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237、たまには言うことを聞いてくれ

 アレスと星を見ていた時、こんなに暗かったろうか?


 月も星も今は陰っていた。


裏庭の木々のせいで益々暗い。


何故か屍兵もうろついていない。


 何かに足を捕らわれ転倒した。


転んだ拍子に骨折している痛みが脳天に突き刺さった。


痛い!

痛い!痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!


うずくまって動けない。


 雲が退いて月明かりが少し射してきた。


私がつまずいた物の正体は屍兵の残骸だった。


 声にならない声が出た!


痛みと恐怖でどうにかなりそうだ!


 ロイドに言われた通り大人しくしていれば良かったのに……

私はあまりにも無力な子供だ。


 でもマルタもロイドも私とって大切な家族だ。


二人を無事に連れ戻したい。


 いつも私が困っているとロイドが助けに来た。

今度は私が助けたい。

いや、助けられなくても少しでも力になりたい。


腕の痛みで意識が遠くなりそうだった。


 以前に鎮守の森の中で動かないアレスを抱えて泣いていた事を思い出す。


 あの時はフェンリルさんが来てくれた。

その後ロイドが助けに来たんだ。


私はみんなに助けられてばかりだ。


「う、う、う……」私は転がったまま泣いていた。


 助けて、マルタとロイドを助けて!!


 どうしてあの二人にいつも悲しいことがおこるの?


 どうしたらあの二人を助けられるの!?


 どうして私には何の力もないの?


こう言う時こそ姫巫女の力とか発動しないの?


うわーーーーーーーーーーん!! アレス! どこ!?


 いきなりフワッと浮いたと思ったら私は抱き抱えられていた。

 

 アレス!!!?


「どうして姫様は私の言うことを必ず守らないんですか!?」


ロイドでした。


どうしてここに?


「マルタは?」


「見つかりません! 左眼で探そうとしても痛みで集中出来ません! そしたら子供の泣き声が聴こえて来たんです!!」


あ、怒ってる。そりゃそうだよね。

ぐすぐす。

私も痛くてなんだかわからない……全くの役立たずだった。


「本当に言いつけを守れない娘だ! 私はもう娘はこりごりです。こんなに心配かけるもんですかね? 次育てるなら絶対に男の子にします!」


 怒りながらロイドが変な事を言い出した。


「ロイドは息子が欲しいんだね」


「こんなわがまま娘は困りますからね」


「マルタに似てたらきっとかわいいよ……」


「……そうですね。姫様は私の手に負えないのでさっさとお嫁に出しましょう。良かったですね。アレスがもらってくれそうで……」


「ありがとう、お父さん」


怒りながらも冗談を言うロイドに安心してしまった。


 見上げると月明かりで見たロイドの包帯は赤黒い血で染まっていた。


私は一気に自分の血の気が引くのがわかった。


 このままではロイドはあぶないのでは?


 無理して動いたらダメなのでは?


その時、月に重なって何かが襲いかかってくるのが見えた。


「ロイド! 上!!」


すんでのところでロイドが私を抱えたまま避ける。


 私はハッとした。

自分の目に映るものが信じられないものだった!!


襲って来た何かは、変わり果てたマルタだった。


髪はほどけてうねっている。


口は裂けて牙が出ていた。


眼は赤くつり上がっていた。


これがマルタとは思えない!


が、マルタのメイド服を着ている。


「血の匂いにつられて向こうから来てくれたようだ」


ロイドが抱えていた私をおろす。


「姫様、逃げて下さい。姫様に何かあったらマルタが悲しみます」


ええ!? でもロイド、何かする前からヨロヨロだよ?


「いいから、逃げて下さい。たまには言うことを聞いてくれ……」

最後の方は悲痛な声に聞こえた。


ロイドはマルタの方に進んで行った。


マルタは獣のように唸っている。


 その姿を見るだけで心が痛い、あんなに綺麗なマルタがまるで獣だ!


ゆっくりロイドが近付いて行く。


()()()()()()!」


マルタがビクリとした。


「マルガリータ、僕だよ。不安にさせてごめん、おいで」


ロイドが手をひろげた。


マルタがそこに飛び込みロイドの首に噛みついた!









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