3原則と自我の目覚め(3)
・一応ファンタジーです。
・所謂マナを使った魔法やスキルは登場しません。
・但し超常現象やオーバーテクノロジーは登場します。
・この物語はフィクションであり現実世界と類似した事象があったとしても偶然の一致に過ぎません。
以上の事をご理解の上、お楽しみ頂けると幸いです。
「あれ? 何か、町の方が騒がしくない」
「……確かに」
町に向かっていた2人だが、距離も近くになり異変に気付いたらしい。
舞の言葉に靖之も反応し、無意識に移動スピードも上がる。
複数の人間が、あれだけ騒いでるからな……
火事とかの可能性も考えられるけど、昨日の今日だ。例(議事堂)の、事件絡みの線も捨てがたい。
とりあえず、様子だけでも窺っておいた方が良さそうだ。
それにしても、毎日違う場所に飛ばされるシステムはどうにかならないのか?
自分がどこに居るのかも解らんから、それだけでストレスになる。せめて、地名と国の中での位置ぐらい把握出来るようにしろよ。
ただでさえ、時間の制約があるっていうのに……
心の中で愚痴を吐く靖之を見て解るように、既に集中力は切れ掛かった状態。
変化が無いのが原因だろうか、それは一瞬で吹き飛ぶ事になる。
「……ストップだ。何かが、こっちに近付いて来る」
「えっ、あっ! 確かに……」
何者かの足音が聞こえ、すかさず道の脇に生えている木の陰に退避。
正体を見定めるべく、息を殺して待ち構えた。
それにしても、妙な違和感があるというか……
足音がするのはいいとして、この金属が擦れるような音は何だ?
まさか、この時代に甲冑を着てるヤツが居るとは思えんからな。だとすると、何かしらの化け物の類か?
いや……このタイミングで、町の方角からこっちに向かってるんだ。
相手が誰にせよ、まずは正体を確かめるべき。
どうするか考えるのは、それからでも遅くは無い。下手にやり過ごして、背後から襲われるリスクは潰す必要があるからな。
こんな時だからこそ、冷静に行動しなければ。
相手が接近し足音が大きくなるにつれ、押し寄せる緊張感と戦う靖之。
ピリピリした空気が漂う中、それは2人の前に姿を現した。
はっ?
コイツは、一体何なんだ……
いや……甲冑を着ているのは、まだ解る。でも、そこを歩いているのは下半身の部分だけじゃねぇか。
えーっと……
確か、首なし騎士だったっけ?
アメリカだかイギリスだかに伝わる、都市伝説。戦争で死んだ騎士の亡霊が、夜な夜な徘徊するっていう話は聞いた事がある。
でも、コイツは首どころか上半身すら行方不明。
まさか、体を切断された兵士の幽霊?
いやいや……ちょっと待てよ!
現実世界ならまだしも、こっちの世界は化け物がデフォルトなんだ。十中八九、コイツもヤツ等の仲間のはず。
だとするなら、問題なのはどのグループに所属してるかだ。
ただなぁ……
さっき居たマーフォークの口ぶりからして、ヤツ等ではないのはほぼ確定。妖精も甲冑繋がりで考えられるけど、よく見るとデザインが全然違うからな。
おそらく、無関係のはず。
残るのは、カエルぐらいか?
いや……ヤツは革製の鎧だったし、ここで考えても所詮は素人の推論。幸いこっちに気付いては無いし、このまま尾行するのもアリだ。
見つかりそうだったら撤退すればいいし、そうでなければ目的地を特定するだけ。
ある程度距離を保てば、こっちが発見される事も無いだろう。
じっくりと観察しつつ、靖之なりに分析を済ませる。
とはいえ、危険な状況には変わりはない。化け物が自分達の隠れている場所を通過するまで、身動き1つせず待機。
そして十分距離が離れるのを待って、2人揃って道路に出て来た。
「それで、これからどうする? 町が気になるけど、私は化け物の方を優先するべきだと思う」
「俺も、そう思う。リスクを負う必要は無いけど、昨日の今日だ。あの化け物が、どのグループに所属しているのか、把握しておきたいし」
意外にも、両者の意見が一致。
そのまま、尾行に移行しようとするのだが。
「えっ……危ない!」
「……きゃあっ!」
何かが上空から降って来たのを感じ、咄嗟に舞を突き飛ばす靖之。
その判断は正解だったようで、彼女の居た空間に剣のような物体が走る。
「ほぉ……完全な、意識外からの攻撃だったんだけどな。いいぞ……人間にしては、良い反射神経だ」
慌てて相手を確認するが、目の前に居たのは上半身だけの甲冑の化け物。
どうやら下半身は囮で、油断を誘って上半身が仕留める作戦だったようだ。
「……見つかったからには、仕方ない。とてもじゃないけど、逃げられるような状況じゃないからな」
