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相性の悪い二人


 階段を下り、廊下を歩いて広間に行くと、そこには一体の魔物が立っていました。私たちを待ち構えるようにして広間の中心にぽつりと立っていたその魔物は、魔物ですけど神様であるラスティライズさんです。


「ご苦労様です。さすがに三人もいると、早いですね」


 やってきた私たちを出迎えたラスティライズさんが、そう言ってニヤリと笑いました。こちらは命がけだと言うのに、本当にこの神様は呑気です。

 私はあの後、魔物達を手に入れた槍によって殲滅しました。方法は簡単です。階段の上段から私の能力を籠めた槍を下段に向かって投げつけただけです。槍は魔物を貫通しながらキレイに一直線となって飛んでいきました。槍に触れた魔物は腐って塵となり、そんなのが何発も放たれたんですから彼女達にとってはたまったものではありませんよね。

 結局、槍を手に入れてから殲滅にはそれほど時間はかからず、全滅させる事に成功。私たちは先へと進む事ができました。


「ほとんどエイミさん一人でやったようなものだ。私たちは見ていただけで、手を出す間もなかった」

「手伝ってもらうまでもなかっただけです。次は、期待していますよ。サクラにも」

「は、はい!頑張ります!」


 とは言うものの、出来れば私1人で済めばそれで良い事に越した事はありません。2人には、怪我をしてもらいたくありませんからね。

 ……こんな危険な場所に連れて来ておいて、よく言いますよ。自分の矛盾に笑ってしまいます。


「まだまだ先は長いですからねー。活躍の場はいくらでもあると思いますよー」


 ラスティライズさんの言う通り、道の先では多くの魔物と戦闘になりました。

 進めば進むほど敵は強くなって行き、また様々武器を扱うようになっていったので苦戦を強いられる事になります。でも、こちらにはそれぞれ特化した物を持っている3人がいます。

 まず私は前衛として敵を掻きまわし、ミコトさんは遠距離からの火力支援ができ、サクラは盾としてミコトさんを攻撃から守る役割を果たす。いくつもの戦闘を経た私たちの連携は、確立された物となっていきました。


「──もうダメですっ!疲れたので休憩にしましょう!」


 迷路の中をラスティライズさんの案内で歩き、休憩もなく戦闘に次ぐ戦闘。敵は人間の真似をする化け物で、精神がおかしくなりそうです。根を上げるのも無理もありません。

 だけどそれは、戦っている人が言うべき台詞です。私たちを案内してくれるのはありがたいですが、戦闘には参加せずに眺めていたり、寝そべっているだけのラスティライズさんが言うべき事ではありません。


「……そうですね。ここで休憩にしましょう」

「はぁ~……!」


 私がラスティライズさんに賛同して言うと、ミコトさんが膝に手をついて大きく息を吐きました。ここまで気を張って戦いながら付いて来てくれて、ようやく息継ぎをするタイミングができた感じですね。

 サクラも似たようなもので、ホッとした表情を見せると荷物をその場に降ろしました。

 このグリムダストに入ってから、2度目の休憩となります。私たちは身を寄せ合って地面に座り込み、サクラが運んできてくれた水と食料を地面に並べて仲良くそれらを分け合います。

 口に運ぶのは、ぱさぱさのパンと干し肉で、あまり美味しい物ではないはずです。でも空腹で体力が減っている事もあり、悔しいですが美味しく感じてしまいます。


「はぁ。美味しくて、柔らかくて幸せです。こうしていれば、疲れなんてあっという間に吹き飛んでしまいそうです」

「そ、そうか。それは良かったが……どうしてこんな事になっているんだ!?」


 私はご飯を食べていますが、そこはミコトさんの膝の上です。膝枕をしてもらった上でパンを口にしているので、かなりお行儀が悪いです。でも約束なので仕方がありません。


「それは約束したからです。膝枕しながら褒めてくれると言ったじゃないですか。だからほら、頭を撫でながら褒めてください」

「いや、私はそんな約束をした覚えはないんだが……」


 まぁ確かに、私が一方的にどさくさに紛れて言っただけなので、約束ではありません。

 だけどおとなしく私に膝を明け渡したミコトさんの人の良さを利用し、この際そんなの関係なくぐいぐい行かせてもらいます。


「いいから、約束だからしてください」

「うぅ……わ、分かった」


 ミコトさんは折れると、そっと私の頭に手を乗せてくれました。どうやらミコトさんは、押しに弱いみたいですね。ちょろいけど、ちょろいのは可愛いです。

 そして軽く撫でてくれて、心地が良いです。


「エイミさんは、頭が良いし強くて、その……美人だし、凄いな」

「……」


 恥ずかしがりながらも、ミコトさんはそう言って私を褒めてくれました。でも、なんでしょうコレ。やらせておいてなんですが、凄く恥ずかしくなってきました。

 私はすぐにミコトさんの膝から起き上がると、その行動を中断させます。


「ありがとうございました。もう、いいです」

「な、何か変な事をしたか!?まさか、私の膝が硬くて寝心地が悪かったとかか!?」


 すぐにやめさせてしまった事により、ミコトさんは自分に落ち度があるのではないかと考えてしまったようです。心配そうにしていますが、ミコトさんの膝の寝心地は最高でした。確かにちょっと細くて硬めだとは思いますが、言う程ではありませんし、肌の質感が良くて頬ずりすると凄く気持ちよかったです。


