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桜花舞う!!  作者: 高嶺の悪魔
第二章 夏(後) 近衛叛乱
83/205

002

 その声が聞こえたのは、生垣に囲まれたさくら荘の小さな庭を横切って、道路へ踏み出した時だった。

「――木花少佐」

 押し殺したような、小さな声に呼ばれて、サクヤははっと振り返った。背後には、今出てきたばかりのさくら荘の庭以外、何もない。

「……誰?」

 サクヤは警戒した声で呼びかけた。

「ここです、ここ」

 やはり小さな声で返答があった。どうやら、自分の幻聴ではなかったことにほっとしつつ、サクヤは声の方へ顔を向けた。声は生垣の向こうから聞こえているようだった。どうやら、気付かずに通り過ぎてしまったらしい。

 恐る恐る、庭の中を覗き込んだサクヤは驚きの声を出した。

「七倉大尉?」

 さくら荘の庭の隅、生垣の影に溶けこむようにして、七倉ヤト大尉がそこにいた。


「どうしたの、いったい? こんなところで?」

 突然の来訪者に、嫌な予感を覚えながらサクヤは訊いた。

「いえ、大したことではないのですが」

 彼女の質問に、ヤトは辺りを気にする素振りを見せながら応じた。

「少し、不穏な噂を耳にしまして。出来るならば、木花少佐にもお知らせしようと思いまして」

「不穏な噂?」

 不審そうに眉を顰めた彼女に、ヤトは薄ら笑いを浮かべながら頷いた。

「ええ。本日、帝都では祝賀式典の予行演習が行われるそうですね」

 彼の言葉を、サクヤは無言で首肯した。

「それを狙って、近衛が叛乱を起こそうとしていると」

「それは……どういうことかしら」

 ヤトの発した、あまりにも突飛過ぎる一言に、サクヤの理解が追いつくよりも早く。

 帝都の中心、帝宮のある方向から甲高い破裂音が響いた。

 聞き間違えるはずの無いその音に、サクヤは弾かれたように顔を上げた。

「どうやら、始まったようですね」

 いつの間にか隣に立っていたヤトが、同じ方向へ顔を向けながら呟く。

 その横顔に、傍目から見ても楽しそうな笑みを張り付けて。


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