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後日談 さようなら

 ボク達の旅は終わった。

 東から帰って来た後イグニティへ旅行に行って、それから首都アークにやってきてナギが解散を宣言した。


「それでアースはどうするの? 旅に出るの?」


 人間達のこれからは聞いていたけど僕とゲイル以外の魔獣達のこれからは分からない。

 いつの間にか番になっていたナギとレナスは魔獣の市民権獲得の為に協力して動くみたいだ。

 もちろんボクも手伝う。学校に先生になるには多分ナギのやりたい事を実現させなきゃいけないんだ。


「もう少しナギといるわよ」

「ふーん。さっさと旅に出ればいいのに」

「相変わらず生意気ね。せめてナギ達の子供くらいは見てから出たいのよ」

「子供……それなら仕方ないか」


 アースの気持ちはすごく分かる。ナギとレナスの子ならきっとすごくかわいいんだろうな。


「きー……出て行く時はヘレンも一緒なのか?」

「その予定よ。ね? ヘレン」

「うん。わっちアースについてく」

「それを聞くゲイルはどうするの?」

「おいらはナギについて行くぜ。ナギにやるでっけぇ事においらもいっちょ噛ませてもらうんだ」

「魔獣の市民権獲得ね。本当に出来るのかしら?」

「さぁな。けどやってみる価値はあるんじゃないか?」

「そうねぇ。まぁ市民権獲得までは行かなくても人間ともっと一緒に暮らしやすいように出来るかもしれないわね」

「そうそう」

「ヒビキはこれからどうするの?」

「わたちはずっとナギと一緒よ?」

「でも両親と一緒に暮らさなくていいの?」

「大丈夫よ。わたちもう大人だもの。お父さんとお母さんがいなくても大丈夫なの!」

「そういうもんかね」

「むしろ今はナギが保護者なんじゃないかしら」

「わっちはカナデがいなくなる方が心配」

「たしかに。特に仲良かったもんな。おいヒビキ。カナデいなくなるけど大丈夫なのか?」

「……寂しいけど大丈夫! 昨日一杯カナデと遊んだもの!」

「それならよかった」


 もしかしたらこの後一杯泣くかもしれない。そしたら一杯慰めよう。


「そろそろ皆出発するよ。準備できてる?」


 ナギがボク達の所にやって来て確認を取ってきた。

 荷物は全部馬車の中に載ってるからボクは準備は出来てる。

 だけど、出発したら皆とはお別れだ。そっちの心の準備が出来ているかって聞かれたら……ちょっと自信がない。




 ナギと初めて会ったのは十年以上前の事だ。

 初めてナギ達と会った時ボクは魔物を殺したり森の動物から怖がられたりして気持ちがおしくなっていた時だった。

 ナギにフォースを当てられナギの気持ちが流れてきたような気がして気持ちが落ち着いたんだ。

 今思うとかなり危ない事をナギ達にしようとしていたんだよなボクは。


 初めて会った頃のナギ達は本当に小さかった。

 特にアイネはちっちゃい上に柔らかかったから力加減が分からなくて初めの頃は僕はまとわりつかれてもあんまり動けなかった。

 力加減に慣れたのは学校で子供たち相手にしていたおかげだ。あの経験があったからボクはルイスとも仲良く遊べたんだろうな。


 ルイスといえば、ルイスと卒業したら一緒に旅に出るって約束してるんだよね。

 卒業の時にルイスにその気があるかは分からないけど一度グランエルに戻らないと。

 でもナギのやる事が忙しくなって戻れなくなったらどうしよう。ボクだけでも戻ればいいか。


「ナスー」


 アイネがボクを呼んでる。

 アイネのそばに行くとアイネは僕の事を抱きしめてきた。


「ナス、元気でね」

「うん。アイネも元気でね」


 アイネ……。

 アイネは旅の間もボクとよく追いかけっこをしてくれた。ボクの背にはあんまり乗ってくれなかったけど。

 いつも元気だけど甘ん坊さんでちょっとわがままな所があって、ナギやレナスにはよく注意されてたけどボク達の中心にいたのはいつもアイネだった。

 アイネはミリアと一緒に旅をするらしい。一先ずの目的はグライオンの闘技場を目指すみたいだ。もう背中に乗ってもらえないと思うと寂しくなるな。

 アイネはボクから離れると次はゲイルを呼んで抱きしめた。


「次は私ねー」


 アールスもやって来た。

 アールスだけじゃない。カナデとミサもだ。

 アールスがボクを抱きしめて来る。カナデもヒビキを抱きしめ、ミサはヘレンの顎撫で始める。皆最後にボク達と触れ合いに来たんだ。


「ナギとレナスちゃんの事頼むね」

「うん! ボク二人の事守るよ」


 アールスはちっちゃい頃はアイネと同じように元気一杯で僕と沢山遊んでくれた。やっぱり僕の背には乗ってくれなかったけど。

 大きくなっても遊んでくれることは変わらないけど、落ち着きが出てナギが言う所のお姉さんになった。

 アールスは率先して何かをする事は無いけれど、細かい所に気が付いてよく皆を助けてくれてるってナギが言ってたっけ。

 アールスはこれから軍に入って魔物に対する備えをしたいそうだ。魔の平原からは魔物はいなくなったけど、二年前のような海からの魔物の脅威は完全には無くなっていないかららしい。

