第22話 四軸ジンバル魔法で遊ぶ
国立図書館を出ると夕方だった。
夜ご飯前にターラーとゾーヤは下町の鍛冶魔女の店に向かった。
「こんばんわ」
「おーう、ターラー、今日はなんだい」
「あら、アイナ師、王都に来てたんですか?」
「あたしは半年が王都で、あと半年はランドランドとか回ってんぞ」
アイナ師はワルプルギスの夜市で杖の金具を付けてくれた凄腕鍛冶魔女さんだった。
プロント師に描いてもらった図面をアイナ師に見せると、さっそく作って杖に装着してくれた。
「は、早いですね」
「触媒に噴出口だけだかんな、楽なもんよ」
さっそく実験しようと思ったが、外はもう暗かった。
「明日にしろい」
「そうですね」
「アイナ、一緒に食事するか?」
「ああ、良いな、良い店に連れて行ってやんよ」
「わ、嬉しい」
その夜は、ゾーヤとターラーはアイナのお勧めのお店に行って、飲んで食べて騒いだ。
安いのに、雰囲気が良くて、美味しいお店であった。
次の日はゾーヤとターラーは朝一緒に工房へと出勤して、作業をした。
センター時間に移動して、ハンナとサリー、そして他の三人の赤魔女と一緒に炉を回した。
六人で炉を回すと滑らかに温度が上がり、すぐに二千度を超えて轟々と音を立てた。
なかなか楽しい作業だった。
お昼休みにゾーヤと一緒にランチを取った後、工場の中庭で四軸ジンバル魔法の練習をすることにした。
とりあえず、あまり高く飛ぶと危ないので、三尺ほど飛んで四軸を試した。
「お、おおお?」
なんだか魔力をジンバルに入れると、ブオッと吹き上がり、つつつと横にズレた。
四軸ジンバルとメイン出力を調整すると三尺ほどの高さを維持したまま、空中をすいすい動く事が出来た。
「おおおお」
これは楽しい。
ジンバルを操作して、くるくる回ったり、スライド移動したりして、自由自在に空中を移動できた。
ターラーはニコニコしながら、中庭を縦横無尽に飛んだ。
池の上も、植木の上も問題無しだ。
「わああ、すごいすごい、ターラーちゃん」
「わあ、私もやりたいー」
ハンナとサリーにもやらせてみた。
が、魔力が少ないのでちょっと飛んだだけでギブアップした。
意外と魔力を消費する魔法のようだ。
「でも、一回でも使えると落下の時に便利かも」
「『白』とかじゃないと無理かもねー」
とはいえ、四軸ジンバルはなかなか面白い魔法であった。
ちょっと高度を取って、そこから火魔法をどんどん打ち込む事ができそうだ。
次の戦場が楽しみだった。
ちなみに午後の仕事はハンナとサリーの魔力が切れで温度が下がった。
初日はそんな感じだったが、その後は毎日二千度平均で炉の温度を上げた。
みんなで魔道炉に魔力を注いで温度を上げるのは楽しかった。
センター時間が高い温度だと、ありがたがってくれる親方も多くて、感謝の言葉を沢山貰った。
温度が高いと着色料の鮮やかさが上がり、ガラスも滑らかにとろけるのだ。
「いつか、メロディ師の最高温度を超えたいわね」
「最高温度は四千五百度かあ、で、炉の限界温度が五千度だね、ギリギリまで上げる感じになるね」
「いまセンター時間は六人かあ、あと一人入れて七人体制で回す感じね」
「ワクワクするわね」
とはいえ、もうすぐ工房との契約期間も終わる。
次回の契約からだね。
と、ターラーは思った。
ターラーは工房からの帰り道、ゾーヤと話ながら歩いた。
「次はどこに行くんですか?」
「もうすぐ冬だからね、南の方に行って迷宮でも行くかね」
「いいですね」
一年を四つに割って、三ブロック三ヶ月単位で働く。
余りの三ヶ月は、職場から職場への移動と、余暇や休暇に当てる感じだなと、ターラーは思った。
ガラス工房『ガンドール』はとても良い職場で、都市魔女さんたちの友だちも沢山出来た。
あと三年したら、都市魔女の友だちたちとワルプルギスの夜市に行きたいな、とターラーは思った。
アパートメントも効率的で良い部屋だった。
定住生活は始めてだったけど、なかなか文化的でわくわくしたものである。
物価が高いのは難だけど、王都には美術館や芝居小屋、大きな公園、流行の料理屋などがあってゾーヤと一緒に楽しんだ。
「都会は良いですね」
「まあ、三ヶ月も居れば十分だよ」
「それはそうかもしれませんが」
とはいえ、工房との契約もあと一ヶ月となり、もうすぐ出発なんだなあとターラーは思った。
頑張って毎日魔導炉をぐるぐると回した。
回せば回すほど魔力の流し方のノウハウを覚え、温度はあがり、魔力消費量は少なくなる。
時々、センター組で酒場に飲みにいったり、騒いだりして楽しんだ。
なんだか、都会の若者の青春を実感して、ジーンとしたりするターラーであった。
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