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桜花舞う!!  作者: 高嶺の悪魔
第二章 夏(前) 恋する連隊
64/205

009

「本当にごめんなさい。まさか、こんな大騒ぎになっちゃうなんて」

 衛門を出たところで、サクヤは見送りに出てきてくれたミツルとコウに頭を下げた。

 ここならばもう誰に聞かれる心配もないためか、素の言葉遣いに戻っている。

 そんなサクヤへ、ミツルは穏やかな笑みを浮かべながら答えた。

「いいや、気にしなくて大丈夫だよ。彼らが喜んでいたのは本当だし、何より、顔を見せてくれと言ったのは俺だからね」

 まぁ、この後で何か面倒は起こるかもしれないが。その時は我らが幕僚長殿にお任せしようと、ミツルは心の中でほくそ笑んだ。

 その隣で、コウも頷いている。

「そうそう。まぁ、少しばかりはしゃぎ過ぎだけどな」

 あれこれと難しいことを考えないコウは、気楽な声だった。その声のまま、彼は誓うようにサクヤへ言った。

「任せろ、サクヤ。お前が戻ってくるまで、誰一人死なせねぇから」

 お前もそっち側かと、隣でミツルが溜息を吐いた。サクヤはどう答えたものかと、困ったような顔になったが、やがてそれに頷いた。

「うん、お願いね、コウ君。でも、みんなをあんまりいじめちゃ駄目よ?」

「確約は出来ねぇな」

 サクヤの言葉に、ふーんと鼻を鳴らしながらコウは答えた。

 今日、自分へ暴言を吐いた兵士たちを頭の中で数え上げている。

「まぁ。これに懲りず、また来てやってくれ、サクヤ」

 穏やかな顔に戻ったミツルがそう言った。

「うん」

 サクヤは彼に、力強く頷いた。

「それじゃあ、またね!」

 今度こそ本当に別れを告げて、サクヤは帝都へと還っていった。

 コウとミツルはそれぞれ笑みを浮かべたまま、その背中へ手を振って見送った。


 サクヤの背中が、夕焼けで赤く染まる帝都へと吸い込まれて消えた、そのすぐあと。


「さて」

 コウが剣呑な声を出した。

「うむ」

 穏やかな微笑みを消したミツルも、表情を引き締めて頷いた。

「はしゃぎ過ぎた連中を、一発シバくか」

「俺に降格しただのなんだとと言ったのはどいつだった?」

 二人はゆっくりと衛門の中へ戻っていった。

 何も知らないまま、サクヤと一日過ごせたことの余韻に浸っている中隊の下へ、閻魔もかくやの表情を浮かべたこの二人が戻ってきたのは、そのすぐ後だった。

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