表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/21

19、ラインハルトVSグラウス

 

「ッ……!! シュツットガルト!!」


 苦虫を噛み潰したような顔をするグラウスに、ラインハルトさんは正対した。

 あぁ……、なんて優美な背中なのでしょう。


 ずっと、ずっとこれを待っていた。


「よく踏ん張ったサク、君がただのか弱い女性とは思っていなかったが––––信じて正解だったよ」


 見惚れていたわたしへ、信頼に満ちた言葉が掛けられる。


「あ、ありがとうございます」


 最初から無傷で済ますなら、ラインハルトさんに守られ続ければ良かった。


 けど、それではフウカを助けたいというわたしの想いは……中途半端なものになってしまう。

 それを理解していたからこそ、ラインハルトさんはわたし1人でグラウスのもとへ行かせてくれたのだ。


 ボロボロの体でしっかり立ち、笑みを見せる。


「推しに全部任せて、わたしは後方で守られるだけなんて……そんな怠惰、自分の信条が許せませんから」


「良い言葉だ、なら後は––––」


 銃を構えたラインハルトさんが、戦闘態勢に移った。


「僕が引き継ごう」


「ッ!!!」


 グラウスの宝具が紅色に輝くと、剣先が8匹の蛇みたいに分裂した。

 おそらく、掛かっていた宝具のリミッターを解除したんだろう。


 本気でラインハルトさんを殺すつもりだ。

 攻撃が仕掛けられるも、推しは悠然と言葉を繰り出した。


「グラウス第1王子、君の悪行はあまりに目に余る。かねてよりね」


 床が弾け飛んだ。

 蛇が喰らいついた場所にラインハルトさんはいない。

 横、いや––––上だ!


 大きく跳躍して、上空から銃先端の剣で1匹をすぐさま叩き斬る。


「悪行だと!? 私は民意の上に成り立ち、病で伏したお父様に代わって権利執行を任せられた正統者だ! 逆賊が何を言う!」


「その国王陛下に“死の呪い”を掛けたのは貴様だろう? ガキのように単調な作戦だ、そんなことをして陛下の懐刀である僕に気づかれないと思っていたのか?」


 グラウスの顔が歪む。

 えっ、つまり……アイツは自分の父親を権力目当てで殺そうとしていたの?


 ラインハルトさんは最初からそれに気づいていて、わたしの拉致をきっかけに行動を起こした。


 じゃあ、アイツの言う正統な後継者というのも––––


「戯言を!! 貴様らが死ねば全部私の思い通りになる! こんなふざけたクーデター、全員処刑にしてくれる!!」


 グラウスが全力で剣を操るも、ラインハルトさんの動きは常識を遥かに超えていた。


 的確にショットガンで迫る蛇を撃ち砕き、氷上を滑るような回避で華麗に攻撃を流す。

 動き1つ1つが洗練されていて、華やかなサーカスみたい。


 あまりにも……。


「実力が違う」


 それもそうだ。

 彼は大陸戦争時、1個師団をたった1人で壊滅させた伝説の軍人。


 最強にして最恐なのだ。


「国王陛下の呪いは、術者が死亡するしか解除方法が無い。すまんねグラウスくん––––」


 四方から迫った蛇を、ラインハルトさんは一瞬の動作で殲滅してしまった。

 全ての蛇を失い、王子は後ずさる。


「さあ、偽りの王子よ……そろそろ終わりにしようか」


 ラインハルトさんの口元には、優雅な笑みが浮かんでいる。

 彼は瞬く間にグラウスの背後に回り、銃剣を宝具の核に突き立てた。


「グラウスくん、この悪行は決して許されるものではない。ケジメをつけてもらうよ」


 グラウスの体が震え始める。絶望が彼を襲い、振り返る時間もなく、ラインハルトさんが銃剣を“核”へ突き刺した瞬間、宝具の光が消え去った。


「これで終わりだ……」


 ラインハルトさんは冷たい声で言い放った。

 グラウスは座り込み、その野望と悪行が……彼自身と共に砕け散った瞬間だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