234、寝てなんていられない
お帰りなさいと出てきたマルタがロイドを見て半狂乱で泣き崩れて倒れてしまった。
その騒ぎで全員が起きてきた。
ロイドは自分が怪我人なのに気を失ったマルタを抱えて部屋に連れて行った。
私はロイドの指示でサクラコに着替えさせられ寝かされた。
……て寝られるかい!
サクラコが部屋を出た後飛び起きてフェルの元に走った。
地下室で寝ているフェルを見つける。
「フェル! 大変なの! ロイドを、ロイドを治して!!」
!!!?
掴んだフェルの手は以前よりずっと細いものだった。
顔を見ると……あれ? フェルってこんなに老けてた?
やつれているだけではなく以前より老けた気がするフェルだ。
フェルは私の頭を撫でて「落ち着いて」と言った。
私はロイドが怪我をしたこと、さっきあった事を説明してフェルにロイドの治療を頼んだ。
ちょっと待って、とフェルは何だかヨロヨロしながら何かを探しに行き私にハイポーションを渡してくれた。
「頼ってくれたのにごめんね。もうこれしかないから持って行って」
フェルの方も具合が悪そうなのに……でもハイポーションは病気や寿命には効かないから良いのだろうか?
「ありがとう……フェル……あの……大丈夫? 具合が悪そう……」
「心配ないよ、早く行ってあげて。ただハイポーションでは眼は再生しないんだ」
「え?」
「ポーション類はその人の持っている自然治癒を高めるものだから……ボクが回復を使えたら魔力のない普通の眼になら治せたけど……ごめんね」
「ボクが回復使えたらって……? 使えなくなっちゃったの?」
「うん、もともと白魔法はニガテだったから、そっち系はもうムリみたい。役に立てなくてゴメン。なんとかアレスの出発迄は生きていたいと思っているんだけど……」
フェルが白魔法が使えない!
アレスの出発?
出発迄生きていたい?
私は頭が処理しきれずに固まった。
「あ、まだアレスが話して無かったんだね。ゴメン、アレスから聞いて……」
なんなんだ?
アレスはなんなんだ?
ロイドの眼は盗っていくし
また何処かに行ってしまうというの?
一時間程前まで私は幸せの絶頂だった。
アレスからプロポーズされ超うかれていた。
もう私の人生であそこまで幸せなことなんて起きないだろうと言うくらい……
でも何なんだ?
アレスがいなくなるなんて聞いてない!!
何よりロイドを傷つけた!
あんな酷いことをするなんて!!
私はどうしようもない怒りで震えていた。
「リリア、落ち着いて……アレスを信じてあげて。ロイくんの事は本人も合意なんだ」
「本人も……?」
「そうだよ。ロイくんに眼をちょうだいって最初にお願いしたのボクなんだ」
「フェルが?」
「魔王を倒すのにね。どうしても魔王の核を見つけてそれを消滅させないとなんだ。逃げられたらまた別人になって復活だからね。それを見付け出せる眼が欲しかった」
「だからってロイドから取るなんて!」
「喜んで取った訳じゃないよ。最初はロイくんに一緒に来てって頼んだんだ。でもロイくんは一緒に行けないって……」
だからって、だからって!!
「それでロイくんに眼を貰う話になって、でも突然片眼が無くなってたら変でしょ? 特にロイくんのは力が弱いと思われていても魔眼だから……自然に敵にやられた感じにしたかったんだ。ロイくんは片方眼を失えば実働部隊に協力する事も無くなるだろうから、それでいいって……」
いいわけないじゃん!!!!
混乱した頭ではよく考えられない。
今ロイドがどうしているのかも心配だった。
「フェル、ありがとう。とりあえず私、ロイドにハイポーション届けて来るね!」
「え? うん。行っておいで、ロイくんをよろしくね」
弱っているフェルをこれ以上問い詰めてもかわいそうだ。
後でアレスに話を聞こう。
そして今はロイドにハイポーションを届けよう。




