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73、私もポンコツだが思わずほっこり

 残りの1本をロイドに飲ませたい。


 でもマルタに任せておくと何か怪しいエロ薬だと思われるかもしれない。

私が頼んで飲ませよう。

ロイドだって身体が痛い筈だ。アレスも運んでくれて大変だったろうし……ここは私が頑張る。


 ロイドは御者をしているので外にいる。

この馬車、欠陥だな。と思うのは御者台と馬車内を行き来が出来ないこと。

だから走行中の外と中の行き来をロイドは、一度馬車の天井に飛び移ってから移動する訳で……誰仕様なんだよ? 普通の人は無理だよ。


なので小窓から話しかける。

コンコン……「ロイド戻ってきて!」

小さい小窓で御者をしているロイドに話しかける。


お、気がついた?


「シーラ御者を変われ。」


「はい、ロイド様。」


そんなやり取りが聞こえたあと、マルタがドアを開けるとロイドが飛び込んできた。


シーラとレイラ……いつもどこにいるんだろう……?

あの二人は不思議。


「お呼びですか?」


「うん。えーとちょっと飲んで貰いたい物があるんだけど……」


ロイドの眉間にシワがよる。


あれ? ダメでした?

よく考えたらマルタも同じこと言ってたかも? あの時はマルタの事をなんも工夫が無いとか厳しめに思ってしまったが、やっぱり私も何も工夫が無いポンコツでした。ダメじゃん。


それにしても何て警戒心の強い男なんだ!


でも大丈夫。

なんたって私、ロイド様から"娘認定"受けましたから、あの時は恥ずかしくてヤバかったけど今はイケる気がする。


「お父さん、いつもありがとう。これ飲んでみて、愛情1本だよ。」


ハイポーションの小瓶をロイドの前に差し出した。

何かのCMみたいになってしまった。



ロイドの眉間のシワが深くなった。


「私に、こんな大きな娘はいません。」


うわーーーーーーーーーーーーーーバッサリきたーーーー


酷くない? ついこの前、さっきだよ、娘認定したばかりーーーーーーーーーーー!!


「さっきと違うーーー! ズルいーーー!!」


もう口がブーブー言うくらい文句を言ってやる!!


 するとロイドは私が持っていた小瓶をひょいっと受け取り、一気に飲み干した。


マルタと私はビックリで口が開いたままだった。


「飲みましたよ。この間から二人でグルでしたか……」


あっさり飲んだ……何だろうこれ……?


なつかなかった狂暴な野良猫が、手から初めて餌を食べてくれた……的な感情になった。思わずほっこり。



「森を迂回ついでに傷に良いと言う温泉に寄るつもりでした。ケガは治りましたがこのまま温泉町カホイに寄ります。」


温泉!? 温泉あるんだ!!


「温泉いいの? 寄ってくれるの? 入っていいの!?」


テンション上がりまくりだった。

嬉しーーーーーーーーーーーーーーい!


「勿論ですよ。姫様が"濡れた犬の臭い"ですから……」


ロイドが微笑みながら言った。


テンション一気に下がった。

私、臭いんかい!!









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