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夢国冒険記  作者: 固豆腐
21/70

バラの花輪は死の香り(5)

・一応ファンタジーです。

・所謂マナを使った魔法やスキルは登場しません。

・但し超常現象やオーバーテクノロジーは登場します。

・この物語はフィクションであり現実世界と類似した事象があったとしても偶然の一致に過ぎません。


 以上の事をご理解の上、お楽しみ頂けると幸いです。

「……夜明けまで、後どれぐらいなのかな?」

「さぁ……月の位置からして、まだ数時間はあると思うけど」


 靖之と舞は、川の畔で息を殺して朝になるのを待っていた。

 当初の予定では、追っ手が無いのを確認し森の中に逃走。朝になるのと同時に、自分達の居る世界に帰る計画だった。

 しかし、突然の雨でみるみる水量が増大。

 渡れる場所を探している内に、体力と時間を消費して断念した。


「……ちょっと、寒くなってきた。どうせ誰もここに来ないんだし、温まってもいいんじゃない? 燃える物なら、森の中にいくらでもあるでしょうし」

「気持ちは解るけど、今は我慢した方がいい。水量が多くなって危険度が増したとはいえ、建物の中に居た人間は追い詰められている。こっちに誰も来ないという確証は、どこにもない」

「そうね……雨はもう止んだとはいえ、私達はサバイバルの専門家じゃないし。火を点けるのも、四苦八苦して失敗するのが関の山ね」

「申し訳ない……天候のリスクを考慮してなかった、俺のミスだ」

「いや、靖之の責任じゃないでしょう? 私だって、外に出た時にこんな事になるなんて考えてもなかったんだから」


 感情の抜け落ちた表情で、早くも反省会をする2人。

 周りには木や草が生い茂り、身を隠すにはもってこいの場所である。よほどのミスでもない限り、発見される事はないはずである。

 ただ雨により、自分達が考える以上に体力が疲弊しているのも事実だった。


「ここに居座るのもアレだし、もうちょっと体力が回復したら森の中で食べ物でも探そう。木の実ぐらいなら、何か見つかるかもしれんし」

「あっ、いいね。ちょうどお腹が空いてたし、喉もカラカラだもの。飲めそうな水でも探せば、一石二鳥よ」

「それもそうだな……よしっ、後30分粘って動きが無かったら探しに行こう」

「了解。そうしましょう」


 疲労に加えて空腹と喉の渇きで、集中力が切れ掛かっている2人。

 既に頭の中は、基本的な欲求を満たすことで大半を占められていた。


 まぁ……色々あったとはいえ、今日は収穫もあった。

 持ち出した書類を俺達の世界に持って帰れるかは解らないけど、出来たなら大きな成果。学校に持って行き、解読出来れば大きな進展になるだろう。

 ただ、気になるのは爆発を始め攻撃して来た集団だ。

 どこの誰かは知らんが、恐ろしい手際の良さだったからな。建物の中に居たヤツ等は全滅しているだろうけど、1歩間違ってたらこっちまで殺されていたはず。

 これに関しては、舞の判断に感謝するしかない。

 俺も、もっと慎重に考えるようにしないと……

 このままだと、いつか取り返しのつかない事になりかねん。いや、俺1人だけだったら自己責任で済む。

 でも、舞も一緒となれば話は別だ。

 気を引き締めなければ。


 靖之としては何気なく考えたつもりだが、無事なのは偶然と舞の判断だと分析。

 急に危機感が芽生えたのか、先程までの楽観ムードは完全に消失した。


 んっ?

 あそこだけ土が剥き出しになっているけど、よく見るとうっすらと板状の物が見える。しかも、それが森の中に一直線に伸びてる。

 ここに来た時は、特に気にならなかったが……

 もしかして、雨で上に被せていた土が流れたのかもしれない。

 となると、あれを辿って行けば何かがあるんじゃないか? そうだ……わざわざ、森の中で研究施設を建てるぐらいだ。

 緊急時の避難場所の1つや2つはあっても、何もおかしくない。

 じゃあ、どうする?

 このまま隠れて、朝になるまで待つのもいい。仮に近くに人が居ても、増水した川にわざわざ近付くアホは居ない。

 生存者の捜索をするにしても、優先度は低いはず。

 安全策を選ぶのであれば、これ以上のプランは無い。

 じゃあ、板がどこに繋がっているのかを調べるとしたら?

 もちろん、何も無いならそれに越した事は無い。ただ、2つ目の建物を発見したり隠し通路だったりしたら面倒だ。

 こっちが見つかるリスクが、一気に跳ね上がってしまう。

 それなら、いっそ見なかった事にするか?

