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「あー、駄目です、少尉。弾が切れました」
第1151開拓村蹶起部隊の陣地で、最後の弾倉を撃ち尽くした兵がへらへら笑いながら背後に振り返った。
「そうか、仕方ないな」
言われた少尉もまた、笑顔でそれに応じる。
射撃を止めたため、すかさず守備隊側から応射が行われた。
「では、これがやんだら突撃と行くか」
銃弾の嵐から身を隠しつつ提案した少尉に、周りにいた兵たちが笑い声で応えた。
その全員が身体のどこかしらに弾を浴び、血を流しながら、銃弾の空になった小銃を抱えている。だというのに、彼らの表情は絶望から程遠い。
「どうやら、大尉殿は先に地獄でお待ちらしいですね」
兵の一人が先ほどから拡声器から響く、七倉ヤトの死と投降を促す放送を耳にして、にやりと言った。
「では、我々も逝き遅れるわけにはいかんな」
朗らかに応じて、少尉は腰の軍刀を引き抜いた。そこで守備隊の射撃が止まる。積み上げられた土嚢の影に隠れていた全員が、誰彼ともなく顔を見合わせて頷く。
そして――
どこまでも晴れやかに、彼らは死んでいった。
まるで、その為に産まれてきたのだと言うように。
まるで、その為に生きてきたのだと言うように。
悪態一つ、恨み言一つ、遺さずに。




