012
「とにかく。俺はサクヤを助けに行く。たとえ一人でもな。銃殺の日取りと場所が分かったら教えろ。盛大にぶち壊してやる」
コトネに叱られた男たちが肩を落としている中、コウが立ち上がった。
ソウジはそれに頷いた。彼ももはや、コウを止める気など無かった。
「分かった。明日までに調べて、知らせる。これほど性急に事を進めようとしているんだ。大方、この二、三日の間だろうな」
そこまで言ったところで、ソウジはただしと付け加えた。
「部下の連中には教えるなよ? これはあくまでも、俺たちだけの問題なのだ」
「分かってらぁ」
片手を上げて店を出て行くコウの背中を追うようにミツルも立ち上がる。
「ところで、延槻。お前、部下たちはどうした」
彼はそこで思い出したように尋ねた。
「開拓村に置いてきたわよ」
当たり前でしょと、コトネが答える。
「大丈夫なのか」
ミツルはわずかに眉を潜めた。
「アイツらなら、大丈夫よ」
それにコトネは、はっきりとした声で応じた。
そもそも、彼女に帝都へ行くよう促したのは開拓部隊の部下たちだった。
休暇で朝早くから帝都に繰り出していた開拓民たちが、サクヤ逮捕を知らせる広報紙を手に大急ぎで帰ってたのが今朝。それから、仕事も手に付かない様子のコトネを見かねた部下たちが、半ば追い出すように彼女を帝都へ向かわせたのだ。
もちろん。それが部下からの心遣いだったとしても、任務中に指揮官が部隊から離れるなどあってはならない。ミツルたちの下を訪れた時点で彼女は軍命に背いていることになる。
そして、その責任を部下に負わせるようなこともあってはならない。
「だから、これは私の独断専行だって、どんな馬鹿にでも分かるよう、書置きを残してきたわ。あいつらにも、もしも帝都から軍の誰かが来て、どんなに問い詰められても、気付いた時にはいなかったと答えるように厳命してきた。もしも白状したら、しなかった時よりも余程酷い目に遭わせてやるってね」
「そうか」
彼女らしいその物言いに、ミツルは安堵したような笑みを零した。
「それじゃあ、今夜は? アテはあるのか?」
もちろん、寝床について訊いたのだ。
「無いわよ、そんなもの。着の身着のままで飛び出してきたんだもの」
はーと息を吐きだしながら、今さら困ったようにコトネが答える。
「なら、そうだな……嫌でなければ、俺の部屋に泊まるか?」
「それはありがたいけど……」
ミツルの提案に、コトネは遠慮がちに答えた。
「アンタはどうするのよ? ……まさか」
「何考えてんだ馬鹿」
ハッとして我が身を抱きしめるようにした彼女へ、ミツルが呆れたように息を吐く。
コトネがムッとした顔になる。何故か恨みがましい目で睨まれて、どうしろっていうんだとミツルは肩を竦めた。
「俺には隊舎にも部屋があるから、そこで休む。お忘れか。俺は中隊長だぞ」
「はいはい。流石、中隊長殿。階級の高い方はいいですねー」
憎まれ口を返す彼女に、ミツルはふいに真顔になると言った。
「そこでならしばらくは庇ってやれる。それに、お前がいた方が部下たちも言うことを聞くだろうしな」
後半が本心かと、思わずがっくりしたコトネだが、その申し出は彼女にとっても有難い。
「分かった。お世話になろうかしら……ありがと」
精一杯の素直さでお礼を言った彼女に、ミツルはそっぽを向きながら、おう、と応じた。




