040:ミミックVSスケルトンキング〝特訓の成果を見せる時がきた〟
100体強のスケルトンが合体して、1体のスケルトンキングになった……。
質量どうなってるの、ってツッコミたいところだけど……今はそれどころじゃない。
スカルドラゴンよりも遥かに強いスケルトンキングをどう対処するかだ。
話し合いで解決するような相手じゃないし、って、言葉通じないし!!
「………………」
そもそもあっちは無言の圧を貫いてるし。
ひぃいいい。
本当に怖いわ。
禍々しいオーラも、恐怖の象徴とも言える見た目も、トラウマも、何もかもが相待って本当に恐ろしいぞ……スケルトンキング。
恐怖を感じていた刹那、スケルトンキングの杖がドス黒い光を放った。
――ヴォヲォンッ!!!
その直後、レーザー光線のような破壊音と共にネズミさんたちが収集した金銀財宝の山が弾け飛んだ。
まるで風船が破れたかのような勢いで弾け飛んだのだ。
何が起きたのかすぐに理解した。
あの杖から魔法を放ったんだ。一瞬だけど、魔法陣のようなものも見えた。
やばい。やばいぞ。
今の魔法だけでもスカルドラゴン以上に強いことがはっきりとわかった。
「チュウー! チュウッ! チュウ!」
「チュウ、チュウッ、チュウ!」
「チュッ、チュウ! チュー!!!」
ああ、まずい。
ネズミさんたちが混乱し始めてる。
一旦、ネズミさんたちを避難させないと。
でもスケルトンキングが避難させてくれるとは思わないし……。
「ズウ! ズウッ!」
「キィイイイ!? (キングラットくん!?)」
私を庇うように立ったのはキングラットくんだ。
キングラットくんは、私やネズミさんたちを守るために戦おうとしている。
なんて優しいネズミさんなのだ。
でもキングラットくん、キミの役目は戦うことじゃない。
私はさらにキングラットくんの前に立った。
キングラットくんの役目は、混乱しているみんなの指揮をとり、ここから避難させること。
私の役目は目の前の敵を――スケルトンキングを倒すこと。
「キィイイキィイキィイイッ (ネズミさんたちを避難させて)」
「ズゥ……」
「キィイ! (早く!)」
切羽詰まった私の声に、キングラットくんは渋々と踵を返し、ネズミさんたちの方へと向かって行ってくれた。
それでいい。それでいいんだ。
ここは私一人でやる。
勘違いして欲しくないのが、これはキングラットくんたちへの恩返しのつもりでやってるわけじゃないってこと。
これは私のスケルトンへのリベンジだ。
相手がさらに強敵になってる件に関しては文句を言ってやりたいけど、それ以上に私は強くなった。
この半年間真面目に特訓してきたんだ。
魔法も戦闘面でも真面目に、この先を生き抜き、このダンジョンを完全攻略するために特訓してきたんだ。
特訓の成果を見せてやろうではないか。
そう意気込んでいると、スケルトンキングの杖に魔法陣が浮かび上がった。
刹那、ドス黒い光線がキングラットくんたちに向かって放たれた。
――ヴォヲォンッ!!!
必殺――闇の光線ッ!!!
――ヴォヲォーンッ!!!
私はすかさず闇属性魔法を発動して、スケルトンキングの魔法を相殺する。
レーザー光線のように速い魔法でも狙い撃ちできるようになったのだよ。
あぁ、思い出すだけでも涙が。
あれは、すばしっこいコウモリの魔物と戦った時で……って、今は思い出に浸ってる場合じゃない!
「キィイイイ! キイイキイィ! (私が相手だ! スケルトンキング!)」
ふっ、決まったな。
綺麗に決まりすぎて私自身も驚いているよ。
あぁ、綺麗に決まりすぎているが故に、これが死亡フラグにならなきゃいいけど……。
「………………」
ひぃいいいい。
相変わらずの無言の圧。
でも意識は完全に私の方に向いたな。
これでネズミさんたちの避難がしやすくなったに違いない。
さて、ここからが戦いの幕開けか。
さっきの行動が死亡フラグではないことを証明しなければな。
おっ、また杖に魔法陣が出現した。
ということは、魔法の攻撃がくる。
…………あ、あれ?
