!?
たまらなく美味い。なかなかに美味だ!
ここ半年間、美味い魔石を食べなかった反動だろうか。
――ガリガリボリガリッ!!
うぅ……あぅ……。
涙が出るほど美味しいよ。
涙とよだれで本格的に体の水分が失われていきそうだ。
あぁ、本当に美味しいものを食べると涙が溢れ落ちちゃうのね。
前世ではあんなに美味しい料理がたくさんあったのに、涙を流したことなんて一度もなかったな。
それなのに手羽元に近い味でこんなに感動できて、心の底から美味しいって思えるだなんて。
半年間の努力が報われた気がするよ。
うおっ!?
魔石の味に感動していると、体が輝き始めた。
これは、あれだ。
レベルアップの前兆だ。
《個体名〝ミミックちゃん〟はレベル26に上がった》
ほら、やっぱりそうだ。
レベルアップしたことによって体の欠損部分も傷も何もかもが元通り。
美味しいものを食べて全回復とか最高すぎるぞ。
《個体名〝ミミックちゃん〟はレベル27に上がった》
うぉおおー!
さすがスケルトンキングの魔石だ。
一気に2レベも上がるだなんて!
いや〜、めちゃくちゃ強かったもんな。昔の私だったら瞬殺されてたに違いないよ。
それに魔石も美味しかったし。
それだけ経験値が詰まってたってことだよなぁ。
って、また体が光り出した!?
まだまだレベルが上がるのか?
《個体名〝ミミックちゃん〟は〝シルバーボックス〟から〝ゴールドボックス〟に進化しました》
レベルアップじゃなくて進化か!
ゴールドボックスって言ったよね!?
うぉ〜、なんだか体の素材が金属にグレードアップしたような気がする。
それにまたひと回り大きくなってる!
決して太ったわけじゃないぞ。成長して大きくなっただけだぞ。
前回進化したときは闇属性魔法を獲得したけど、今回は何を獲得するんだろう?
他の魔法かな? 炎とか? 水とか? 雷も捨てがたいよなぁ。でもやっぱり光とかもかっこいいよね。
それか特殊効果とか? ほら、貫通効果みたいなやつ!
麻痺とか毒とかの効果もいいよなぁ。戦術が一気に増えそうだ。
それかスキルみたいなのとかもいいよなぁ。無限にアイテムを収納できる収納ボックス的なやつ。 (宝箱だけにね)
あ〜、なんだろう。なんでもいいから何か便利なやつ獲得したいー!
わくわく。ドキドキ。
なにかなぁ〜、なにかなぁ〜。
なにかぁ〜、なにかなぁ……。
か、かなぁ……。
って、何もないんかーい!!!!
全然喋ってくれないじゃん。
どうしちゃったのさ、脳内の声さん!
進化したからといって何か特典があるってわけじゃないの!?
期待して損した! (プンスカプンスカ)
まあ、いいや。
今更不満を垂れても仕方ないよね。
今はネズミさんたちが無事なのと、縄張りを守れたこと、それにレベルアップしたこと、進化したことを喜ぶべきだろう。
「チュウチュウッ!!」
「チューッ!!」
「ズウッズウッ!」
「ズウーッ!!」
ほら、ネズミさんたちもこう言ってるし……って、交尾してんじゃん!
喘ぎ声だったのかよ……。
というか安心するの早すぎじゃない!?
いや、敵を倒して安心するのはわかるけどさ、それでも交尾するのは違くないかい!?
どんだけ欲求不満なのよ。そしてどんだけ欲に忠実なのよ。
くー、けしからんし、羨ましすぎる!!!
いいもん、いいもん。
私にも運命の人が現れるもん。
その人とピーなことしてピーをピーしてピーするんだから。
って、今の放送禁止用語だった? (てへっ)
「ズウッ、ズウッ」
おっ、キングラットくん。
キミはいつも私を気にかけてくれるね。
いいえ、私だけじゃない。
みんなのことを気にかけてくれる。
優しくて頼りがいのあるリーダーだよ。
で、何かな?
「ズウッ、ズゥッ!」
キングラットくんが私に何かを渡そうとしている。
えーっと、これは……?
舌で受け取ってからようやくわかった。
これは……大人のおもちゃだ。
なぜに今これを渡してきたんだ?
「ズウ!」
なんかものすごく笑顔だし……。
まあ、キングラットくんなりの感謝の気持ちなんだろうけど……皮肉じゃないよね?
相手がいないからひとりでやってろ、ってことじゃないよね。
まあ、いいや。考えるのはやめよう。
――ヴィィイイインッ。
せっかくだし、とりあえずマッサージでもするか。
レベルアップして体の調子は絶好調なんだけどね。
私は大人のおもちゃを体の背面に当てた。
人間の体で例えるなら背中だ。
んんんんんんんっああああああああっ。
激しく振動するだけで、気持ち良くはないいいいいいいいっ。
やっぱり舌の周りの筋肉以外は気持ち良くないのよねぇえええええええええっ。
でもこの振動はクセになるぅううううううっ。
扇風機の前であぁあああああああとか言ってしまうあれのようなぁあああああ。
というか振動が激しいマッサージ機に乗っているかのようなぁああああああ感覚ぅううううう。
どちらかと言えば後者が近いぃいいいい。むしろ後者だぁああああああ。
異世界の大人のおもちゃ、振動やべぇえええええええ。
性感帯に一番近い場所は、舌周りの筋肉だということはわかっている。
だけどそこには当てない。
ただただ虚しくなるだけだとわかっているからね。
「チューッ!!」
「ズウーッ!!」
勝利の宴の代わりにネズミさんたちの喘ぎ声と大人のおもちゃの振動音が、洞窟内に響き渡った。
――誰でもいいから私の〝初めて〟を奪ってよぉおおお〜!!!