 実際に、今まで何の支障も無く隠れられているんだ。建物から逃げ出しているなら、もう何かしらの動きがあるはず。

 それが見られないのなら、このまま放置してても問題ないはず……


 靖之なりに必死に頭を使うも、疲労の影響がモロに出ているのだろう。

 明確にコレという決断を下せない中、それは突然現れた。


 バラの花輪だ♪ 手を繋ごうよ♪

 ポケットに、花束刺して♪

 ハックション! ハックション!

 みぃんな、ころぼ♪


 澄み切った可憐な歌声が聞こえたかと思うと、川の上に妖精らしき女の子が出現。

 赤ん坊ぐらいの大きさながら、見た目は幼稚園児ぐらいだろうか。

 金髪でウエーブの掛かったロングヘアーに、整った顔立ち。背中には半透明の背丈ほどの大きな羽が生え、フワフワと空中を漂っている。

 ただ、可愛らしく見えるのはそれだけ。

 着ている服は金属製の甲冑であり、手には短刀サイズのナイフ。全身を纏う鱗粉も、ドス黒く殺気を纏っているように見えた。

 想定外の存在に思わず固まる2人だが、化け物は完全にスルー。

 同じ歌詞を何回か繰り返し歌うと、何の前触れも無くスッと姿を消した。


「ちょ、ちょっと……何なのよ、アレ?」

「……解らん。ただ、例のメデューサの化け物と同類と見てまず間違いないと思う」

「なっ、なるほど……でしょうね。じゃあ、もしかしてあの化け物もここに来てるのかしら?」

「いや、それはさすがに考え過ぎじゃないか? 海の時はアイツ等に明確な理由があったわけで、今回はそれがあるとは思えないし」

「でも……何か上手く言えないけど、こう嫌な予感がする。このまま、ここに居たら大変な事が起こるんじゃないかって……」

「気味が悪いのは解るけど、だからこそ動くべきじゃないと思う。あの妖精モドキが何者であれ、ここに来て今まで俺達は誰にも見つかってないんだ。わざわざ、自分達から危険を冒すべきじゃない」

「それは……確かに、靖之の言う通りなのかもしれないけど……何かこう、引っ掛かるのよね。胸騒ぎというか、虫の知らせというか……モヤモヤした気分が晴れなくて、不安になるっていうか」


 両者の意見に食い違いが残るも、だからといって明確な解も示せないのだろう。

 何とも言えない空気が2人を包む中、またしても異変が発生する。


『はぁ……これだから、文明の遅れた人間は好きにはなれないんだ。せっかくチャンスを与えたのに、みすみす手放すとか……お前達は、バカか? ここに来て何日経ったのかは知らんが、何の学習もしてないのか?』


 靖之の頭の中に、さきほどの妖精の声が流れ込んで来たのだ。

 状況が掴めず困惑して周囲を見回すのに対し、再び声が聞こえる。


『……断言してもいい。お前達は、この世界から抜け出せないまま死ぬ。それも、おそらく2週間も掛からないだろう』

『クソッ! だが……そういうアンタだって、あのメデューサと同じだろ? 元居た世界に帰れないのは、俺達と同じじゃねぇか!』

『ほぉ……カリーナも、こっちに来ているのか。確かに、私もお前達と同じ境遇ではある。ただ……あまりに、行動がバカ過ぎるからな。小麦畑で見かけた時に警告したのに、まさかここまで首を突っ込むとは。正直、驚きを通り越して呆れている』

『あれが、警告? バカみたいに、同じ歌詞ばかりじゃねぇか! ちゃんと言葉にしないと、伝わるわけねぇだろ!』

『これだから知識の無い人間は……せっかく人間の作った言い伝えの歌を使ったのに、このザマか?』

『どこの国の伝承か知らんが、解るわけねぇだろがよ! さっきから、好き勝手澄ました事ばかり言いやがって。自分は安全な所で見てるだけで、ただ逃げてるだけだろ? 全然動きもしないのに、他者をアレコレ言うだけ。口では偉そうに言うけど、現実から目を背けているだけなんじゃないか?』

