底辺不良中学時代 (9)
生徒総会の次の日は、
憂鬱な気分で学校へ行った。
(F中へ転校するのは面倒だな)
でも、
情勢が一変していた。
また突然、
ルールが変わったのだ。
これから寒くなるので、
(注、中三の二学期の終わり頃だった)
1 制服の上にコートを着ても、良い。
2 マフラーも可。
この時代は、
第二次世界大戦のアメリカ軍に拠る原爆投下や、
その後の各国に拠る核実験で、
地球全体が冷えていた。
地球温暖化なんて、誰も知らない。
ちなみに、
私が住んでいた地域には、
当時、スキー場が在った。
某有名オリンピック選手が合宿していた、
伝統の有るスキー場が。
この事を妻に話したら、
「えっ?
あんな所に?」
と驚かれた。
今は、
ほとんど雪が降らないから。
そんな冬の寒さが厳しかった地域で、
コートもマフラーも禁止していたのだ。
しかも、
前年までは自由だったのに。
さすがに、これには、反対派の教師達が動いたらしい。
前日の生徒総会の後、
職員会議が開かれ、
巻き返しを図った様だ。
この規制緩和の発表が有っても、
前日の生徒総会の話題は、
私のクラスでは、
一切、出なかった。
全く無かった事に。
だから、
何故?
NとAが規制に反対したのか?
今でも知らない。
そして、
私の転校話は立ち消えとなった。
でも、
他のクラスの奴からは、
「お前の御陰でコートが着られる様になった」
と感謝され、
下級生の女の子からは、
マフラーをプレゼントされた。
どう考えても、
NとAの功績なのだが。
服装や髪型に対する規制に、
反旗を翻したのが、
もし、
嫌われ者の私一人だけだったら、
規制推進派の教師達は、
(ウルトラパーが、
また騒いでいる)
と、
放置して、
対応を生徒会に任せただろう。
でも、
人望の有るNとAが立ち上がったから。
私を個人攻撃して、
目先を変えようとしたけど。
さて、
ここで誤解が無い様に書いて置くと、
この話は、
【ルールが突然変更されただけ】なのだ。
服装や髪型に対して、
規制は誕生したが、
服装検査とか持ち物検査とか、
具体的な運用が始まったわけでは無い。
前述の暴力体育教師のI先生でさえ、
「体育の授業で、
部活の格好を許可したのは、
成長期だから。
学校指定の体育着が小さくなって、
着られなくなるからで、
派手なファッションを、
楽しませるためでは無い!」
と、
抽象的な事を言っただけ。
では、
何故?
服装や髪型の規制をしたのだろう?
「全然違う!」と驚いていた妻の中学時代の出来事と比べてみよう。
妻の記憶に残っているのは、
「一年のくせに、
ヤッケの襟を折ってんじゃねぇよ!」
と、
上級生の不良少女達にイチャモンを付けられた事らしい。
この話は、
妻から何度か聞いた。
話はズレるが、
これを最初に聞いた時は、
妄想してしまった。
(その場に、
底辺不良中学時代の私が、
もし現れたら、
その上級生達はどうするのだろう?
「キチ○イが来た!』って、
逃げるか?)
話を戻すと。
私の時代には、
こんな事は有り得ない。
何故なら、
ヤッケを防寒着として、
学校で着る習慣が無かったから。