「ええ……どう見ても、世間話をするような雰囲気じゃないし。向こうがヤル気なんだから、迎え撃つしかないでしょうね」
今にも切り掛かってきそうな相手に、臨戦態勢を取る2人。
それでも、殺し合いをする前に解決するべき問題があるのも確かだろう。
「一応、聞いておく……あんたが、ここに居る目的は?」
「ほぉ……その口ぶり。趣味の悪い服装から推察して、カリーナ嬢の関係者か?」
「あんたに応える義理は無い。それよりも、俺の質問に答えて貰おうか?」
「……嫌だと言ったら、どうする?」
案の定、最初から会話は平行線。
ただ、靖之も無駄な戦闘は回避したいのだろう。
「じゃあ、質問を変えよう……あんたは、昨日の議事堂の件にかんよしているのか?」
「議事堂? 何があったのかは知らんし、興味も無い。では、こちらからも質問させて貰う……この近くで、ロボットを見なかったか?」
「……さぁな。ロボットとは縁が無いけど、あんた達みたいな化け物なら何人かと出くわしたが?」
「なるほど……そうとなると、コイツ等はマーフォーク達とは別の目的で動いているのか? まぁ、そんな事はどうでもいい。ここで貴様等を放置して、カリーナに私の存在を報告させるとマズイからな」
言葉を交わしたものの、結果は変わらず。
もちろん、2人も黙って殺される気は毛頭ない。
「やっぱり、説得は無理か……なら、俺達も生きる為に戦わざるを得ない」
「まぁ、会話が成立しないからね……だったら、戦うだけの話よ」
腹を括ったのか、2人は静かに相手の前後に移動。
挟み撃ちの状況を作った所で、相手の体が変化し始める。
「私も、人間相手に時間を使うわけにはいかない。一気に勝負を付けさせて貰う」
そう宣言すると共に、突然体のパーツ毎に分離。
2人もさすがに危険と判断し攻撃を仕掛けるも、一瞬遅かったようだ。
「何人居ようと、所詮は人間……あまりにも、非力よ!」
靖之の左フックを右手でガードし、舞の右のミドルキックを左手でガード。
両者共に手加減なしの攻撃にも関わらず、完全に止められてしまった。
「クソッ! 鎧さえなければ、どうにでもなるものを……」
「……そんな事より、どうするのよ? さすがに、これはヤバいでしょう」
咄嗟に距離を取るも、早くも手詰まり感が滲み出る2人。
その間にも、相手の体は変化。どこからか飛んで来たバラバラの下半身と、瞬く間に合体してしまった。
靖之達にとっては、悪夢そのものの展開。
本来の姿を取り戻した化け物と、生身で戦う事を強いられてしまう。
「とにかく……俺が隙を作るから、舞はサポートを……っ!」
「えっ……ええ! 了解」
痺れを切らしたのか、舞に声を掛けながら突っ込む靖之。
とはいえ、策があるわけではない。間合いを詰めて殴る蹴るだけの単調な攻撃は、全て空振り。
舞が割って入ろうにも、さりげなく牽制されて不発のまま。
「どうした? 貴様等の力は、そんなものか……大振りの攻撃に頼っているから、足元がお留守になってるぞ?」
余裕綽々と言わんばかりに、攻撃の合間を縫ってカウンターを繰り出す化け物。
まずは靖之を足払いで転倒させ、返す手で舞を小手投げで撃退した。
「クソッ! まだだ……まだ、負けたわけじゃない。数では、こっちの方が上回ってるんだ……隙さえ作れば、勝機はある!」
「あーっ、クラクラする……でも、この程度で諦める訳にはいかない! 相手だって、丸腰の状態なんだから」
実力差は明白ながら、引くに引けない状況に自分を鼓舞する2人。
動かず迎え撃つ状態の相手に、すぐに立ち上がり攻撃するチャンスを窺った。
――同時刻。
「……どこだっ! この辺りの、どこかに居るのは間違いない……せっかく掴んだチャンスなんだ。逃がして堪るか!」
一瞬見えた影を頼りに追い掛けてきたものの、肝心な所で見失って焦っているのだろう。
女性は、なりふり構わず捜索を続けていた。
「どこだ? 隠れられる場所なんて、そうないはずなのに……」
物陰を中心に探すも、全て空振り。
まさか、自分の頭上に浮遊しているとは想像もしていないようだ。
一体、何なのだ……
そこまで探したのであれば、別の場所に逃げたと考えるのが普通のはず。感情に支配されて、周りが全く見えていない。
人間とは、客観的な思考さえ出来ないのか?
それとも、何か別の要因があるのか?
私には、解らない……
その物体は眼下の女性に呆れたのか、興味を失ったかのようにその場を離れた。
とはいえ、他にやる事がないわけではないらしい。
おやっ?
