216、昨日の今日で元気すぎのお父さんだ
吸血鬼騒動が終わり翌日自分の部屋で目が覚めるとアレスが隣にいた。
「おはようリリア、目が覚めた?」
「お、おはよう……」
目の前のアレスを見て固まる。
アレスは屍戦士の鎧を脱いで包帯半裸男だった。
しかも一緒のベッドに入っている。
うわーーーエロカッコいい人だ!!
「ど、どうしてここに……?」
「だって昨日リリア、ショックでずっと泣いてたから置いていけない。大丈夫だよ。リリアが寝ている間は魔力節約で時間停止してたから、あと一時間は動ける」
「魔力回復させないといつまでも復活出来ないでしょ?」
「そうなんだ。だからフェルがMP回復ポーション作ってくれるってさ、材料集めてくれたから……」
フェルの名前が出たとたん心臓を捕まれた気分だった。
フェルが1年
ロイドが3年
思い出してしまった!!
私の様子を見たアレスが私を引き寄せ抱き締めた。
「大丈夫だよ。今日、明日いなくなるわけじゃない。俺も出来る限りの事をするからリリアは心配しないで……」
アレスのイケメンボイスは私の不安を和らげてくれた。
包帯アレスに抱き締められるのはすごくテレる。
でも昨日鎧越しで寂しかったから、やっぱり生身で触れられるのは嬉しい。
アレスが頬ずりをしてきた。
くすぐったい。
「リリアは小さくてかわいいな。肌がスベスベだ」
かわいいとか面と向かって言われると照れる。
でも小さいは傷つく。ちゃんと女の人扱いされたい。
ーーーーーばん!!
勢いよく扉が開いた。
怒りの形相でロイドが部屋に入ってきた。
昨日の戦いの後だから今日くらいはゆっくりしていればいいのに……
「こら、アレス!! 姫様の寝所に入るのは10年早い!」
そう言ってアレスを私から引き離した。
"カズクン"じゃなくて、思いっきり"アレス"って言っちゃってるよ。
「10年……?……成人は15歳だから、ここはあと3年て事にしていただけませんか?」
「お前、何鎧脱いで堂々としてるんだ! 下で見てて眼を疑ったぞ! レディの前でその格好は完全アウトだからな!! 他の者に見つかったらどうするんだ!! 勇者ってバカなのか?」
「ひどいな、お父さん。魔眼を覗きに使うなんて悪趣味だよ。お父さんに呼ばれたから昨日ムリして来たのに、昨日の今日でお父さんは元気すぎるよ」
「貴様にお父さんと呼ばれる覚えはない! 姫様はまだ子供だぞ、何考えてるんだ!」
ロイドがめっちゃ怒ってる。
ついに事案発生。
娘の部屋に侵入した男をめっちゃ怒ってるお父さん!
しかも私子供だから……完全アウトか……
「ロイド、怒らないで! 昨日私があれだったからいてくれたんだよ」
あれだったからってなんだ? 自分でいいながらよくわからない。
「姫様は黙っていなさい! 姫様も姫様ですよ! 簡単に男を部屋に入れてはいけません!!」
「だって屍戦士の格好でいつもいたよ!」
「脱ぐな! ベッドに入るな!」
ロイドがあまりに怒って怒鳴ったせいか扉の隙間からマルタとサクラコが何事かと覗いていた。そしてもう一人……
「アレス様……!?」
エリザだ! エリザが声を震わせて扉を開けた。
ロイドが咄嗟にシーツをアレスにかぶせる。
でも手遅れだよ。顔見られちゃってる。
「服を着ろ!」
ロイドが叫んだ。
あ、そっち?




