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69.シスコン悪役令嬢、デートするために交渉する

「というわけで次の休日に街に出たいんだけど、いい?」


「まぁ、確かにここ最近ずっと頑張ってましたし、一日ぐらいならいいですけど」


「本当!?」


「でも、お二人だけで行くんですかー?」


 フィアナからのお誘いを受けた翌日、私は早速アイカとシグネに交渉を開始した。

 まだ両親からも了承を貰わないといけないので、早々に彼女らを説き伏せなければならない。


「別に危ないところには行かないし、暗くなる前には帰るから! お願いします!」


 頼み方が小さな子供のそれだが、とにかく安全をアピールするのが一番だ。アイカはともかくシグネは中々そういうところに厳しい。


「うーん、ですがいくら安全でもお二人だけというのは……」


 やはりというか、シグネはあまり良い顔をしてくれない。勿論心配しているというのはわかる。しかし、いくらフィアナが子供といっても──


「セリーネお嬢様は暴走しやすいですし、不安ですね……」


 あ、私の心配ですかそうですか。というか暴走とは失礼な、あれはフィアナに対して愛が溢れているだけで決して狂っているわけではないのだ。

 それをオブラート10枚ぐらいで包んだ言葉で伝えてもシグネは悩んでいる。ここまで信用がないと逆に悲しくなってくる。


「それなら、こうすればいいんじゃないですかー?」


 と、そこでアイカから救いの手が入った。


「流石に護衛もなしに二人だけっていうのは私も心配なのでー、馬車で移動するのを基本にしたらどうでしょうー?」


「馬車で? それってどういうこと?」


「ですのでー、少し自由は制限されますけど、馬車で移動するならその都度戻ってきますよねー? それだったらお嬢様たちの姿も定期的に確認できますし、仮に何かあったならすぐ動けるんじゃないかなーって」


 アイカの提案は中々に良い案だと思った。私だって一応こんなのでも公爵令嬢だ。比較的平和なこの国だとしても万が一が起こる可能性がある。

 どうやらシグネもその案には賛成のようで、「お嬢様がそれでいいなら、いいんじゃないでしょうか」と承諾してくれた。


 だけどそのあと。


「じゃあ後はお父様とお母様に言わないと」


 と言ったら、そっちを先にするべきだと怒られた。順番間違えたかな……


 だけど、私にとって一番の壁は彼女達お付きメイドだったのだ。何せ父も母も何だかんだ親バカで、最近はフィアナにも溺愛っぷりを発揮するようになっていた。

 ゲームだと基本ギスギスしている家族関係が良好なのは凄くいいことだ。そのおかげもあってか両親からはあっさり許可が降りた。正直、溺愛するあまり「二人だけで外出など許可できん!」と言われる可能性もあったが、そこはお付きメイド達の案を提示したことが効果があったらしい。


 そしてその日の夜、早速フィアナに決まったことを告げる。


「というわけでちょっと条件は変わったけど次の休日遊びに行けるよ!」


「ず、ずいぶん行動が早いですね……昨日の今日なのに」


「善は急げっていうから! 馬車での移動になるし、フィアナも行きたいところがあったら今のうちに考えておいてね!」


「は、はいっ。楽しみにしてますね」


 フィアナもどうやらお出掛けすることに関して相談するつもりだったらしいが、私の手が一歩早かった。元々遠慮がちな性格なフィアナだと色々と気苦労するかもしれないしそのほうが良いと思ったからだ。

 結果的にあまりの行動の早さにちょっと引かれた気もするが、何だかんだ次の休日を楽しみにしてくれているようである。


「じゃあ、今日はおやすみなさい。良い夜をお姉さま」


「おやすみなさいー。また明日ね」


 添い寝でも誘おうかと思ったけど、流石に唐突すぎるからやめておいた。そういうのは追々やっていこう。うん。


「さて」


 それよりも、今の私にはすることがある。

 フィアナが立ち去った後、私はテーブルに紙面を広げた。それはこの国の地図であり、今のうちに街の情報の仕入れとデート計画を立てておこうという算段だ。


「こういう時にゲームプレイヤーは得をするのよね。ウフフ……」


 そう、忘れそうになっていたが私はこの世界の元になったゲームや設定を知っている。つまるところフィアナの好物なんかは既に知っているわけなのだ。


「お店の名前はわかっても場所がわかってないとダメだしね」


 例えば、フィアナの好物は甘い果物である。これは彼女が昔住んでいた町の特産品に甘い果実があり、それをよく食べていたからだ。ついでにいえば甘いもの全般は大体好きな女の子な彼女だが、逆に酸っぱいものや辛い物は大の苦手である。勿論、食べれないことはないが割と無理はしているというのは設定集に書いてあったことだ。

 つまり、甘い果物やお菓子があるお店を中心に、装飾品を売っているお店を挟みながら、昼食は出来るだけ彼女が嫌いじゃなさそうな物を選べば好感度は馬鹿みたいに上がるはず。

 ある意味、乙女ゲームの主人公を攻略しようとしているようで、それはそれで考えると楽しいものだった。


 結局その日は、ひたすら計画を練ったせいで次の日はアイカに揺さぶられて起きることになり、しかも授業中爆睡したせいで、先生から大目玉を食らうという事態にまでなってしまった。

 しかし、そんな苦難(自ら招いたもの)を乗り越えた私の前に、遂に休日という素晴らしい日がやってきた。

ブックマークや評価、感想、誤字報告などいつもありがとうございます!

次回の投稿ですが、仕事が夏休みの影響で忙しいのと、少し取り掛からないといけないことがあり、少し遅れますが7/30の22時頃になります。大変申し訳ありませんがよろしくお願いいたします!

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