21.制圧完了
崩れた城壁のところへ行くと、マズドールが気絶して倒れていた。
「俺のせいで潜入失敗とかになったら困るな…」
心配で街の中をきょろきょろ見回した。
マズドールと出会う前と変わらず怒号が聞こえる。
「ハルキさん!」
「ハルキ!」
ルゼとタンクがやってきた。
「ごめん。潜入失敗しちゃった?」
「いえ、潜入は上手くいっています。それにしてもこの城壁は?」
「あー。なんかみんなを待ってたら、マズドールって奴に見つかっちゃって」
「「マズドール?」」
ルゼとタンクは驚いていた。
「えっ?知ってるの?」
「ここの責任者らしいぞ」
「それに私とお姉ちゃんの学生時代の同級生です」
「え!?この街の関係者なのはなんとなくわかってたけど、同級生?」
俺はルゼの同級生を倒してしまったとわかり、だいぶ焦った。
「はい…。私達に必要に絡んでくるめんどくさい男でした」
「嫌い?」
「え?はい、嫌いです」
「良かった―」
俺は安心した。
「ルゼの友達を倒しちゃったのかと思ったー」
「倒した?マズドールを倒したのですか?」
「うん。ほら」
俺は気絶しているマズドールを指差した。
「ほ、本当ですね…。角も折れてる」
「これ、一応拾っておいたよ」
「こんなもの捨てておきましょう。タンクさん、マズドールも牢屋にお願いします」
「わかった」
タンクはマズドールを引きずってどこかへ向かってしまった。
「それで今どんな状況?」
「私の話をする前に、ハルキさんとマズドールに何があったか教えてください!」
俺はルゼの圧に押されて、あったことをすべて説明した。
「話は理解しました。ということはその装備は…」
「うん。ビュラとビーとティーだよ。これって解除できないのかな?異世界装備!」
目の前にウィンドウが出てきた。
俺は【解除】をタップすると、身体が光って装備が無くなった。
俺の横にはビュラ、足元にはビーとティーが現れた。
「楽しかったねー」
「あいつを蹴れたね」
「全然走れなかった―」
3人はだいぶ能天気だった。
「ね?」
「本当にみなさんを装備してたんですね」
ルゼは驚いていた。
「時間が止まったというのも気になりますし、聞こえてきた男性の声も気になります」
「そうだね。あの時は死ぬかと思ったから気にならなかったけど、何なんだろうね」
俺は考えてみたが、答えは出なかった。
「それで街の方はどうだったの?」
「そうでした。その話をしないとですね」
ルゼは街の中であったことを話してくれた。
「なるほど、タンク達のお手柄だね」
「はい。だいぶ助かりました」
「この後はどうするつもり?」
「本当は制圧後に、街に帰ってくるマズドールを倒すつもりだったのですが…」
「俺が倒してしまったと」
「はい。なのでこの街をファジャの父親のガシャールさんに管理をしてもらい、一度蟻人族の街に戻ろうと思います」
「兵士やマズドールは平気なの?」
「力が抑えられる手錠をつけ、牢屋に入れます…」
ルゼは少し気まずそうな顔をしていた。
多分俺に気を使っているのだろう。
ここに長年捕虜としていた者達と兵士が逆の立場になる。
当然、仕返しを考える人もいるはずだ。
気持ちは理解できるが同意はできない。
「捕虜にはまともな環境を与えるように伝えはしますが…」
「…うん。わかってる」
「すみません…」
「戦争みたいなもんだもんね。俺達の世界でもあることだけど、まだ俺は直視できないや」
俺は問題を見て見ぬふりをする事しかできない自分を悔やんだ。
▽ ▽ ▽
俺達はダムザムの居住区の中にある高級な家に集まっていた。
この家はマズドールの家らしい。
さすが街の責任者。なかなかいい家だった。
集まったメンバーは俺とルゼとガシャールさんとランスンさんだ。
ルゼは話を始めた。
「今後の話をする前に、話さないといけないことがいろいろあります。この15年間について2人に教えます」
ルゼはガシャールさん達に異世界に転移したこと、記憶を無くしていた事、俺が異世界人の事などを伝えた。
「なるほど異世界か…」
ガシャールさんは俺の事をジロジロ見ていた。
異世界人が珍しいのだろう。
「ルゼ様はこれからどうするつもりなんだ?」
「ガシャールさん達にこの街を任せて一度蟻人族の街に戻ろうと思うのですが、その前に魔人領の現状をマズドールから聞き出さないといけません」
「そうだな。俺達も外の状況は全く分かっていないからな。それにマズドールが怠惰を名乗っているのも気になる」
「そうですね…。マズドールが目を覚ましたら教えてください」
「わかった。捕まっていた奴らの統率は俺に任せろ!」
「お願いします」
ガシャールさんとランスンさんは家から出て行った。
俺とルゼはマズドールの家を探索した。
▽ ▽ ▽
「どういう状態だったんだ?」
俺はビュラにハルキに装備された時の話を詳しく聞いた。
「うーん。ルゼに戦ってる人の回復をお願いされてたから回復してたの、そしたらいきなり水の中に移動したの」
「それで」
「気付いたらハルキの鎧になってて、いっぱい怪我をしてたから回復してあげた」
「そ、そうか…」
ビュラの話では状況を理解することが出来なかった。
「僕達も装備できるのかな?」
「その可能性はあるな。それが出来ればハルキをもっと助けられるかもしれないな」
「やったー!」
ポンプはうれしいのかくるくる回っていた。
「まずは出来るかどうかの確認だな」
「うん!」
「ハルキ達のところへ行こう」
「「行こー!」」
俺達はビーとティーを連れてハルキ達の元へ向かった。