『……人間風情が、偉そうに。どうやってあのカリーナの手から逃れたかは知らんが、いつまでも幸運が続くと思うなよ?』

『少なくともあのメデューサは、アンタとは違って自分達の世界に戻ろうと必死に足掻いていた。何もせず傍観しているだけのヤツが、どうこう言う資格は無い』

『なるほど……それなら、見せて貰おうか。もしこの危機を2人だけで乗り越えられたなら、お前達を認めよう。せいぜい、足掻いてみるといい』

『……何だと? おいっ、それってどういう意味だ!』

『じきに解るさ……じきに、な』


 靖之の脳内で繰り広げられた言い争いは、一方的な宣言で終了。

 咄嗟に内容を理解出来ない中、今度は川の対岸で動きが見られた。


「おいっ! 生き残りを探せ。時間的に考えて、そう遠くには行ってないはずだ」

「ブツの回収は出来たけど、ターゲットには逃げられただと? どの面晒して報告するつもりだ!」

「とにかく、虱潰しに捜すんだ! 逃げられましたでは、済まされんからな」

「2~3人で構わない。奥の川の方を見て来るから、こっちに来させてくれ!」


 どうやら襲撃した集団がミスを犯したらしく、ちょっと離れているのにダダ漏れの状態。

 自分達の居る場所が、瞬く間に危険なスポットに変貌したらしい。


「……仕方ない。いくらリスクがあるにせよ、ここに留まるよりマシなはず。最大限に警戒しつつ、移動しよう」

「……そうね。何かあったとしても、私達は遠目から観察するだけ。そこにもアイツ等が来るなら、そのまま森の中に隠れるしかないでしょうけど」


 あれほど割れていた意見が、すんなりまとまる2人。

 すぐそこまで何かが近付く気配が漂う中、目印を追って森の中に入って行った。


 クソッたれ……

 さっきの化け物といい、今日はとことん運が悪いな。正直2度と来たくないし、出来るならすぐに朝になって欲しい。

 ただ、どこもケガをしてないのも事実。

 アイツの言う危機が何にせよ、現状で有利なのは俺達なんだ。このまま先手を取りつつ立ち回っていれば、安全なはず。

 昨日を含めてこっちに飛ばされるようになってから、無茶し過ぎたからな……

 これ以上はさすがにマズいし、何より舞を危険に晒すわけにはいかない。その為にも、ここから先の判断が重要になる。

 その為にも、慎重に動かなければ。


 脳裏に妖精の捨て台詞がよぎるも、必死に振り払って自分を鼓舞する靖之。

 板は先程の排水溝と同様で、雨でカムフラージュが解けていたらしい。後を追えば、その部分だけ木や草が無い場所が続いていた。

 そして5分程行った先に、それはあった。


「なるほど……まさか、こんな場所に隠し通路があったとは。最初の爆発があった時から逆算して、逃げたヤツは既に脱出しているはず。もう探しても、無駄だろうな」

「……でしょうね。とうの昔に森の中でしょうし、私達もここに留まっている理由もない。得る物も無い以上、さっさと逃げるべきじゃないの?」

「ああ、その通り。ここにヤツ等が押し掛けて来る前に、さっさとトンズラするに限る」


 倒木の脇に、井戸のような穴が開いているのを発見。

 そこから複数人の足跡が森の中に続いており、2人は全てを察したようだ。何かを期待したのか、拍子抜けした顔を見せつつも瞬時に気持ちを切り替える。

 追っ手が来る前に、自分達も行方をくらます必要がある。

 彼らは、足跡とは別の方角に向かって走り出した。


――同時刻


「……以上の点から、生存者が逃げた方角は明らかです。既に追跡チームを編成して先回りをしておりますので、捕獲するのは時間の問題かと」

「なるほど……まさか、こんな森の中に隠し通路を作っていたとは驚きだ。しかし、それでも所詮は非力な人間よ。そっちは問題ないとして、我らが忌まわしき同類の方はどうだ?」

「あっ、その……そちらに関しましては、まだどこに隠れているのかも不明でして……でも、ご安心下さい。目下全力で捜索中ですので、発見は時間の問題かと」

「別に強弁せずともよい。相手は、評議会の現役メンバー。貴様等が束になって掛かった所で、尻尾を出すほど耄碌してないはず。事を荒立てると面倒になりかねんし、今回はスルーした方がいいだろう」

「はっ! 了解しました」

「あっ、そうそう……あの2人組の方はどうだ? まさか、あの程度の攻撃で巻き添えになって死ぬとは思えんからな」

「ええ、2人なら混乱に乗じて屋外に脱出。川の方角に逃走後は、不明です。それで、どうしますか? 気になるようでしたら、拘束しますが……」

「いや、ここで待つだけなのもヒマだからな。2~3だが聞きたい事もあるし、直接聞きに行くとしよう」

「……えっ? カリーナ様、御本人が行かずとも我々が連れてきますが」

「いやいや……まぁ、ちょっとした世間話をしに行くだけだ。貴様等は、その間に仕事を終わらせておけ。変に、こちらの姿を見られるリスクを高めたくないからな。口封じを済ませて建物に火を放たら、すぐに撤退するぞ」

「御意のままに」


 カリーナと側近は手早く話をまとめると、そのまま行動を開始。

 テントの外に出ると、木々の枝を飛び移りながら移動して行った。

 読んで頂いた全ての方々に、感謝申し上げます。

 次回で、「バラの花輪は死の香り」のパートが終了する予定です。

 投降ペースが不規則になってしまい、申し訳ありません。

 次回の投稿ですが、まだドタバタしている為毎日投稿は不可能です。

 細かい情報は、ツイッターでご確認下さい。

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