 アールスはボクの事を十分抱きしめた後カナデと交代した。


「ナスさん。元気でいてくださいねぇ」

「カナデもね」


 カナデは一緒に遊ぶというよりはかまってくれる人間だった。

 一緒に走ったりはしなかったけれど毛づくろいを手伝ってくれたり抱きしめてくれていた。

 いつも優しくておっとりとした雰囲気が気持ちいいからナギの次に傍にいて安らげるんだ。きっとヒビキもカナデのそういう所が気に入っているんだろうな。

 身体が大きいからボクの背に乗れないと悲しんでいたのが心残りだ。

 カナデは一旦実家に帰ってからこれからの事を考えるみたい。けど多分また旅に出るだろうと言っていた。

 カナデが抱きしめ終わると次はミサがやって来た。


「ナスちゃんもワタシ達の事忘れないでくださいネ」

「もちろんだよ! 絶対に忘れない!」


 ミサはいつも明るくて、アイネと違って中心になる事はなかったけどいるだけでその場が華やいでいた。

 いるだけで雰囲気を変える所はカナデと似てるかもしれない。

 ボク達魔獣とはあんまり遊ぶ機会はなかったけど、いつも気にかけてくれてお世話も丁寧にしっかりとしてくれていた。

 アロエはよくアイネ達と一緒に追いかけっこをして遊んでくれた。アイネと同じようにちょっとわがままな所があってアロエもまた話題の中心になる事が多かった。

 エクレアは……ミサにべったりであんまりボク達と話した事はない。でもボクとは同じ電気を操る者同士という事で話す機会はあった。

 ミサはグライオンで本格的にゼレ様の事を学びつつマナ関連の修行をするそうだ。そしてゆくゆくはナギと同じ第十階位の神聖魔法を授かりたいみたい。


 皆との挨拶が終わるととうとうお別れの時が来た。

 アースとヘレンは馬車に繋がれていていつでも動き出せる。

 ヒビキはナギに抱っこされていて、ゲイルはナギの頭の上に乗ってる。

 そして、ナギは今にも泣きだしそうな顔をしていて、レナスがそんなナギを支えてる。

 ボクも泣いちゃいそうだ。ナギが泣いたらボクも泣いちゃうに違いない。


 アールス=ワンダー。

 アイネ=スレーネ。

 カナデ=ウィトス。

 ミサルカ=グレイス。


 ここで別れたらもう二度度会えないかもしれない。ナギもそう思ってるはず。

 それでもナギは皆に手を振ってから歩き出した。

 ボクも歩き出そうとしたら不思議と足が重い。すごく重いんだ。

 けど僕はナギについて行く。

 少しだけ足を止めて後ろを振り返ってみる。

 するとアイネが泣いてて他の三人がアイネの事を慰めていた。

 アイネの傍に駆け出したくなった。けど、ボクは前に向かってもう一度歩きだした。

 涙が出てくる。止めたくても止められない。

 けどもう足は止めない。ボクはナギについて行く事を決めたんだ。

 ボクもナギみたいにどんなに悲しくてもちゃんと自分の進むべき方へ歩かなきゃ。

 皆さようなら。

という訳で完結です。九年近くもお付き合いいただきありがとうございました

突然の最終回でしたがレナスの両親の故郷で告白して終わるというのは当初から考えていた予定通りの終わり方です

本来は百話ぐらいで終わるかなと思っていましたが肉付けしたら全然終わりませんでした。そう考えると長くなったものですね


今後の予定に関しては正直未定です

書きたいものがあっても終わらせ方が決まらないと投稿する気が起きないので今作が最後かもしれません

本当に今までお付き合いくださいましてありがとうございました

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― 新着の感想 ―
完結おめでとうございます。 とても素敵な物語をありがとうございました。
完結お疲れ様でした。 この作品ならではの雰囲気で最後を迎えたなって感じですね。 ナギとレナスが無事に結ばれて本当に良かった。ただただそれだけです。
 完結おめでとうございます!  最後の後日談はナス視点。  ナギのしんみりし過ぎているであろう心境を描写するより軽く済むし、丁度いいかもですねー。  完走、お疲れ様でした!
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