第十五話
「むぅ……流石、中将ともなれば、いつでもこんなもんが食えるのか」
五杯も白米をお代わりしたくせに、誰よりも早く食べ終わっていたコウが、満足そうに座椅子にもたれ掛かりながら言った。
「毎日食っているわけがないだろ」
それに、真面目な顔をしたソウジが答える。
「言っただろ。まだまだ一部だと。こんな料理が出せるのは、帝都でもまだこの店くらいだ。それに、俺だけが豪華な食事をしていては兵たちに示しがつかん」
その言葉に、コウは「ふーん?」とまだ疑うような声を出している。そこへ、少し苦しそうにお腹をさすっていたサクヤが口を挟んだ。
「本当よ。それに御代君はいつも、兵舎で兵士さんたちと一緒にご飯食べてるものね」
何気ない口調で発せられたその一言に。
「……なに?」
コウの眉がぴくりと反応した。ほんの一瞬だけ目を閉じて、なにかを考えるような顔をしたあとで、ソウジを一睨みしてからサクヤへ向き直る。
「ちょっといいか、サクヤ?」
「え?」
突然、改まったコウへ、サクヤは小首を傾げながら自分も姿勢を正す。それに彼は、咳払いをしてから口を開いた。
「あー、サクヤ。今の言い方だとな、その、最近、二人は会っていたように聞こえるんだが。それも、それなりの頻度で」
確認するように訊いたコウへ、サクヤは不思議そうな顔のまま頷いた。
「うん。それなりの頻度っていうか、御代君とは月に一度は会っているし」
「どういうことだ、てめぇ」
サクヤの返答が引き金となって、コウは身を乗り出すようにしてソウジへ迫った。
「参謀本部次長だろうが、帝都守備隊幕僚長だろうが、士官学校の教官とそうそう会う用事があるとは思わんのだが?」
もちろん、サクヤの功績を鑑みれば軍の高官と会う機会があってもおかしくはない。だが、月に一度会う必要のある理由が思いつかない。そこに余計な想像を膨らませたコウはソウジに詰め寄った。
一方の、聞かれている方はきょとんとした顔でコウの顔を見返している。
「どういうことかと聞かれても……ミツル、お前、言ってないのか?」
はてと首を捻った彼はふと、とある伝言を頼んだ人物を思い出した。話を振られたミツルは、我関せずと言った態度のままお茶を啜った。
「言ったら、こうなるだろ?」
そう答えて、コウの形相を示した彼に、ソウジは納得したように頷いた。
「なるほど」
そして、にやりと口の端を吊り上げる。その表情を見たミツルは、零される前に飲み切ってしまおうと、湯呑を呷った。
「それはな、榛名大尉。こういうことだ」
どこか勝ち誇ったような声で、彼は告げた。
「俺は、木花サクヤの監督者であるから、月に一度は近況報告を受けねばならんのだ」
「はぁあ!!??」
ソウジが口にした内容に、コウは大声を上げると勢いよく立ち上がった。
その途中で座卓に膝がぶつかり、彼の前にあった湯呑が倒れる。隣にいたミツルは、あーあという顔をしながら、徐々に広がってゆくお茶を眺めていた。




