表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
253/295

252、結びつき

「何か……話がある?」

 私の態度を見てフェルが聞いてきた。


「久しぶりにお茶を淹れようね」


 フェルがカップを出して来た。

お茶とお菓子を用意してくれる。


だが手つきが震えている。


 お茶を淹れるだけの事がフェルには大変な作業になってしまったようだ。

フェルはあと一年? 

 今のフェルを見るともっと早そうだ。一年どころか、もっとずっとずっと早い……


 魔力を魔導コアに全て入れてしまったのか、フラフラしている。

そんなフェルを見るのは辛い。


ちょっと目頭が熱くなる。


「リリア? どうしたの? 泣いてるの?」


あ、ヤバイ……涙がこぼれてしまった。


「アレスから話を聞いたんだね?」


 私は黙って頷く。


「リリアは反対なの? ボクは嬉しい。もう一度ニーナに会える。苦しい記憶が全部無くなってやり直せるなら他の事はどうでも良くなる……」


 フェルが遠くを見て話す。


「これでリリアは助かるよ。ニーナのような事にならないで済む。次に産まれたらきっと姫巫女のない世界だ。魔王が消えて勇者も必要なくなる」


 そう言ってフェルが微笑んだ。


 私が助かる? それはリリアが生け贄にされないから?

フェルの望みはアレスを復活させてヴァリアルを倒すことだったよね? 

それが今の時代じゃなくても良いってこと? むしろそっちの方が良いってこと?

 フェルはアレスが刺された現場にいたんだ。きっと物凄くやり直したい過去だったろう。

戻ってやり直せるなら、それが一番良いはずだ!!


 でも私はもともとこの世界の人ではない。リリアがまた生まれたとして、今度産まれるリリアは『私』なの? 別のひと?


「完全消滅って私の力が必要だって……」

何とかやり直す事を止められないか?

頭を必死で巡らせ思いついた事を口にした。


「そうだね。大丈夫。リリアは安全なところで待っていれば終わるよ。アレスに任せておけば……」


 世界が消えるなら私に安全なところはない。


「三年待たなくても君は結晶を作ってくれた。妖精と姫巫女の力の結晶体。それをアレスに渡すと良い……それでおしまいだ」


そう言ってフェルがコケた。ぷるるんがそれを受け止めた。


「大丈夫?」


「はは……最近よく転ぶんだ。ぷるるんが助けてくれるけどね」


 今のフェルの姿に心が痛む。

元気で一緒に遊んでいたフェルと違いすぎる。


「ねえ、リリア、やり直しの世界でも友達になろうね」


フェルが手を出して来た。フェルの手を握る。弱々しい……


 そうだ。このままだったら、フェルは亡くなってしまう。

ロイドも三年後にはいなくなってしまうかもしれない!!


 やり直しが出来るならその世界の方がが正しいのかもしれない。

この世界に残りたいのは私のワガママ……?


 フェルの手を握ったまま考え込んでしまった。


 暫くするとガタッと音がして壁が開いた。

アレスが帰って来た。


 ぷるるんの上のフェルに目がいく。


「フェル、寝ちゃってたね」


 そっと近づいてきたアレスがフェルの様子を見て言った。

さっきまで話をしていた筈のフェルは気を失ったかの様にぐっすりと眠っていた。

ぷるるんがフェルをのせたまま暗い方へ移動して行った。奥で休ませてくれるようだ。


「フェルの弱り具合で驚いちゃった。あんなになってまで魔導コアに魔力を入れてたんだね」


「ああ……」

アレスが暗い顔をしてフェルとぷるるんが消えた闇の方を見つめていた。


「思った以上に悪いみたいで……フェルの意識がはっきりしているうちに出発してあげないと……」



 そのままアレスは私のとなりに座りお互い黙ったまま時間が過ぎた。


あのフェルを裏切って私と一緒にいてね、なんて言えるはずもない。


「大人になったら結婚しようって言ってたけど、無理っぽいね……」

別にそんなことを言うつもりも無かったがポツリと言葉が出た。

責めるつもりはないが心の奥で言わずにはいられなかったのかもしれない。


「本気だったよ……柚子と和也の結びつきよりリリアとアレスの結びつきは弱い気がする。だから君との結びつきが欲しかった」


「結びつき?」


「君がこの世界に転生出来たのは、それのお陰かなって……運命の糸の結びや絡みっていうものは存在するらしいから……だから今度も……もしかしたらって思った」


「この世界の結婚式ってどうやるの?」


「今は壊されてしまったが姫巫女の神殿か、勇者の像の前で誓い合うのが一般的かな? 立会人がひとりは必要……」


「じゃあ俺がやってやるよ!」

 チビリルが言った。

さっきまでぷるるんと遊んでいたがぷるるんがフェルのベッドになってしまったので退屈していたようだ。


「俺がやってやるって?」


「だから立会人だよ! この場で結婚しちゃえばいいじゃん!」

チビリルがフンと鼻をならす。


私とアレスが顔を見合わせた。


「勇者の像じゃなくて勇者本人に誓った方がスゴくね? しかも霊獣の俺様が立会人、結びつきバッチリじゃん!」

チビリルが得意気に言った。



私的にはもっとこうしたいとか結婚には夢があるが贅沢だろうか……?

今はそんな事を言ってる場合ではない。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