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軍の養護施設で兄妹のように育ったみんなの後を追って入った、帝国陸軍士官学校。
そこで過ごした三年間は、有体に言ってしまえば、私にとっては地獄だった。
先に入校したみんなと一緒に、早くから試験勉強をしていたおかげか。座学は得意だったけれど、一方で行進や射撃といった野外戦闘教練の成績が壊滅的だった私は、事あるごとに担当教官から怒鳴られては、時に修正の名を借りた体罰に耐えなければならなかった。
放校処分になりかけたことも何度もあった。思い返せば、あの頃は毎日を泣いて過ごしていたような気がする。
それでも優秀だったみんなに何とか追いつこうと努力を続けた結果、卒業の頃にもなると教官たちの態度は随分と柔らかいものになっていた。
私は特に兵棋演習の成績が優秀で、各学期末に行われる全校対抗の演習では上級生を相手に、何度も勝利判定を勝ち取っていた。
そんな私を事務職に就けるには惜しいという教官たちの口添えもあってか。少尉任官時、私は大陸のとある部隊へ、作戦幕僚補佐として配属されることが決定した。
当時の私は、この辞令に驚きつつも喜んだ。
士官学校での成績がどうであれ、女性士官が前線の部隊へ配属されることは珍しかったのだ。
今になって思えば、それだけ前線では将校が不足していたということなのだろうけれど。
そんなことは知る由もなかった私は、先に大陸へ行ったみんなとまた会えるかもしれないという淡い期待を胸に、意気揚々と輸送船に乗り込んだのを憶えている。
海の向こうで何が待っているのかなど、考えもせずに。
異国の地を踏んでから、二週間ほど経った頃だろうか。
私は着任したばかりの連隊で、必死になって日々の課業をこなしていた。
連隊長を始めとした周りの人たちは、前線部隊では珍しい女性将校である私をどう扱ったら良いものか決めかねているらしく、加えて、体力もなかったため任されるのは雑用ばかりだったけれど。
それでもどうにか部隊に馴染もうと努力していたある日のことだ。
その日、私たちの連隊は戦略上、重要な地点を確保するために行軍の最中だった。
目的地まであと少しというところで、それは起こった。
先行していた偵察隊が、連隊の進路上に潜んでいた敵部隊から伏撃を受けたのだ。
私の生涯、初めてとなる実戦はこうして幕を開けた。




