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421 ベルガドの祝福

「まあ、何はともあれ、これで討伐任務完了か」


 その後、俺はすぐにパンツとズボンを拾ってはき、周りを見回した。やはりもうラファディの気配はどこにもなかった。氷も全部溶けていて、あたりは水浸しだ。やつの(コア)は消滅させたから、これらは正真正銘ただの水か。


「やったわね、勇者様。今回も完璧な勝利よ」


 やがて変態女たちが俺のところにやってきた。ヒューヴもいつの間にやらパンツとズボンを履いている。


「いやあ、まさか土壇場で下半身をさらけ出してパワーアップして敵を倒すとは思いませんでした。さすが最強の勇者様ですね! 我々の想像のはるか上をいく非常識な戦いっぷりでした!」


 呪術オタは何やら俺を称賛しているが……お前に非常識とか言われたくねえよ、クソが。


「……で、そろそろ俺たちの前に出てきたらどうなんだ、ベルガド? お前の頼みはちゃんときいてやったんだぞ?」


 俺は足元のクソデカ甲羅に向かって叫んだ。そうそう、亀の依頼は完了したんだから、あとは祝福というお礼をもらうだけだよな。そのためだけにここまで来て、そのためだけに戦ってたんだからさ。


「わかっておる。お主との約束、反故にするつもりはないぞ」


 と、言いながら、亀妖精は俺たちの前にすぐに現れた。相変わらず間抜けな格好の思念体だな。


「よし! じゃあ、さっそく祝福とやらを俺によこしやがれ!」


 まあ、細かいことはもうどうでもいい。やっとここまで来たんだ。一刻も早く、俺の願いをかなえてもらわなければ!


「ではさっそく、お主にワシの祝福を与えよう。さあ、生き返らせたい者の名前を言うがよい」

「え」

「ほれほれ、早く生き返らせたい者の名前を言うがよい」

「え? え?」


 なんのことだか、さっぱりわからんぞ!


「も、もしかして……お前の祝福でできることって、死者の蘇生なのか?」

「そうじゃ。この上なくありがたい祝福じゃろう?」

「ちょ、待て! それはないだろう! 話が違うだろう!」


 俺は呪いを解きたいんだよ! 死んだ誰かを生き返らせたいわけじゃないんだよ!


「何を言うか。死人をよみがえらせることなど、ホイホイできるものではないぞ? ワシの力あってのことじゃぞ?」

「い、いや、お前、俺の事情知ってたよね? その上で、こんなところまで連れてきて、あんな化け物を倒させたよね? その報酬がそれ? それはないんじゃないの、ねえ!」


 俺は亀妖精をわしづかみにして叫ばずにはいられなかった。祝福っていかにもな名前のくせに、呪いを解く効果はないのかよ! いままでの俺の苦労は一体……。


「あ、なんか思い出したぞ? そういえば前に、シャンテちゃんに似た歌う翼(セイレーン)の女の子と付き合ってたことがあったなあ。三百年くらい前だったかなあ」


 と、ヒューヴが何やら急に古い記憶をよみがえらせたようだった。


「でもその子、ある日突然死んじゃったんだよなあ。あの木の実をオレと一緒に食べた後にさあ。赤いかびが生えてたんだよな。なんで死んじゃったんだろうなあ」

「……なんでやろうなあ」


 むしろなんでお前はそのとき死ななかったんだよ、クソが。


「そんで、なんか色々あって、あの緑色の細長い喋る樹に出会って、色々あって、ベルガドの祝福?ってので、その子を生き返らせてもらったんだよなあ。あれはほんとうにラッキーだったなあ、はは」

「ラッキーで済む話なのか」


 この男の話、すべてが軽い!


 だが、今の話を聞く限り、やはりベルガドの祝福とやらは死者蘇生しかできないようだ。まあ、普通の人間にとってはそれでも伝説と呼ぶにふさわしいレベルの奇跡に違いないが……今の俺には全く必要ない力だ! くそう!


「あのう、その……死者蘇生の代わりに、タチの悪い呪いを解くようなことはできませんか?」

「できんのう。ワシ、そんなに器用でもないし?」

「クソが!」


 使えねえ! なにがディヴァインクラスのレジェンド・モンスターだよ! しょせんはただの老いぼれの亀じゃねえかよ!


「うう……俺はいったい何のためにここまで……」


 失意のあまり、その場に膝をついてしまう俺だった。涙だって出ちゃう。だって、男の子だもん。


 だが、そのときだった。


「ちょっとお待ちください。もしかしたら死者をよみがえらせることで、トモキ君の呪いは解けるかもしれません」


 と、リュクサンドールの声が聞こえた。


「いったいどういうことだよ?」

「つまり、ベルガドさんの祝福で、暴虐の黄金竜マーハティカティさんをよみがえらせるんです」

「え、なんで?」

「そうすればトモキ君の魂から、暴虐の黄金竜マーハティカティさんの呪いの力を引き離すことができるかもしれないからです」


 リュクサンドールは赤い目をらんらんと光らせながら、自信たっぷりにそう言い切った。

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