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253 オープンザプライス!

 それから俺たちはザレの村に戻り、集めた素材をトレジャーハンター協会に持って行った。そこで換金してらえるはず……と、思ってたのだが、


「あ、すみません。素材の鑑定と買取りはここの裏にある道具屋でお願いします。うちと提携しているところなんで」


 と、受付係の女に言われてしまった。そういうことは最初に言えよな、もー。すぐにその店に向かった。


「うわあ。こんなによく集めたものだねえ」


 俺たちが素材を持ち込むと、その道具屋の店主のおじさんは目を丸くした。


「じゃあ、すぐに鑑定するから、ちょっと待っててくれ」


 鑑定が終わるまでしばらくヒマそうだった。俺はそこでふと思いつき、「じゃあ、俺、ちょっとそのへんぶらぶらしてくるわ」とみんなに言って、一人で外に出た。


 俺がその後向かったのは、ザレの村の片隅にある魔導メール屋だった。そう、クルードのホテルにいるエリーにザックのことを話しておこうと思ったのだ。さすがに修学旅行中に生徒が一人いなくなったら学院としては大問題だろうからな。いいところのボンボンらしいし。


「……そうかい。わざわざ連絡すまないね。助かったよ」


 魔導メールという名のテレビ電話でザックのことを伝えてみると、エリーは案の定ほっとした様子だった。


「あいつ、今のところ帰る気なさそうだし、しばらく俺たちが連れまわしてもいいか?」

「ああ。伝説の勇者様のあんたが保護してるって聞いたら、あいつの家族も安心するだろ。そうしておやり。どうしても邪魔になったら、縛り上げてそのへんの警察かドノヴォンの大使館に放り込んでおけばいいからさ」

「お、おう……」


 さすが俺の昔の仲間。考えることが全く一緒だぜ。


 それから俺は例の道具屋に戻り、鑑定が終わるのを待った。


 やがて、


「はい、これが全部の素材の買取価格だよ」


 と、店主のおじさんは鑑定価格をメモした紙を俺たちに差し出した。ここはドノヴォンと同じく安価な植物紙が普及しているようだ。


 それを見ると、すべての素材の買取価格の合計は、約二百三十万ゴンスだった。うひょー! 日本円にして百十五万円くらいですぞ! 一日でこんなに稼いじゃった!


「いやー、俺たち昨日この村に来てハンター登録したばっかりなんだけどなあ。いきなりこんなにもらっちゃっていいのかなあ」

「そうなのかい。すごいね。初日でこんなものを見つけるなんて」

「こんなもの?」

「これだよ。最近はめったに見つからない貴重品さ」


 と、おじさんが素材の山から大切そうに掲げたのは、セミの抜け殻に枯れ草がついたような奇妙なブツだった。


「これはベルガド冬虫夏草といって、すごく高額で取引されているものなんだ。ここでの買取価格は百二十万ゴンスだよ。君たち、よく見つけたね」

「え、俺、こんなの知らない――」

「ああ、それを見つけたのはユリィだぞ」


 と、ヤギが俺に教えてくれた。へえ、こんなゴミにしか見えないブツを、ユリィがねえ……。


 集めた素材の中に超高額買取り商品があったのは幸いだったが、俺は内心ちょっと複雑な気持ちだった。というのも、鑑定結果の内訳をよく見ると、俺が集めたぶんより、ユリィとヤギが安全地帯の沼でぬくぬく採集して集めた素材のほうが、ベルガド冬虫夏草とやらのせいで買取価格の合計が高かったからだ。これじゃ、なんだか俺、負けたような気持になるじゃん。あんなに汗水たらして頑張ってモンスター倒しまくったのにさあ。


「ああ、でも、わたしが見つけた他のものは、あまりお金にはなってませんし、トモキ様の集められたもののほうが全体的に買取価格が高くてすごいですね」

「そうだな。さすがトモキだ。仕事に安心感がある」


 と、ユリィとヤギが、そんな俺の気持ちを察したようにフォローしてきた。俺、考えてること顔に出てたかなあ。


「ま、まあいい! 次は絶対負けないんだからな! 俺の方が稼いでやるんだからな!」


 俺はきっぱりと二人に宣言した。

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