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218、エリザのお喋り

「四階に修繕が入るからひとまず隠れていろ」


 ウォルター様の事は一旦置いといてロイドはアレスを追い出す。


 フェルの抜け穴を通る前にアレスが


「リリア、これ借りて行くよ。後でお父さんも視に来て」


何かを握りしめていた。


何だろう?

私から何か借りるものなんてあった?


 アレスの存在がこの後宮で大っぴらになってしまった。

エリザに対しロイドはひたすら喋るな、報告するな、と繰り返した。


 エリザは何故か私の朝の支度に初参加して今まで私にお喋りなんてしなかったのにあれこれ聞いてくる。


 まるで興味がなかった私にまで興味を示すとはすごいアレス効果だった。


 エリザの話は初めて王宮に上がってアレスを見た時の感動から始まり、アレスが勇者に選ばれたときの感動、アレスが魔王退治に出発するときの式典に着ていた衣装のかっこよさや出発後のアレスファンのメイド達の号泣っぷりなど様々なお喋りをすごい勢いでされた。

 話を聞く内にその頃のアレスを見られたエリザが羨ましくも思えた。


 物凄い勇者マニアであるのかと思いきや

何故かロイドが10歳くらいで王宮に来たときの天使っプリも話し出した。その天使が大きくなるにつれていい男に育っていったのを見てるのが楽しかった、アレスがいなくなってから何の楽しみもなかったが、ロイドの成長は良かった……とか語り出した。


 それを何故かマルタが頷きながら真剣に聞いていた。

あなたはロイドと一緒に育ってたのでは?


 エリザのお喋りは今日1日止まることはなかった。


 お陰で今日はお昼寝の時間も潰れてしまった。


「それにしてもアレス様が幼女趣味だったなんて……ショックだわ……初めてお会いしたときに知っていれば……悔やまれます!」

エリザがとんでもないことを言ってきた。

初めて会った時に知ってたらどうしたって言うの!?


……ていうか違うから……

やめてあげてその誤解……。


「アレスは違うよ、そう言う趣味の人じゃないよ!」

 彼の名誉を守るために言ったが中々分かってもらえないので諦めた。


 まあいいや。私が分かっていればいいんだから……。


 隣でマルタが一生懸命何かを考えていた。

マルタはかわいいなあ……

 ホント昨日の事が嘘のよう。彼女が無事で良かった。


「あ! もしかして勇者様って、温泉の時にいた人!?」

マルタが突然思い出したようだ!

彼女の中で記憶が繋がった?

そうですよ。あの時マルタがお粥を食べさせた少年です!



「温泉!?」

エリザとサクラコが反応した。


「マルタ、あなた勇者様と温泉に入ったの?」

エリザが恐ろしい目でマルタを見た。


「えっと……皆で入った後に、ロイドと二人きりで入りました」

全く悪びれずにマルタが答えた。


「皆? 皆って誰ですか?」

サクラコが食いつく。


「マルタ、あなた……アレス様と入ってロイド様と入ったの? 欲張りすぎよ! ただでさえ日頃からロイド様を独り占めしてるのに!」


エリザ顔が怖い!!

何だかマルタがピンチになりつつあった。


「違うよ! 私もいたし、シーラとレイラもいたよ!」

マルタを守らなければ!


「なんですって? シーラもレイラも……あの子達黙ってるなんて!」

エリザの怒りが分散された。


「ちょっとあの子達探して来るわ!」

エリザが立ち上がり勢いよく部屋を出て行った。


 いや、今日はもう戻って来なくて良いですよ。

二年間ろくに話した事がなかったエリザと二年分話したような気がする。

もう許してください。


「温泉どうでしたか?」

サクラコはまだ話を聞きたそうにしていた。


 すっかりエリザのお喋りで疲れた私は夜そのまま眠ってしまった。




 アレスが何か借りていった。

なんだったのか……?


 着替えるときに妖精の小瓶を着けていないことに気がついた。たぶん妖精の小瓶を持って行ったと思われる。

 妖精の小瓶に関してはずっと持ってはいるが最近様子がおかしかったので言えなくなっていた。

 フェルに相談しようと思ってずっと放置していたのだ。



 気になるから行ってみよう。


そう思っていたのに!


 気がつくと朝方だ!!

外が明るくなり始めていた。












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