「そんな事はありません。ミコトさんの太ももは最高でした。この私が保証します。でも実は私、よく考えたら褒められるより罵られる方が好きでした。なので口汚く罵ってください」

「そ、それはできない!」

「残念です……」


 即答で拒否されて、私は項垂れました。

 でもミコトさんがそう答えるのは予想済みです。恥ずかしくなってしまったのを誤魔化すために言ってみただけですからね。勿論、本当に罵られても良かったんですよ。ミコトさんのように、男勝りでだけど乙女な部分を併せ持つ女の子が、どんな風に私を罵ってくれるのか興味あります。


「お二人とも元気ですねー……。私なんて、もう疲れて一歩も動けませんよ。むしゃむしゃ。これ、不味いですね」

「どうでもいいですけど、その身体って本当に疲れるんですか?それと、食物を食べる必要もあるのか疑問なんですけど」


 私たちと同じように、パンと干し肉を口にしているラスティライズさんに向けた疑問です。休もうと提案したのもラスティライズさんですし、遠慮なく私たちが持って来た食事を口にするラスティライズさんを見て、その疑問が浮かぶのは必然だと思います。

 だって、今のラスティライズさんは魔物ですからね。疲れたとは言いますが疲れているように見えませんし、お腹が減るような体にも見えません。


「んー……精神的に?疲れました。神様も色々あるんですよ。お腹は減りませんが、味は分かります。不味いです」


 そう言って、不味いと言い放ったパンを口に運ぶラスティライズさんに対し、ミコトさんが険しい表情を浮かべています。

 気持ちは分かりますよ。食べたいと言うからただでさえ少ない食料を分けたというのに、お腹が減らないし不味いと言い放つと来たものです。普通は怒ります。


「不味いのなら、食べなければいいだろう。そもそもお腹が減らないのなら、なおの事食べる必要はないはずだ」

「まぁまぁ。ケチな事は言わないで、道案内の報酬だとでも思ってください。それにしても、貴女は案外ケチですね。そんなにケチケチしてると、ケチ人間になってしまいますよー?」

「っ……!」


 軽口を叩くラスティライズさんに対し、ミコトさんが拳を作ってその拳をぷるぷると震わせます。今にも怒ってしまいそうですが、怒る代わりに手にした干し肉を勢いよく噛み千切り、咀嚼する事によってエネルギーを放出させていますね。我慢ができて、偉いです。

 それにしても、ラスティライズさんとミコトさんって、相性が悪そうですね。いえ、ラスティライズさんが怒らせるような事を言うから悪いだけなんですけどね。


「……」


 ふと気が付くと、サクラが顔を伏せて首を振っていました。どうやら、疲れて眠気に襲われているようです。

 私はそれを見てサクラの隣に腰かけると、サクラの肩を抱き寄せて私に寄りかからせました。サクラの頭が私の肩にもたれかかり、私はなんとなく、その頭に頬を乗せて目を瞑ります。


「エイミさん……?」


 サクラが気づいて私の名前を呼んできましたが、私は黙っていました。すると眠気に敗けたのか、サクラは規則正しい寝息をたてて、眠りにつきました。


「……余程疲れたんだな。私も同じだから、よく分かる」

「私もです。ご飯も食べ終わりましたし、ここは仮眠タイムとしましょう!」

「貴女は私たちが戦っている間、地面で寝ている事もあったように見えたのだが、私の気のせいだろうか?」

「気のせいです」

「気のせいなどでは──」

「まぁまぁ。いいタイミングだと思いますし、少し眠っておきましょう」

「……分かった」


 言い合いが始まりそうなのを察知した私は、それを遮りました。ミコトさんはちょっと不機嫌そうにしながらも、ラスティライズさんの相手をするのはやめて私の方へとやってきて、隣で地面に寝そべります。

 眠ってしまったサクラを起こすのは、可愛そうですからね。言いたい事はあるでしょうけど、ここは静かにしてもらっておきます。


「んふー。では、おやすみなさい」

「おやすみなさい」


 私が挨拶を返すと、ラスティライズさんも横になって眠り始めました。もっとも、寝ているかどうかは分かりませんけどね。だって彼女には、瞳がありませんから。

 一方で私はと言うと、私の肩に体重を預けているサクラを膝の上に横にならせ、壁に背を預けてもたれかかります。眠るサクラの頬や頭を撫でていると、やがて私も睡魔に襲われて視界が段々とぼやけ、目を開いていられなくなってしまいました。

 本当は、見張りをするつもりだったんですけどね。私も体力的に、かなり消耗しているんです。眠気に負けた私は、サクラ達と同じ夢の世界へと堕ちていきます。


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