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「お話はお済ですか、中佐」
ソウジと話し終えたシュンがそれではと廊下への扉を開けたところで、そこに立っていた少年が一礼と共に口を開いた。
年のころは十三、四といったところだろうか。軍服ではなく、文官が着るような礼服を身に纏っており、何処か気品のようなものが漂う、はっきりと整った面立ちをしている。
「おいおい……」
少年を見たソウジが、呆れたように言った。
「お前、従者なんか連れて歩いているのか」
「だから言っただろう。面倒がたくさんあるのだと」
それにシュンは答えになっていない答えを返すと、辺りを気にしてかソウジへ敬礼の真似事をしてみせる。
「では、中将殿。よろしくお願いいたします」
「……まぁ、微力は尽くしてみる」
ソウジは彼の隣に立つ少年へ目を向けながら、雑な答礼を返した。
どこかで見たことのあるような気がする少年だった。しかし、どこで見たのかを思い出すよりも先にシュンがさっさと歩きだしてしまい、その後を追いかけるように少年も行ってしまったため、記憶を辿る作業は中断せざるを得なかった。
なんとも消化不良のまま、その場に立ち尽くしていたソウジだったが、やがて自分に任されたことを思い出すと、重い足を引きずるようにして上官の部屋へと向かった。
「ふん。何かと思えば、その話か」
参謀総長執務室を訪ねたソウジが用件を口にすると、マレミツは常のように鬱陶しそうな顔で迷惑そうに答えた。
「ご存じでしたか、閣下」
むしろ、やはり知っていたかという思いを胸に、ソウジは鉄面皮を保ったまま言った。
「それでしたら……」
「放っておけ」
続けようとした彼の言葉を、マレミツがばっさりと遮った。
「閣下」
ソウジは流石に顔を顰めた。
「せめて、四条宮閣下にはお伝えすべきでは?」
「駄目だ」
彼の上官は羽虫を払うように、その意見を却下した。
「いいか、中将。これは極めて高度な、政治的問題なのだ」
マレミツは全ての反論を封じるように言い放った。
「近衛が叛乱を企てているなどと吹聴してみろ。陸軍の、わしの立場はどうなる。これは貴官如きが口を挟んで良い話ではないのだ。分かったか」
「……は」
取り付く島もないその態度に、まぁ予想通りだなと思いつつ、ソウジは腰を折った。
帝国では、帝主に近いものほどその立場は強くなる。国軍たる陸軍と、帝主直参の戦力である近衛とでは、組織の大小関係なく、その権威に格差があるという話だった。
しかし、だからと言って叛乱の兆候を掴んで起きながら放置するだろうかという疑問が残る。
それを。
「そもそも、近衛のことは総監たる四条宮大将がどうにかすべきことだ。なんでわざわざ、わしらが手を貸してやらねばならん」
詰るようなマレミツの呟き一つで納得できてしまうというのは嘆くべきだろうか、呆れるべきだろうか。ソウジは冷めきった内心で考えた。
結局、こういうものだと思い込むより他にないのか。
まったく。
昨日更新できなかったので、本日は一気に3話更新です。
サブタイトルが話数のみになっているのは、僕の怠慢です。




