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桜花舞う!!  作者: 高嶺の悪魔
第二章 夏(前) 恋する連隊
63/205

008

「本当にごめんなさい。まさか、あんな大騒ぎになっちゃうなんて」

 衛門を出たところで、サクヤは見送りに出てきたミツルとコウへ頭を下げて謝った。辺りに誰の目もないためか、素の言葉遣いに戻っている。

「いや、気にしなくて大丈夫だよ」

 それにミツルは穏やかに応じた。

「彼らが喜んでいたのは本当だし。顔を見せてくれと言ったのは俺だからね。まぁ、この後で何か面倒は起こるかもしれないけれど……その時は、我らが幕僚長殿にお任せしよう」

 意地の悪い笑みを口元に浮かべて言ったミツルの横で、コウも頷いている。

「そうそう。あれこれと難しいことは、お偉いさんに任せておけばいいんだ」

 あれこれと難しいことを考えない彼は気楽そうだった。その態度のまま、コウは誓うようにサクヤへ言った。

「任せろ、サクヤ。お前が戻ってくるまで、誰一人死なせねぇから」

 その一言に、お前もそっち側かとミツルが溜息を吐いていた。サクヤのほうは、どう答えたら良いものかと困った顔になってから、やがてそれに頷く。

「うん。お願い、コウ君。……でも、あんまりみんなを虐めちゃだめよ?」

「虐めてねぇよ」

 彼女の言葉を聞いて、コウは心外そうに鼻を鳴らしていた。ただし、頭の中では今日、自分への暴言を吐いた兵たちを数えている。

「まぁ、これに懲りず、また遊びに来てやってくれ、サクヤ」

「うん」

 気を取り直したように言ったミツルへ、サクヤは力強く頷いた。

「それじゃ、またね!」


 別れを告げて、帝都へと帰ってゆくサクヤの背中を、ミツルとコウはそれぞれの笑みを浮かべながら見送った。

 その後で。

「さて」

 気分を切り替えるように、コウがふっと息を吐いた。その顔からは、先ほどまでサクヤに向けていた感情の一切が消え失せている。

「うむ」

 隣で重苦しく頷いたミツルの表情も似たようなものだった。

「俺のことを降格しただのなんだと言っていたのは、どいつだった?」

「三田沢の薄ら馬鹿だな。アイツから殺すか」

 何も知らないまま、サクヤと再会できた幸せの余韻に浸っている中隊の下へ、閻魔もかくやという表情を浮かべた二人が戻ってきたのは、そのすぐ後のことだった。



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