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竜の塔に閉じ込められたお姫様、但し英雄は来ない  作者: 渡辺 佐倉


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竜の育ち方、あるいは何故竜はお姫様を必要とするのか1

竜は卵では産まれない。

何故ならば竜はトカゲの仲間ではないからだ。

空を飛ぶからといって鳥の仲間ではない。


そういうものと竜は違う。


だから竜はとても数が少ない。



そしてだからこそ、竜は誰かをさらうしかないのだ。


そう、竜は言った。


「難しいわ!」


お姫様が言った。


「じゃあ、竜はどうやって生まれるの?」


お姫様が聞いた。


「君は秘密を抱えることになるけれど、いいかい?」


竜は聞いた。


「秘密を抱える?」


お姫様は聞き返した。


「竜の秘密をあなたに話すことはできる。

だけど呪いの力であなたは一生その事実を他人と話すことはできない」


竜は言った。


「あなたとはその話ができるの?」

「そうだね」

「なら聞きたいわ」


お姫様は竜と話ができるならそれでいいと思った。

お姫様を助けようとする人はいない。

それであればお姫様は一生をここで過ごすのだ。

話し相手はほとんど竜だけ。


なら竜と話せるならそれでいいとお姫様は思った。

竜はため息をつくようにぐるると喉を震わせた。


そして竜が生まれる話を始めた。


* * *


私はむかしは砂漠の国で人として生まれ、魔法使いとして暮らしていた。

戦いは上手くできず、薬草を作ったり装身具を作ったりとひとりでずっと暮らしていた。


その国は魔法使いを嫌ったりはしなかったが、魔法使いとして生まれると寿命が違う。

やはりそうなってしまうと距離を置かれがちになった。


いま話している言葉はその時に使っていたものだ。

竜になった時に忘れなくて本当によかったと思う。


言葉が無ければただ叫ぶしかなかっただろう。


兎に角、魔法使いとしてずっと一人で静かに暮らしていた。

それは確かだった。


世界には呪いがある。

この世界がこの世界を保つためのものらしいということしかわかっていない。


ある時誰かが選ばれて呪いにかかる。


その呪いは何らかの能力があるものが選ばれることが多いと聞いている。

事実として魔法使いがよく呪われていたからだ。


ただ、魔法使いだけが呪われる訳ではない。

本当のところの呪われる理由はわかっていない。


呪いはじわじわと進行していった。


呪われたものは二つの未来を提示される。

呪われて世界のために死ぬか、魔性のものになるか選ぶしかない。

私は死ぬのが怖かった。


魔性の者といっても竜以外に何種類もあるし、竜になったとしても金ばかり集めているものもいた。

だから死なない方を選んでしまった。


そうして竜は誕生した。

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