139、フェルが帰って来た!
年が明けて新しい年だ。
特に新年の行事とかもないが、新しい年の合図として日の出と共に大きな鐘が鳴らされた。
モーモ村では小さな鐘を8回鳴らす。
春の月2回
夏の月2回
秋の月2回
冬の月2回
全ての月の平和と恵みを祈り鳴らすのだと……
そう習ったのだが、王都ではずっと鳴っていた。
100回くらい?
まさか108回除夜の鐘みたいなの?
都会だと何かが違うらしい。
ロイドを始めとする侍従5人に挨拶をして、後宮の新年開始? だ。
昔はいろいろ訪問者があったそうだが今は、誰も来ない。
ロイドにふざけて聞いてみた。
「王宮で生きた人間て何人くらいいるの?」
ロイドはニヤリとして
「私と姫様だけです」
と答えた。
!?
何てふざけたことを言うのか!
一瞬ビビりました。
私はビビりなんだから脅かさないでね。
隣で聞いていたサクラコが
「私も生きております!」
あわてて手を挙げた。
挙手制でしたか。
今日は特にお仕事もないので皆さんにゆっくりしてもらう事になり、一旦解散した。
部屋に戻ると私のベッドの脇にかわいいレースに包まれたお菓子が置いてあった。
小さなメモが添えてあり、
〖ただいま、あとでおいで〗
とだけ書いてあった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
フェルが帰って来た!!?
私はメモとお菓子を持って急いでロイドに知らせに行った。
フェルのいない間、ロイドは本当によくやってくれたと思う。
フェルの代わりにお祭りに連れていってくれた。
子供のグズリの世話から
アレスのメンテ
サクラコの暴走を阻止
そして普段のお仕事もこなしているらしいし……
だからフェルが帰って来たらロイドといっしょにお迎えしたいと思っていた。
急いで階段を降りて、一階の一番奥の部屋へ
廊下に並ぶ屍戦士はもう全く気にならない。
バタンとドアを開けて
「ロイド! (フェルが)帰ってきたよ!」
部屋の中ではロイドとマルタが抱き合っていた。
際どいところだ。
「姫様、お行儀が悪いですよ」
ロイドがにっこりと言った。
「ごめんなさーーーーーーい!」
ドアをバタンと閉めた。
「お行儀悪いですね? 姫様。お急ぎでどうしました?」
何故か隣にサクラコが!?
「え、いつからいた?」
ものすごく驚いた。
するとドアが開いて、
「二人とも、"隠密"を使うのはもうやめましょうね。お陰で最近見えるようになってきましたよ」
ロイドが不気味に優しく言った。
え? 私、最近着ぐるみウサギ使ってませんよ?
「しょ、承知しました」
サクラコが返事をした。
え、こっち? サクラコが?
「姫様は先に行ってて下さい」
そう言われた。あ、フェルの所に先に行けって?
それにしてもサクラコに隠密のスキルがあったとは……それなら本宮にも忍び込める筈だ。
まあいいや、今はフェルだ!
フェルに会いに行こう。




