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三章②
切れた腱の再生手術の為に、渡米をしてあの高名なジョーズ博士に執刀してもらった事も話題に拍車をかけた。
世間の格好の話題の的になり、好奇の目にさらされ、菜緒は心身共にまいっていた。
そんな状態でのリハビリの日々、遅々として進まない現状に苛立ちは募るばかりだった。
しかし、必ず復帰する。
この一念だけは捨てなかった。
とにかく走り込む。
下半身強化につとめる。
毎日、毎日、うんざりする毎日。
決して焦ってはいない・・・つもりだった。
医者のプランより、驚異的な早さで回復したかのように見せていた。
今思えば見せていた。
ボールを投げるようになってからも、順調にリハビリをこなしていった。
それもつもりだったのかもしれない。
そして、復帰戦を翌日に控えたブルペンでの投球練習中に、菜緒はまた肘をやってしまった。
彼女は真っ黒な闇に落ちていった。




