014
どうしようもなく、夜は更けてゆく。
短い秋が終わり、夜の帝都は全てが凍りついたように静まり返っていた。
先週まで、毎夜のように虫たちの喧噪に満ちていた参謀本部の中庭も、今は次第に近づいてくる冬の冷たさに草木が身を震わせる、微かな音だけが響いている。
そんな静謐の中へ、サクヤがふらりと姿を現した。
ぽっかりと月の浮かんだ、寒気のするような夜空を見上げる表情は死人よりも穏やかだ。
私は戦争を終わらせたはずだった。
けれど。終わっていなかったのね。
そんな思考を打ち消すように、サクヤは小さく首を振った。その口元に自嘲するような笑みが浮かべて、思う。
いいえ。
そんなことはとっくに分かりきっていた。
見て見ぬふりをしてきただけだ。
それはたとえば、ふとした拍子に覗く誰かの横顔だとか。たとえば、初めて会った時の彼の瞳の中だとか。たとえば、今でも毎晩のように見る悪夢だとか。
国と国との戦争は終わっても、誰かも彼もの心の中で戦いは続いていた。
なんにも終わってなどいない。
だから、彼らは。彼は、私を。
世界中を巻き込んだ大戦争。
その後に残ったのは戦えなかった人々と、戦わなかった一部の人たち。
そして戦った私たち
生き残った、私たち。
ならば、私は。
最後まで、その責任を取らなければならない。
戦いを終わらせてしまった、その責任を。
そして。翌朝。
帝都が新雪に白く染まったその日。
サクヤは、終わらせたはずの悪夢の続きを見ることになる。