あの、パン屋の外で荷物を運んでいる男児。骨格・筋肉の付き方から推定して、12歳前後といったところか。
まだ幼いのに、日々の糧を得る為に働いているようだ……
親は死別したか、それとも彼自身が捨てられたのか?
どちらにせよ、この時間まで働くのは成長に悪影響を与える。人間とは、そんな初歩的な事さえ解らないのだろうか。
正直、今の所学ぶべき点は見当たらないが……
上空から子供を観察するも、どこか腑に落ちないようだ。
そして何を思ったのか、突然フォルムチェンジ。ジャケットにズボン姿の人間に姿形を変え、近くの路地裏に着地した。
どうやら、間近で人間を観察する魂胆らしい。
「話を聞くなら、大人より子供だろう……そうだな、あの子にしよう」
周囲を見渡して、ターゲットを小さな荷車を曳いた女の子に定めたようだ。
接近する途中で通行人の懐から財布をスリ、さりげなく声を掛ける。
「すみません、そこのお嬢さん……荷車のリンゴを、何個か売ってくれませんか?」
「えっ、本当ですか? ありがとうございます! 何個にしますか」
「個数ですか? そうですね……じゃあ、5個貰おうかな」
軽く言葉を交わし、代金を支払うロボット。
リンゴを紙に包む姿を、興味深く見詰める。
美しい……
汚れの無い眼に、ウソ偽りの無い笑顔。これこそが私が求めていた人間の姿であり、学ぶべき対象だ。
この子なら、何か解るかもしれない。
先程の女性とは違い、観察対象とみなしたのだろうか。
少女からリンゴを受け取ると、そのまま質問した。
「お嬢さんはまだ若いようにみえるけど、学校には通っているのですか?」
「んーっ、学校? お金が無いから通えてないけど、そのうち行くつもりなんだ」
「お金が無い? 失礼ですが、親御さんは……」
「居ないよ? でも、教会の人が親切だから悲しくないんだ」
サラッと答える女の子に、言葉を失うロボット。
そんな彼を見て、当人は笑いを押し殺している。
「どうしました? 私は、何か変な事を言いましたか?」
「いえ……この前会った人と同じ反応だったから、つい笑っただけよ。つい数日前なんだけど、懐かしいなぁ……」
「良い笑顔だ。よければ、その人の話を聞かせてくれませんか?」
「変なの、おじさん……そんなに、聞きたい?」
「ええ、是非お願いします」
花が咲いたような笑顔に、ロボットは聞かずにはいられなかった。
それが、自分が求めている情報だと解っているから。
――その頃、靖之達はというと。
「強い……おそらく、肉体的な強さだけならカエルの化け物と同等。ただ、コイツの体は鎧で守られている……このまま正面から戦っても、こっちに勝ち目はない」
「……住む世界が違うとはいえ、だからといって引く事も出来ない。このままじゃ、殺されるのは時間の問題……困ったもんね」
まともに攻撃を貰ってないとはいえ、力の差は歴然。
それでも戦闘による興奮なのか、絶望するには至ってないのだろう。ノーダメージの化け物を睨みつつ、再び攻撃を仕掛けようと試みる。
一方で、相手も単調な2人の攻撃に飽きたようだ。
「悪いが、私にはやらなければならない事がある。そろそろ、決着を付けさせて貰う」
そう宣言すると、腰の剣を抜刀。
間髪入れず、靖之に切り掛かって来た。
「……よっ、避けて!」
「まっ、間に合わん!」
舞が叫ぶが、靖之は虚を突かれしまい完全に反応が遅れた形となった。
咄嗟に左手で庇おうとした瞬間、ブレスレットが反応。
「なっ……貴様が、何故それを!」
気が付くと靖之は短い棒のような物を握っており、両手で剣をガード。
今度は相手から距離を取ったが、明らかに動揺していた。
「……なるほど。どんな原理かは知らないけど、このブレスレットは武器に変化するみたいね。とはいっても、弓矢や銃みたいな複雑な構造は無理みたいだけど」
舞は離れた場所に居たから、客観的に見れたのだろう。
実際に剣や槍に変化させるのを、靖之も横目で確認。
「これで、条件は互角。今度こそ、アンタを倒してみせる」
「素手では相手にならなかったけど、これなら話は別……誰にも邪魔はさせない」
ノドから手が出るほど欲していた武器を手に入れ、一気に活気付く2人。
対して、化け物も仕留めきれずに頭に血が上っているらしい。
「たかが武器1つで、調子に乗るなよ。貴様等を殺し、人間など相手にならないと言う事を証明してやる」
それまでのカウンター戦術を放棄し、攻撃的なスタイルに変化。
両手で剣を持ち、そのまま靖之に向かって突っ込んで来た。
読んで頂いた全ての方々に、感謝申し上げます。
投降ペースが不規則になってしまい、申し訳ありません。
次回の投稿ですが、まだドタバタしている為毎日投稿は不可能です。
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