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関係の変化


 その日から、私はツカサさんとミコトさんに、イズミさん3人のパーティから外されました。代わりにナナシさんと2人のパーティを組まされる事になり、戦力は完全に分断された形です。表向きは効率を重視したと言っていましたが、奴隷であり戦闘員ではないナナシさんを私とくっつけるとか、戦力が偏りすぎて笑ってしまいますね。

 もっとも、ナナシさんはもう奴隷ではありません。今は自由で、喋る事もできるし逃げる事も出来ます。だけど私と共に国王を止めるため、奴隷を演じてその時を伺っているのです。


「──という訳で、タナトスの宝珠の破壊に成功しました」

「……」


 謁見の間にして、国王の膝元に立ってそう報告をした私を、国王が睨みつけて来ます。最初にタナトスの宝珠を破壊してから、私はタナトスの宝珠を全て破壊して国王に報告だけしています。ツカサさん達は相変わらず持ち帰っているようですが、私はそんな事をするつもりはありません。

 素直に使い道を教えてくれたら、その時は協力してあげるかもしれませんが、教えてくれないのでそんな事はしてあげません。


「……」


 もう何度目かの報告になりましたが、国王は私の言葉を聞くだけで、返事もしてくれなくなりました。顎で側近に報酬を渡せと指示をだして、私は報酬の入った袋を受け取りその場を去る。それだけです。


「では、失礼します」


 報酬は貰えるので、文句はありません。私は隣で国王に向かって跪いていたナナシさんの肩を叩き、去るように指示を出しました。

 毎回、血管が切れる音が聞こえて来そうな勢いで怒り、でもそれを隠す国王がたまらなく面白いです。笑いを堪えるのに必死で、勘弁してもらいたいです。でもナナシさんはそんな国王が怖いらしくて、びくびくとしています。いつかこの子にも、この面白さを分かってもらいたいものですね。


「──エイミさん!」


 謁見の間を出た所で、名前を呼ばれました。声で誰なのかは分かっていましたが、そちらに目を向けるといたのはミコトさんでした。

 一方ナナシさんは、驚いて私の背中に隠れます。まるで人見知りの子供のようですね。


「こんにちは、ミコトさん。お帰りの所ですか?」


 武装して、やや汚れた格好をしているミコトさんを見て、そう判断しました。後ろには同じように汚れたツカサさんと、イズミさんの姿もあります。

 更にその後ろに、少し距離を取ってヴァンフットさんとガラティアさんの姿もありました。


「ああ、そうだ。そちらも無事帰って来たようで、何より──」

「行くぞ、ミコト。早く国王様に報告して、休みたい」


 ツカサさんは、私の方を見もせずに横を通り過ぎました。

 私が石を壊したあの日から、ツカサさんの態度は妙に冷たいと言うか、まるで私を目の敵としているかのようです。それと連動して、イズミさんの態度も冷たくなってしまいました。私を見るイズミさんの目……ぞくぞくしてたまりません。

 ただ、ミコトさんはしっかり話しかけて、普通に会話をしてくれます。それをツカサさんは良く思っていないようですが、ミコトさんはそれに構わず話しかけてくれるんです。


「す、すまない。……それじゃあ」

「ええ」


 ツカサさんに促されて、ミコトさんは申し訳なさそうに私の横を通り過ぎました。もっと話したそうにしていましたが、でも私とツカサさんとどちらを選ぶかと選択肢が出たら、あの子は間違いなくツカサさんを取るでしょう。

 だって、ツカサさんはとある能力によって、ミコトさんの心を操っていますからね。なんとなく分かってはいましたが、それが確信へと変わったのは鑑定の力を持つナナシさんのおかげです。


「ふ……」


 それについて今は置いておくとして、ツカサさん達に続いて横を通り過ぎたガラティアさんと、目が合いました。その瞬間に、小さくあざ笑うかのように、笑いかけてきました。

 そのガラティアさんの横にいるヴァンフットさんは、ビクビクとしながら私の横を通り過ぎていきましたが、こちらはどうでもいいです。

 謁見の間に入っていく彼らを見送ると、私は再び歩き出しました。私の服に捕まっていたナナシさんも共に歩き出して、自室へと向かいます。私たちもグリムダストを攻略し終わったばかりで、疲れているんです。早く戻って、休みたい所ですね。

 ガラティアさんの笑いは気になりますが、それよりもナナシさんと一緒に疲れを取るのが先決です。一緒にお風呂に入ったり、マッサージをしあったりして、イチャイチャしたいです。


「──エイミ様」


 そう思いながらお城の中を歩いていたら、また名前を呼ばれて足を止めました。角で待ち構えるようにして立っていたその人物は、メイドのレイチェルです。


「レイチェル。すぐにお風呂の準備をしてくれる?私とナナシさんが入るから」

「……!」


 私の服を引っ張って、ナナシさんが何かを訴えて来ます。でも私はそれを無視しました。恥ずかしがっているようですけど、女の子同士でお風呂に入るのは普通です。私は女として生まれた以上、その普通の特権を使わせていただかざるを得ません。


「申し訳ございませんが、その前にお二人には、付いて来ていただきたい場所があるのです」


 しかし、レイチェルの返答は予想外の物でした。私のお願いを拒否したうえで、付いてこいですって。

 正直な所、私は別に良いんですよ。そこまで疲れてはいません。だけどナナシさんはかなり疲れています。早く休ませてあげたいので、できれば拒否したい所です。


「疲れているのに、申し訳ございません。ですが、私としてはおとなしくついてくる事をお勧めしたいです」


 脅しているという訳ではないようですが、暗に断れば私に不利益が降りかかる事を意味しています。


「はぁ……。分かりました。ついて行きますよ。ナナシさん。申し訳ないですけど、お風呂はもう少し我慢してくださいね」

「……!」


 私がそう言うと、ナナシさんはこくこくと頷いて答えました。そんなに私とのお風呂が嫌なんでしょうか。そこまで必死に頷かれると、ちょっとショックです。

 そう言う事になり、私はレイチェルに誘われるままについていきます。しばらく歩いた先にある現在地は、普段は立ち入りを許されない、お城の最上階付近となります。ここまで来るのに、一体どれだけの階段を上ったでしょうか。お偉い方々が住む階なんでしょうけど、高い所も考え物ですね。けっこう疲れます。


「──こちらです」


 やがてレイチェルが1つの扉の前で止まり、その扉を軽くノックしました。


「どうぞ」


 中から声が聞こえて、レイチェルが扉を開きます。

 開かれた扉の中からは、良い香りが漂ってきました。別に、お香やそういった類の物の香りではありません。女の子のお部屋特有の、甘くてふわふわした感じの香りです。自分で言っておいてなんですが、何を言っているんでしょうね。とにかく、良い匂いだという事です。


「失礼します」


 レイチェルはお部屋の中に入る前に、一礼をしてそう挨拶をしてから中に入りました。私とナナシさんも、その後に続いてお部屋の中へと足を踏み入れます。


「ようこそおいでくださいました。勇者エイミ様。そして、ナナシ様」


 私とナナシさんを出迎えてくれたのは、この国のお姫様。リシル・ナール・エリュシアルさんです。

 どうやらこのお部屋の主は、彼女のようですね。妙にかしこまったレイチェルの態度の原因も、これで分かりました。


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