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一気に書き上げるのなら「会話劇」という手もある
かつて、安部公房が締め切り間際であるにも関わらず、何も書けていなかった時に思い付く。「あ、もしかしたら会話劇ならいけるんじゃね?」―― そうして、ひと息で書き下ろされたのが、戯曲『友達』である。
自身が過去に書いた短編をベースに、テーマを変えて書いた「やっつけ仕事」が、谷崎潤一郎賞の獲得にも繋がったのだから、何が起こるか、分かったものではない。
で、まあ、会話劇である。
会話だけで進めるのだから、さまざまな考察が、そのままセリフに出来る。
漫才のように必ず笑わせる必要もなければ、すべてに答えを出す必要もない。会話そのものが、物語の中心に置かれるのだから、哲学的であっても、何だってかまわない。
これは作者自身の分割された思考の「文字起こし」に過ぎない。なので、エッセイを書くような感覚で、筋を展開することが出来る。
ひょっとしたら、スランプに陥っている作家には、自身のスランプをテーマに、戯曲を書かせてみるのも、ひとつの手かもしれない。




