010
すみません。サブタイトルは勘弁してください。すみません。
十二の銃口に睨まれつつも、サクヤは毅然として立っていた。
もちろん、恐怖はある。足は今にでも震え出しそうだった。それでも、乱れそうになる呼吸を懸命に落ち着けて、彼女は目の前の現実と対峙していた。
「できれば、こんなことはしたくないのです」
そんなサクヤへ、砂霧が説得するように口を開いた。
「考えてみてください。現在のこの国の有様を。これが正しいと思えますか? 思えるのであれば、不見識も甚だしい」
彼はあくまでも丁寧な口調のまま続けた。
「この帝都など、まだマシなほうなのですよ。地方には老人と子供しかおらず、まともな働き手のいない村が数多あります。そういった自給できない村々では、口減らしや身売りが横行し、中には監督権を売買する者までいる始末。議会はそうした現実を知っていながら、ただ手をこまねき、見て見ぬふりをしている。このような状況を正すために、我々は起ったのです。国家中枢に巣食う逆賊を一掃し、帝主陛下御新政の下、国家一丸となって御国の再興に尽力するために。もし、貴女が我々に協力してくれるならば、この改革は必ず成功する。貴女の助力を得られるということは即ち、帝都守備隊が、いや、第587連隊という、現在の帝国における最大最強の戦力を味方につけることと同義なのですから」
「お断りするわ」
砂霧の言葉を最後まで聞き終えてから、サクヤはにべもなく応じた。
帝都以外の、地方についての話は初めて聞いた。砂霧の声音から、嘘ではないのだろうと分かる。だが、それでも。彼女は首を縦になど振れなかった。
「……では、やはり貴女を拘束させていただく」
すでに十分険しかった双眸をさらに鋭利に細めて、砂霧は言った。
「兼益軍曹、少佐殿の両手を縛れ」
その命令に、先ほどサクヤと言葉を交わした兼益軍曹が小銃を下ろして彼女に近づく。
「どうか、抵抗はなさらずに」
彼の絞り出すような小声に、サクヤは静かに頷いた。腰に付けた雑嚢から捕縄を取り出した兼益が、彼女へ手を伸ばしたその時だった。




