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435 帰還

 その後、俺たちは封印窟を抜け地上に出た。暴マーを放り出した穴から。


 地上まではそれなりの高さがあったが、亀妖精が甲羅の表面の一部を円盤状にカットして浮遊させ、それに俺たちを乗せて上まで運んでくれた。こんな器用なことができるとは、さすがディヴァインクラスか。まあ、シャラ(いまだに犬への恐怖で震えている)以外は自力で脱出できそうだったけどな。俺は普通に地上まで跳べるし。他は魔法とか翼とかで飛べるし。


 なお、女帝様のホログラムは暴マー廃棄処分をしっかり見届けたのち、すぐに消えた。眠いと言って。まあ、ガキの体には夜更かしは毒か。実年齢はアレだが。


 実際、俺たちが地上に出たころには東の空はうっすらと白み始めていた。なんだかんだと結構時間がかかったな。討伐ミッションなんて、さくっと終わらせるつもりだったんだけどな。


 ユリィたちは穴のすぐそばにいたようで、すぐに俺たちのところに駆け寄ってきた。


「トモキ様! いったい中で何があったんですか?」


 俺と目が合うや否や、ユリィは血相を変えて尋ねてきた。何やらすごく心配されていたようだ。まあ、当然か。いきなり近くで大きな穴が開いたと思ったら、しばらくしてそこから暴マーとリュクサンドールが飛び出してきたんだからな。いったい何事かと思うに決まっている。


「ああ、実はな……」


 かくかくしかじか。封印窟に入ってからの出来事を全部話した。


「わあ、すばらしいです! トモキ様ってば、ここに封印されていたものすごく強くて悪い人を倒して、復活したあの竜も倒して、忌まわしき呪いから解放されたんですね!」


 俺の話を聞き終えるや否や、ユリィは手を叩いてはしゃいだ。相変わらずリアクションが素直だ。自分のことみたいに喜びやがって。かわいいなあ、こんちくしょう。


「そうか。無事に呪いが解けたか。おめでとう、トモキ」

「勇者殿の目的が完遂されて何よりだ、おめでとう」


 ヤギとキャゼリーヌもこっちに来て、手を叩いてお祝いしてくれた。ユリィもすぐにその真似をしはじめた。エヴァ(TV版)の最終回かよ。


「ま、まあ、俺だけの力でミッションコンプリート出来たわけじゃないけどな。こいつらの力もそれなりに頼りになったし」


 なんだか照れくさくなってきたので、近くにいる他の連中を指さした。しかし、変態女以外はみんなその場でうずくまっていて、ノーリアクションだった。


「ユリィ、みんな疲れているのよ。すごく激しい戦いだったの」


 変態女がフォローのように言った。確かにヒューヴのやつは寝ているし、その説明であってるんだろうが、他の二人は違うだろ。リュクサンドールなんて涙目で恨めしそうに空をにらんでるんだからな。どんだけバッドエンド呪いがこの世から消えたのが口惜しいんだよ。


「とにかく、ここでの用は終わったんだ。とっとと帰ろうぜ」


 俺も疲れたしな。


「そうですね。本当にお疲れさまでした」


 ユリィは俺に微笑んだ。そして直後、俺の胸にもたれかかってきた!


「ちょ、おま……」


 いきなり大胆過ぎるぞ! みんな見ている前だというのに!


 ああ、でも、ユリィの肌の感触めっちゃ気持ちええな! 疲れた体にそのぬくもりがしみ込んでいくような。それにちょうどそのやわらかおっぱいが俺の胸板に当たるじゃないか! これはなんという至福ぅ……。


 って、そういや俺、もう幸せになっていい体だった!


 そうよ。そうわよ。あのクソ呪いが解けたんだもの。俺、今この胸の中にいるこの子と一緒にハッピーエンド人生歩んでも全然問題ないじゃないか!


 そうだ。ユリィもきっとそれを察して、俺に抱きついてきたに違いない。今こそ、その気持ちにこたえるべき! みんなが見ているとかそんなの気にしている場合じゃない。最終的に俺たちは、け、結婚とかしてだな、だな? こ、子供は二人とか作っちゃうわけで、そういう人生が今開けたということは、当然その過程で俺たちのアツい関係は周囲に明らかになるわけで、結局それが早いか遅いかの違いしかないよね? よね? つまり今ここで、俺はユリィに気持ちを伝えるべきじゃないか。そ、そういうターンが回ってきたって感じじゃないか、この状況? うおおおおおっ!


「ユ、ユリィ! 聞いてくれ! 俺、お前に言っておきたいことがあったんだ!」


 俺は激しい動悸の中、懸命に声を張り上げた。正直、どんな戦いの前より緊張するう……。


「お、俺、実はずっと――」

「…………」

「お前のこと――」

「…………ぐぅ」

「って、あれ?」


 なんか様子がおかしいんですけど! あわててユリィの顔をのぞきこむと、すやすや眠っている様子だ……。


「お、お前……俺に抱きついてきたわけじゃなかったのか……」


 ただ寝落ちしてただけですやん!


「そういや、お前、眠いのには弱かったよな」


 考えてみりゃ、もう夜明け前だ。これまでずっと寝ずに俺たちの帰りを待っていたんだ。ユリィにしてはものすごく頑張ったと言えるか。


「ま、いいか。話ならいつでもできるし」


 俺は笑った。体からどっと力が抜けてきて、俺も超眠くなってきた。けれど、同時に俺はめちゃくちゃいい気分だった。だってもう、この胸の中にある幸せから逃げなくていいんだもんな。えっへっへ。

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