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264 モンスターがいっぱい

 だが、地下へ続く階段を探し始めた直後、俺たちはモンスターに襲われた。グールやゾンビなどのザコ不死族の集団だったので俺一人で余裕で倒せたが(正確にはゴミ魔剣で吸収したわけだが)、それらを倒した直後に、また違う種類のザコモンスターに襲われた。それを倒しても、またさらにザコモンスターが現れた。なんだこのループ。全然前に進まないんですけど!


「ここは本当に、モンスターが多いですねえ」


 と、不死族の教師が近くで言うのが聞こえた。


「いや、モンスターが多いって、俺たち、さっきまでは全然出会わなかったんだが――」


 と、そこで俺ははっと気づいた。こいつはさっき、「ここは危険なモンスターがたくさんいるところです」と言っていた。今の発言も似たような感じだ。


 つまり、こいつにとっては、最初からこの異常なエンカウント率だったってことか? ということはだな……。


『ようするに、このウスラトンカチの闇の魔力がそのへんの低級モンスターを引き寄せてるわけですネー』


 そうそう、そうとしか考えられねえ! 歩く「においぶくろ」かよ、こいつ。


「おい、お前のせいでモンスターが集まってきてるんじゃねえか。邪魔だからどっか行けよ」

「えー、そんなことってあるんですかね?」


 と、リュクサンドールが言ったそばから、黒い犬のモンスター、黒妖犬ヘルハウンドが俺たちに襲い掛かってきた。だが、直後、リュクサンドールの背中から出た闇の翼が瞬時にその体を斬り刻んでしまった。


「お前のその翼、武器にもなるのかよ」

「ええ、僕の代わりに勝手に戦ってくれるんです、便利でしょう?」


 と、言いながら、シュパシュパと周りのモンスターを斬り刻んでいく闇の翼だった。本体の男は棒立ちなのに、闇の翼さん有能すぎる……。


「まあ、お前のバトルスタイルはどうでもいい。お前のせいでモンスターが集まってきてるんだ。邪魔だから消えろ」

「そんな言い方はないでしょう、トモキ君」


 と、ルーシアが俺たちの話に口をはさんできた。


「私たちは先ほど、ともに力を合わせてザック君を救出しようと誓い合った仲ではないですか」

「いや、誓い合ったというほどでは……」


 ただの成り行きですよ?


「それに、私たちのところにモンスターが集まってきている間は、この遺跡のどこかにいるであろうザック君は比較的安全でしょう。むしろこの状況はプラスなのでは」

「まあ、そういう考え方もあるが……」


 ぶっちゃけ、俺としてはザックのことはもうどうでもいいんだが? とっとと地下の謎モンスター討伐して帰りたいんだが?


「トモキ、俺もルーシアと同じ考えだ。ザックの身の安全を考えるなら、ここはあえてモンスターたちをここに集めて、お前が片付けるのが一番だろう。強いお前なら、造作もなくできることだろう?」


 と、ヤギも俺に言うし。


「わたしも同感です。このやり方は、すごくお強いトモキ様にしかできないことだと思います」


 と、ユリィも俺に言うし……って、あれあれ? そんなにもお前ってば、俺を頼りにするようなことを言うのか! うひょー! お前にそんなふうに言われると、俺とたんにやる気になってきちゃうじゃないか! ザックなんかどうでもいいのにさあ!


「……そうか、お前たちがそこまで言うのなら、俺がザコどもを全部片づけてやってもいいぜ?」


 と、ちょうど近くに迫ってきたザコモンスターの一匹をカッコよく斬り捨てながら俺は言った。ユリィ、見てるか、俺の強さ!


「あ、僕も戦えるのでよろしくー」


 リュクサンドールも俺の隣で闇の翼を高速で動かしながら言う。こいつ、寄生獣の後藤みたいな戦い方しやがって。


「あと、始原の観測者アビスゲイザー・ケイオスも使えるので、必要な時はぜひ僕にオーダーしてくださいね。へい、アビオスいっちょう、みたいな感じで?」


 と、何やら、妙なことを言う男だった。


「いや、オーダーも何も、女帝様からあの術の使用許可は出てるんだから、勝手に使えばいいだろ」

「それが、あのとき浜でイルカ相手に始原の観測者アビスゲイザー・ケイオスを使った後、理事長に怒られまして」

「エリーに?」

「はい。あの後、術の反動でしばらく動けない状態になったのがよくなかったみたいなんですね。それで、今後は誰かに頼まれたときだけその術を使えと、きつく命令されまして。例の許可証にもその文言を足されてしまいまして」

「なるほどな」


 まあ、いちいちぶっ倒れられたら教師の仕事にならないからなあ。エリーがキレるのもわかる。


「でも、逆に言うと、誰かに頼まれれば僕はいくらでも術を使えるということなんです。誰かに頼まれれば!」


 リュクサンドールはいかにも物欲しげに俺たちに言った。


 すると、その直後、


「きゃあ、凶悪なモンスターが私のすぐ近くに! 先生、早く始原の観測者アビスゲイザー・ケイオスで倒してください!」


 と、わざとらしくルーシアが言った。見ると、すごく小さいスライムがそばにいるだけだった。お前、それ自分の魔法で倒せるだろ。


「はっはー! 待ってましたよ、この瞬間を! 始原の混沌の、さらに奥深くに潜む悠久の観測者よ! その深淵から、すべての魔力を解き放ち、かの敵を穿て! 始原の観測者アビスゲイザー・ケイオス!」


 と、歓喜の声と共に詠唱し、暗黒レーザーをスライムにぶっ放す男だった。当然、スライムは瞬時に蒸発した。いくらなんでもオーバーキルすぎる。

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