魔法がこない?
って、えぇええええええ!?
地面から腕ぇええ!?
地面から腕の形をしたドス黒い物体が出現し、私の体をしっかりと掴んでいた。
てっきりさっきのドス黒い光線が飛んでくるのかとばかりに思っていたよ。
くっ、やられた。
これで私は身動きが取れなくなった。
恰好の的ってわけね。
この状態じゃ躱すのは困難ね。
ドス黒い光線が急所に当たれば、強くなった私でも耐えることはできないだろうな。
だが、この状況問題なしだ。ノープロブレムだ!
必殺――闇・回転攻撃ッ!!!
私は体を黒く発光させながら回転し、ドス黒い腕を振り払った。
そう、これは闇属性魔法を自分に付与した新技だ。
ふっはっはっは。
魔法ってのは放つだけではないのだよ。
こうして己の体に発動し、己自身の身体能力や攻撃力、防御力などを高めることが可能なのさっ!
「カパカパカパカパカパカパカ!!」
どうだッ!?
私の回転の威力はー!!
笑いが止まらん。
「………………」
あっちはリアクションが薄いな……。
驚いた顔とか見たかったんだけど、まあ、仕方ないよね。
そういうキャラということで納得してあげようじゃないか。
――ヴォヲォンッ!!!
ぎゃぁああああ!!
ノーリアクションからの魔法攻撃だ!?
だが、回転中の私には当たらないよ。
そんな魔法攻撃止まって見えるわ。 (だいぶ言い過ぎなのはわかってます)
回転の勢いと付与した闇属性魔法が消える前に……ジャーンプッ!!!!
私は回転しながら跳躍した。 (まるでヘリコプターのプロペラだな)
そしてここが私の跳躍の最高到達点。
いやぁ〜、随分と高く跳べるようになったもんだなぁ。
これも進化と特訓と闇属性魔法を付与したおかげだな。
あとは自由落下するのみ。
でもただじゃ落下はしないさ。
このままあの技をお見舞いしてやる。
豆粒くらいの大きさだけど……攻撃対象を確認!!
いっちゃるぞー!
必殺――闇・尻落とし攻撃ッ!!!
どりゃぁあああああああ!!!
スカルドラゴンには、やろうとは思わなかった尻落とし攻撃だ。
闇属性魔法を付与している今なら攻撃力も防御力も格段に上がっている。
宝石以上に――私の体以上に硬い骨に当たったとしても、自滅する心配はなくなったのだよー!
見ろ、今の私を!
まるで隕石が落下しているみたいじゃないか!?
――ドゴガーンッ
私の攻撃は見事に命中し、激しい衝撃音を響かせた。
技が決まったのと同時に、体に付与していた闇属性魔法が消える。
付与できる継続時間ってのははっきりとは決まってないが、かなり短い。
もっと強くなれば継続時間も増えるんだろうけど、今は1回の魔法付与だとこれくらいが限界だ。
私の攻撃は隕石ほどのスケールではなかったものの、しっかりと地響きを立て、地面を揺らしていた。
避難中のネズミさんたち、驚かせちゃってごめんなさい。
さて、ネズミさんたちに謝ったところで、肝心のスケルトンキングは驚いているか?
土煙の中、目を凝らす。
スケルトンキングの影は見える。
平然と立っている感じが気に食わないな。
ダメージもきっと受けてないんだろうな。
「………………」
そしてやっぱり無言で無表情か。
ノーリアクションばっかりじゃ、私の技が強くなってないみたいじゃんかよ。
強くなったんだからね。私も技もー!
その証拠にスケルトンキングに直接攻撃しても、私は全然痛くないんだから。
反動的なダメージがないんだからねー。
だからちょっとだけでもリアクションしてくれたっていいじゃんかー。
「………………」
――ヴォヲォンッ!!!
しまった!!
土煙で魔法の発動がわからなかった。
ドス黒い光線が目の前に――!!
――躱せない。
闇属性魔法で防御力を――間に合わない。
……油断した。




