011
飛禅連山の山々に、大気を打ち砕くような轟音が木霊した。
幾つかの黒い点が金切り声をあげながら空高く打ちあがり、やがて急角度で落下してゆく。砲弾は第1151開拓村の東側を中心に着弾した。入り口を塞いでいた柵を吹き飛ばし、街の周囲を囲んでいた石壁に穴を穿つ。何発かは街の中へ降り注ぎ、着弾地点から白い粉塵を立ち昇らせていた。
それとほぼ同時に、突撃発起線についていた第五中隊は行動を開始した。
「街へ入ったら、各班は相互に連携をとれる距離を確保しつつ横に広がれ! 固まらずに、攻撃正面を広くとるんだ!」
砲撃によって空いた突入口へ殺到してゆく部下の後ろをゆっくりと歩いて追いながら、ミツルは彼らに指示を飛ばした。
「火力支援はこれで終わりですか」
彼の隣で、須磨曹長がぼやくように呟く。その顔は不安とも不満ともつかないもので顰められていた。
「必要以上に街を壊すなと命じられているからな。これが限界だろうさ」
ミツルはなんでもないような口調で須磨に応じた。
「お偉方にとっちゃ、俺たち兵隊の命よりも、あの街を分捕った後の取り分が減ることの方がよほど重要らしい」
「どちらが賊なのか分かりませんな、それは」
「まったくだ」
不服そうに鼻を鳴らした須磨に、ミツルは肩を竦めた。
須磨の気持ちも分かる。
今の砲撃は見た目の派手さに反して、効果は薄い。使用された砲弾が着弾点で炸裂して破片を撒き散らす榴弾ではなく、ただの丸い鉄の塊に過ぎない円弾を使用しているからだ。
本来ならば強固な敵陣を上から叩き潰すために使われるもので、軟目標、つまり人間を標的にした場合、直撃こそすれば一たまりもないが、そうでなければ大した脅威ではない。
大陸での激戦を潜り抜けてきた歴戦の曹長である須磨には、この砲撃がこけ脅しに過ぎないと感覚で理解しているのだろう。
そして、それは当然敵も分かっているはず。
彼の懸念を証明するように、中隊が突入した街からは早くも反撃と応射の銃声が響き始めている。
「まあ、いいさ」
けたたましい戦闘音が鳴り響く街へ向けて前進しながら、ミツルが須磨に言った。
「俺たちは陽動だ。精々、敵を忙しくさせておけばいい。その隙に、あいつらが上手くやるさ」




