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16.シスコン悪役令嬢、魔法を知る

また投稿が遅れました。すみません……

 とりあえずアクシアとの関係は少しずつ探っていくとして、とにかく急な展開だが魔法を教えてくれる味方が出来た。


「いやぁ、ごめんね」


「んん……病気とか怪我がきっかけでそうなることもあるって、お兄ちゃんも言ってた……かも」


「そ、そう」


 それで今、私たちは家の敷地にある大きな裏庭に来ている。そこまで来る間にも多少会話はしたのだが、このアクシアという娘は口数の少ない不思議ちゃんで間違いない。というか言葉を話す間隔が独特だ。気になるほどでもないのだが。

 益々、どこでどんな繋がりがあって今の関係になっているのかは気になる。


「それで……どの魔法が上手く使えないの……?」


 ジト目と一緒に投げかけられた質問の答えに困る。何がとかじゃなくて全てなのだからだ。

 といってもそれを隠しても碌なことにはならなそうなので、適当にぼやかしながら答えることにした。


「いやー、だいぶ感覚忘れちゃって、出来れば基礎的な奴からやりたいんだけど」


「基礎……? うーん、いいけど……教えようがない……よ?」


「そ、そんな簡単?」


「……うん」


 アクシアの口ぶりだとどうやら初歩的な魔法というのはかなり簡単らしい。これは後から知ったことなのだが、初級の魔法というのはまだ子供でも扱えるのが普通らしい。確かにいきなり歩き方を教えてくれ、なんて言われても教える方も難しいだろう。


 それにしてもやはりこの世界の常識が欠如しているのは厳しいということを再度思い知らされることになってしまった。


(大丈夫なのか、私?)


 とにかく、このまま黙っていては怪しまれると思い、話を振る。


「じゃ、じゃあアクシアはどんな風に魔法を使っているの? ちょっと見て見たいな」


「どうって、こんな風に……」


 アクシアはそう言うと、手の平を上に向ける。その瞬間バチバチと音がすると同時に紫色の雷を纏った球体が浮かび上がった。


「お、おおおっ!? す、すごっ、え、手品とかじゃないよね!?」


「てじな? 雷魔法で一番簡単な奴だけど……」


 アクシアが手を握ると一緒に雷の球も消えた。彼女は疲れた様子もなくさも当然という感じだ。


 しかし、こうして目の前で実際に見てみると本当に魔法というものが存在しているということを実感する。


 凄い、本当に凄い。今のを見るとアクシアは雷魔法に精通しているようだが、初級でもかっこいいという感想しか出なかった。


「ほ、他にどんなことが出来るの?」


「どんなの……雷を落としたり、とか?」


「へー、凄いなぁ。雷かー!」


 つまり氷の魔法を使うことが出来る私はどんなことが出来るのだろう。ゲームでストーリー上セリーネと戦うときは氷のツララを飛ばしてきたり、氷の壁とか後は何か凄い技を使っていたはずだ。


 だが、問題はその発動のさせ方だ。


「アクシアはどうやって魔法を使ってるの?」


「どう? 魔法は心の中でイメージすることが基本……そしてお臍のあたりから力を込めて、外にバーンって放出するような……」


「う、うーん?」


 イメージか……妄想とかなら得意なんだけどな。そういえばフィアナは今頃どうしてるだろうか。


 そう、今日というお休みの日フィアナはこの家にいない。何でも街の方に用事があるらしくシグネとお出掛け中なのだ。これもゲーム内の要素で休日を家で過ごすか、街に出てみるとかプレイヤーが選択する。そこでイベントがあったりなかったりという感じだ。


 そんなわけでフィアナがいないのでゴロゴロして過ごしていたわけである。家にいるなら親睦を深めたかったのだが……


「セリーネ……大丈夫?」


「お、おお、大丈夫ダイジョウブ。ちょっと考え事してただけ」


 そんなことを考えていたらアクシアに心配されていた。いかんいかん、今は魔法に集中せねば。


「じゃ、じゃあちょっとやってみるから」


「ん……氷の魔法は……空気を凍らせるようなイメージ……大事」


「凍らせる、凍らせるのね」 


 目を閉じて集中する。臍から手の先まで神経を集め、頭の中で何かを凍らせるようなイメージを持つ。

 すると、不思議な感覚が体を包んだ。何かが体の中を巡り流れていくようなちょっとした気持ち悪い感じだ。もしかしてこれが魔力なのだろうか。


 そして、ふと目を開けてみて、私は大きく目を見開いた。


「わぁっ! アクシア! アクシア! 見て見て! 氷、氷だよ!」


「う、うん……」


 なんと! 私の手の平の上で四角形の氷がふわふわと浮いていたのだ。たったそれだけなのだが私は興奮を隠しきれない。

 だって、今まで普通の女子高生で特別な力なんてなかったのに、突然氷を生み出せることが出来るのだから、興奮しないのが逆に失礼だろう。


「うっわー、凄いなぁ! 意外と簡単に使えるものなんだ……!」


 集中していた力を抜くと氷はそのまま地面にポツンと落ちた。雷の球とは違ってこれは残るらしい。拾ってみると当たり前だけど冷たい。


「へー、へー……!」


 何だか感動する。思っていたより簡単に使えたのは何だか拍子抜けするところもあるが苦労するよりはずっといい。


「お嬢様ー? お茶をお持ちしましたー」


 その時、拾った氷に感動していた私に声が掛かる。そういえば中庭に来ることを言ってなかった。よくここがわかったなぁ。


「お部屋にいらっしゃらないから探しましたよー何してたんですか?」


「別に大したことじゃないわよ。アクシアと魔法の練習を……ん?」


 お茶を持ってきたアイカの方を向いていたら後ろから小さな衝撃を受けた。何事かと見るとアクシアが私のスカートを掴んで小さくなって隠れていた。


「……うぅ」


「アクシア?」


 どうしたのだろうか。先ほどまでの雰囲気とは打って変わって少し怯えているようにすら見える。


 も、もしかして人見知りなのか? 困ったようにアイカを見ると彼女も少し困ったようにはにかんでいた。どうやら正解らしい。


「お茶とお菓子、庭のテーブルに置いておきますので、良かったら召し上がってくださいねー」


「あ、うん。ありがと……」


 アイカはそう言うと頭を下げて立ち去って行った。何だか持ってきてもらうだけでちょっと申し訳ない。

 そんな彼女が立ち去ったのを確認したのか、ずっとスカートを握っていたアクシアはその手を離して一つため息をついた。


「……えっと」


 また謎が増えてしまった。恐らくアクシアはかなりの人見知りで、でも私とは割と普通に接している。それは何か付き合い上であったに違いない。かなり気になる……


「ねぇ、セリーネ……」


「な、何かしら?」


 そんな疑問を含んだ目で見つめていたら逆にアクシアに見られていた。まずい、何か勘づかれた?


「あれ」


「あれ?」


 しかし、アクシアの目線はすぐに庭のテーブルを向いて、指先でそこを示していた。


「お菓子、食べたい」


「……お、おう」


 人見知りなのかマイペースなのかわかんないな、この娘。

ブックマークや評価、感想などありがとうございます!

明日の投稿についてですが、朝早くから夜遅くまで忙しいためもしかしたら一日投稿をあけるかもしれません。

問題なければ明日の22時、もしも書けなかったら明後日の22時に投稿しますので、よろしくお願いします!

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