114、あとは任せる!
星降り祭りにフェルが連れていってくれる事になってから私は自分でわかっちゃう位、機嫌が良かった。
その日も朝からルンルンだった。
「おはようございます。姫様」
サクラコが部屋に入ってくる、この光景も何だか当たり前になってきた。
いいのよ朝一番はサクラコで、マルタは朝からロイドとラブラブしていてくれれば、その方がロイドの機嫌が良くなるし、私にとっては平和です。
「姫様、私今日から半年間の見習い延長になりました」
見習いの延長? なんだそれ?
「私、今日までが試用期間だったんです」
ピシッとした姿勢でサクラコが答える。
ああ、そうかお試しの1ヶ月が終わったのか。
それで半年の延長? まだ"見習い"も取れない。と言う事?
キャロルの時は1ヶ月でさよならだったがサクラコは優秀だから延長か。
でも正式採用にはしないのね?
それは義兄の仇探ししてるから? 物騒だね。
最近そんな事も全く言わないから諦めてくれたならいいな。
「おめでとう、サクラコ! 良かったね。何かお祝いしないと!」
「はい、ありがとうございます。お祝いは特にいりませんが、出来ればお願いが……」
お祝いいらないとか謙虚だ。
キャロルだったらガッツリ食いつきそうな所だよ。
「お願い? まあ、私に出来る事があればいいよ」
「はい! よろしくお願いいたします。では、いくつか質問を!」
「質問? そんなのでいいの? なに?」
「はい! いつも姫様と共にいる屍戦士のことです。」
え? アレスのこと?
そう言えばサクラコは以前アレスの仮面外そうとしたんだ!
アレスに興味を持っていたから気をつけようと思ったのに、ずっと大人しくされてて警戒心薄れてた。まだアレスを気にしていたか。私のアレスに目をつけるとは、お目が高い……とか言ってる場合ではない? 漏れ出ているイケメンオーラは消せないか!?
「な、何かな~」
私はとぼけて答える。
アレスに対しての興味ってイケメンオーラよりもやっぱり勇者?
勇者ってもしやバレてるの?
バレる要素は無い筈だけど、サクラコは忍者?だから特殊能力とかあって見破ったとか!?
私は結構焦っていた。
「はい、マルタさんから聞きました。"カズクン"と言う名前がついていると……」
「そうだよ~。"カズクン"だよ」
ひとまずアレスの名を聞かれてないなら良しとしよう。
「この一月見ていて思ったのですが、"カズクン"は他の屍戦士と違う気がします」
ええ、!? そんなに見てたの?
「そ、そうかな? 普通の屍戦士だよ」
普通どころかイケメン過ぎる屍勇者です。
「屍戦士に名前をつけると賢くなるのですか?」
「賢く?」
名付けをすると賢くなる屍? そんな設定は無いと思うが?
「はい! 姫様のカズクンだけたまに人間ぽい動きを感じます。前に私が仮面を外そうとした時に手を掴まれたのも"屍戦士らしくない"と言いますか……全体の動きとしてはカズクンは常に姫様を守ろうとしているし常に姫様に寄っていってます。他の屍戦士は簡単な命令しか聞きません。普段動きも鈍いですし」
ええーーー? マジすか?
アレスが私を守ってる?
常に寄ってくる!?
他の屍戦士と違ってる?(そりゃほんとは別物だからね)
私を守ってるって嬉しいな。ちょっといいこと聞いた。
それにしてもサクラコ良く見てるな。
「そこで思ったのですが、ひょっとして"カズクン"は屍戦士に見せかけた人間では?」
ええ! そうなる!?
「違うよ、そんな筈ないでしょ?」
「では鎧の中見せて貰ってもいいですか?」
どっきーーーーん!!
私は心臓がバクバクしてきた。
鎧の中身は干物ではないので人間と思われるかもしれない。
人間と思われるのは構わないが、アレスは勇者。そこを気付かれるのは困る(どうやって気がつくかは分からないけれど可能性はあるもんね)
「な、何で、そんなに"カズクン"の事気にするのかわからない~? うちの"カズクン"は普通の屍だしぃ……」
普通の屍って何だろう……苦しい。
ああ、どうしよう。カズクンの中身はアレスだから見せたくないのです。
ここで私が断固拒否しても、サクラコは納得しないよね?
私はベッドの横のベルを手に持った。
カランコロン……振ってみる。
呼び出し用のベルを鳴らした。
もう思い付かない。私は助けを呼んだのだ。
サクラコが私の部屋にいるのにわざわざベルを鳴らした。
これは他のメイドを呼んでるのではない! あの男なら気づいて来そうな気がする。
「お呼びですか?姫様」
ロイドが来た。
よっしゃ! 良く来た。
これでエリザあたりが来たらちょっとガッカリするとこだった。
サクラコの事はロイドに任せましょう。
よろしくお願いします。お父さん!!




