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『もとのもくあみ』と『桜という花』
『もとのもくあみ』
ひとり
静かに
歩いて
疲れて
温もりも
感じられず
思いすら
届かない
悲しい
苦しい
それすら
わからなくなって
どうしたら
いいのか
本当に
わからなくなる
迷いの森を
歩く
みたいに
道標を求め
繰り返し
また繰り返して
逃げてみようと
戦ってみようと
諦めてみようと
もがいてみるけれど
一瞬で
もとのもくあみ
泡にも
なれず
塵にも
なれない
イリュージョンみたいに
消えることだけを
切望しても
消えるだなんて
少しも叶わず
生きた証も
手に入らないまま
そしてまた繰り返す
もとのもくあみ
いつになったら
いつになったら
いつになったら?
それまででいい
足元を照らす
灯だけは
心から
欲している
心から
『桜という花』
花に
かおを寄せ
香りに
むず、として
いちまい
それから
またいちまいと
花びら
千切ってゆき
唇、寄せ
蜜を吸う
その薄き甘さを
舌先で
探っていく
手のひらに残る
桜という花
その残骸




