242、回復待ち
自室に戻ってフェルの地下室に向かった。
地下室に着くとぷるるんとチビリルとアレスが遊んでいた。
あれ? アレス結構元気だった? 良かった。
アレスがフリスビーのような物を投げてチビリルとぷるるんで取り合いをしている。
私が行くとアレスが少し気まずそうに固まった。
『アレスを信じてあげて』
『アレスを責めるのは気の毒です』
フェルとロイドの言葉が頭をよぎった。
わかっている!
アレスが喜んでロイドの眼を取っていった訳じゃないことを……
そしてマルタを助けるためにアレスが頑張ってくれたことも……
「アレスも動けるようになって良かった」
私が話しかけるとアレスがちょっとホッとした表情をした。
「リリア……俺……」
「もういいよ。アレスも大変だったんだね」
アレスがにっこり笑って私の所に来た。
その笑顔のかわいさにゴフッとなりそうだ。
「あの……昨日手を治してくれてありがとう。ちゃんとお礼言ってなかった」
「いや……そのくらいは……」
「あとマルタを助けてくれてありがとう」
「うん。それはロイドさんと約束したから……」
あれ? "ロイドさん"? アレスが言うと変だな。
「アレスはもう回復できたの?」
「いや……動けるようにはなったけど……魔力と精神力が全然だ。……こういうときは憂鬱で落ち込みやすい……」
あ、そうなんだ。何かいつもと違うのはそう言う事?
「どうやったら回復するの?」
「どうって自動回復だから、時間が解決……」
「どのくらいで回復?」
「3日で全回復かな、でも半分くらい回復すれば気分的にかなり違うんだ……もっと気持ちが回復してからリリアに会いに行くつもりだった。今だと……ちょっとだめだ!」
「ダメって何が?」
「物凄く……『泣き言』を言いたくなる。リリアには聞かせられない……」
物凄い泣き言って何?
でもフェルがアレスの所に行ってって……
昨日話はアレスに聞いてって言ってたし、
何かアレスから話すことあるのでは?
「だから明日改めて……」
「何か回復が早くなる方法って無いの? それに落ち込むだけなら害は無いんじゃない?」
「そりゃそうだけど……辛いんだ……変なこと言いそうだし……」
変なことって何?
"物凄い泣き言"
"変なこと言いそう"
どっちも気になるよ。
「アレスはもうこの世界で無敵なんじゃない? 泣き言なんて無いでしょ?」
アレスの表情が固まる。
「え? 無敵じゃないの? 魔王の方が強いって事無いよね?
絶対アレスの方が強いと思うけど?」
「あ、ああそれは問題じゃない……」
「じゃあ何? 二周目っぽいから無双でいいじゃん!」
「そうじゃないんだ……そうじゃない……」
「そうじゃないって……そう言えばアレス何処かに行っちゃうの? 昨日フェルがアレスが旅立つとかなんとか……アレスに聞いてって言われてたの!」
「……リリア……明日話そう。今はムリ」
アレスが遠い目をした。
私はMPもSPも切らした事が無いからわからないが、そんなに辛いものなのかな?
わかりづらいから困るな。
でもアレスが辛いときに分かち合えないのはどうなんだろう?
ちゃんと話してほしい気もする。
「アレス!」
私は両手を伸ばしてアレスに抱っこ要求ポーズをした。
アレスはちょっとためらってから私を抱き抱えた、と思ったらそのまま抱き締めて来た。




