036:ミミックVSスカルドラゴン〝限界〟
魔法と魔法の撃ち合い。
一方的にやられているものの、私は夢中に魔法を放ち続けた。
時間を忘れるほど……己の限界を忘れるほどに。
「ギィギィ…… (はぁはぁ……)」
やばいな。
調子に乗りすぎたかも。
先に限界を迎えたのは私だった。
当然といえば当然だろう。
魔法だって無限に出せるわけがないんだから。
それすらも考えずに魔法を放ち続けた結果だ。
全身に広がる疲労感がそれを物語っている。
受け入れるしかないよね。
魔法のご利用は計画的に、ってやつか……。
くっそ。
半端ない疲労感だよ。
40度の熱が3日続いた時よりも辛いぞ……。
ここはもう火の海で、40度なんて可愛いもんだけどね。
というかこの疲労感がきたのいきなりだったぞ。
疲労感を途中で感じたんなら、夢中になって魔法を連発とかしないんだから。
それにしてもスカルドラゴンのやつは余裕そうだな。
私はとうに限界を超えてるってのに……。
そりゃそうか。
同じだけ魔法を放っていてもスタミナ? MP? みたいなものの根本的な量が全然違うんだ。
敵うはずがなかったんだ。
私がどこかの物語の主人公なら勝てたかもしれないけど……そんな主人公補正は私にはない。
だからすぐにここから脱出しないと……全て終わっちゃう。
何もかも、夢も、希望も、命も、全て終わっちゃう。
魔法は……多分あと1発くらいは発動できる。
魔法を発動して隙を作れば脱出可能だろう。
魔法を撃ち合ったことによってあっちは私は逃げないと油断しているはずだ。
出口への警戒も怠っているはず。
次の1発が勝負だな。
「WOOOOOOOOOO!!!!」
くる!!!
まずはスカルドラゴンの炎の弾を躱そう。
その後は私の番だ。
――ブォゴンッ!!!!
ぬぉおおおおー!!!!
私はスカルドラゴンの炎の弾をギリギリ躱すことに成功した。
疲労感半端ないから躱すのも精一杯だ。
でもギリギリ躱せたー!!! ギリギリのギリギリだー!!
このまま体勢を整えずに真っ直ぐ魔法を放つぞ。
そうじゃなきゃ隙なんて作れない。
いくぞ!
必殺――闇の光線ッ!!!
――ブヲォンッ!!!
私が発動した闇属性魔法は、真っ直ぐに飛び、スカルドラゴンの顔面に命中する。
よしっ!
一瞬でも意識が別の方へ向いてる今が脱出のチャンスだ!
このまま出口へエスケープ、エスケープーッ!!!
「ギィッ…… (うぐッ……)」
え? 嘘? 嘘でしょ?
なんで……なんでこのタイミングで……
体が……動かなく、なるのよ……。
私の体は崩れるように地面に倒れ込んでいた。
そうか、あの疲労感は私に限界を知らせてたんだ。
限界なんてとっくに超えてると思ってた。
でもそれは私自身が決め付けていた限界だ。
本当の限界……それをさっきの魔法で超えてしまったんだ。
くっそ、くっそ、くっそ。
なんで、最後の最後で……。
あとは逃げるだけだったのに。
逃げるのに十分な隙を作れたのに。
それなのに、それなのに……私の体が先に動かなくなるなんて、あんまりじゃないか。
動けよ。動け!!
まだ間に合う。まだ逃げられる。
だから動い……て……。
あぁ、まずい……意識も……消えそうだ。
今までも何度も死にそうになる思いをしてきたけど……今回ばかりはマジだ。
マジで死ぬ。
死にそうになるって感じじゃない。
もうすでに死んだって感覚に陥ってる。
もうダメなんだって……もう死ぬんだって……。
体が動かないんじゃどうしようもないよね。
って、諦めてる自分がいる。
ここで目を閉じたら楽になれるかな?
って、生から逃げる自分もいる。
だけど目を閉じようとしない自分もいる。
まだ抗おうとしている。こんな状況、状態でも……。
でもそれももう限界だ。
瞳が勝手に閉じていく。
瞳が完全に閉じ切る前、紅蓮の閃光が視界に映った。
スカルドラゴンの炎の弾だ。
確信したよ。
私はあの炎に焼かれて死ぬんだってことを。
あぁ、短い箱生だった。
でも悪くない箱生だった。
ミミックの体も悪くなかった。
意外と楽しかったかも……ね。
「WOOOOOOOOOO!!!!」
――ブォゴンッ!!!!
瞳を閉じていてもわかる紅蓮の閃光に私は悟った。
死んだのだと。




