表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜花舞う!!  作者: 高嶺の悪魔
第四章 第1151開拓村決起
158/205

005

 ああ。言った。言ってしまった。

 もう戻れない。もう、後悔も許されない。

 頭と心が、急速に凍りついてゆく。

 そんなサクヤへ。

『素晴らしい』

 無線から、うっとりとしたヤトの声が響いた。

『素敵だ。そうでなくては』

 これから始まるであろう何もかもが待ち遠しいと言うように、素敵だと、彼が繰り返す。

「期待を裏切るようで申し訳ないけれど、すぐに終わらせてあげるわ」

 冷たく言い放って、サクヤは一方的に通話を切った。


「秘匿回線に切り替えて」

 ヤトとの通信を終えたサクヤが無線手へ命じた。素早く無線機を操作した兵が頷くと、彼女は無線に呼びかけた。

「榛名大尉?」

『はい、こちら先遣隊指揮官の榛名コウ大尉であります!!』

 通話機からは、この上なく弾んだコウの声が返ってきた。

「七倉大尉はあくまでも、投降するつもりはないようです」

『では。我々の出番ということで』

 食い気味に答える彼へ、サクヤの眉が心配そうに下がる。

「情報部からの報告によれば、この街には中隊規模の開拓部隊の他、少なくとも三百名ほどの元陸軍将兵が集まっていると。以後、彼らのことは第1151開拓村反乱部隊と呼称します……榛名大尉、分かっていると思うけれど」

『もちろん。すこぶる了解しております! 宝船に乗っかったつもりでお待ちください!』

 もはや言葉の使い方が何もかも違うが、それを訂正する気にもなれない。

「まさかとは思いますが……任務の内容は把握していますね、大尉? 一応、復唱してもらえますか?」

『は。あー、えーと……我々の任務は……』

 案ずるような吐息を漏らしてからサクヤが訊くと、途端にしどろもどろの返答が返ってくる。無線の向こうからこそこそと聞こえてくる「新型連発銃の実地試験じゃないのか?」「違いますよ大尉」なんていう会話は断じて気のせいだと思いたい。

『失礼します』

 サクヤが頭を抱えたところで通話に割り込んできた声は、コウの右腕である瀬尾曹長のものだった。

『我々、先遣隊の任務は本隊に先んじて街へ潜入し、敵の人数、装備、配置などの情報を司令部へ報告し、本隊突入を支援することであります。本隊の突入後はこれと協働して、敵の首魁とみられる七倉ヤト大尉を捜索。発見次第、身柄を拘束、若しくは確保します』

「ありがとう、瀬尾曹長。……貴方がいてくれてよかったわ」

 すらすらと任務内容を復唱した彼へ、サクヤは心からお礼を言った。

『へへへ……光栄でありま、いたっ!』

 サクヤから褒められて、嬉しそうにしていた瀬尾が突然、悲鳴を上げた。

『っつ~~……た、大尉殿、酷いです。いきなり殴るなんて……』

『うるっせえ、出しゃばりやがって』

『だって大尉、憶えてなかったでしょ』

 そこでもう一度、無線の向こうで鈍い音が響いた。再び瀬尾の悲鳴。

『あー。ごほん。そういうわけであります』

 そして、何事もなかったかのように取り澄ましたコウの声。

「念のために言っておきますが、あちらから攻撃を受けない限り、こちらから戦端を開くような真似は厳としてください……それから、みんな、気を付けて」

『お任せください。うちの中隊でも、選りすぐりどもを選びましたから』

 緊張感のない彼らに、真面目な声で告げたサクヤへ、コウはやはり何処までも自信満々に応じた。


「……本当に彼で大丈夫なのか?」

 通話を終えたサクヤに、マレツグが顰め面を向けた。

「心配はないと思います」 

 コウと話していた時とは打って変わって。サクヤは信頼に満ちた声でそれに答えた。

「彼にできないのなら、他の誰にも任せられませんから」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