帰還
新年あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします
レナスさんが僕を解放してくれたのは帰ってから三日後の事だった。
それまでレナスさんは僕から中々離れる事が無く、人前に出られない状態だった。
魔法石を作るだけしかやる事が無かったし、魔獣達の散歩の時も街には人がいないから問題はなかったけれど。
それからさらに三日後、ゲイルから連絡が来た。
魔人に捕まっていたと思われる魔獣達との接触に成功した様だ。
魔獣達の姿はヒビキに似ているようで、ゲイルが話を聞くとどうやら昔離れ離れになった仲間を探して彷徨っていたようだ。
これはもう十中八九ヒビキの仲間だろう。
ゲイル達もそう思ったらしくヒビキの話をしてグランエルまで来て確認を取って貰うよう頼んでくれたようだ。
僕がグランエルから動けない以上こちらに来てくれるのはありがたい。
ただ魔獣使いの管理下にいない魔獣はもちろん管理下にあっても魔獣使いが一緒にいないと都市の中には入れない。。
僕が外に出れない以上連れてきた魔獣達を都市の中に入れるにはアールスかミサさんに魔獣使いとして役所で登録する必要がある。
けれど今は都市機能が真っ当に機能しているとは言えず、役所で魔獣使いの登録が出来るか疑問だ。
アールスがグランエルに戻ってくるまでに避難民は帰って来れるだろうからその後僕が外に出られるかどうか。
避難民が戻って来たのは魔獣達との接触の報告が来てからさらに三日後だった。
といっても避難民の数は多いので第一陣と第二陣第三陣と日を分けて帰って来ると聞いている。
子供達とその家族、学校関係者はは第一陣で帰って来る事は聞いている。
僕はすぐに外出の許可を貰って西の検問所まで行って避難民を出迎えに行く事にする。
レナスさんとアイネも誘ったのだが、二人は家族がいつ帰って来るか分からないからやめておくそうだ。
僕の場合は大司祭様にも挨拶しておきたいので一人でも向かう事にした。
二位の検問所に着くと、一緒に避難民と行動していたはずの大司祭様は検問所で検問している衛兵さんの横で検問の終わった避難民に労いの言葉をかけていた。
邪魔になりそうだから挨拶に行くのは休憩中のような落ち着いた時がいいだろう。
しかし、検問が終わった人を見渡しても家族の顔どころか知り合いの顔もまだ見えない。
待つしかないか。
ルイスは元気でいるだろうか? 最後に会った時僕の事を心配してくれていたけれど立ち直れただろうか?
お父さんとお母さんがいるから大丈夫だと思いたいが……。
一時間程してようやく同級生の友達と再会する事が出来た。
そして、そこで衝撃の事実を教えられた。どうやら避難民は東西南北全ての検問所に振り分けられ中に入ってきているので今いる西の検問所に家族がやって来るとは限らない様だ。
考えてみたらそりゃそうだ! 避難民どれだけいるんだって話で一ヶ所に集中させてたらどれだけ時間かかるんだ! そりゃ分けるよ!
避難する時は西から出て行ったから戻ってくる時も西から入ってくると思い込んでしまったんだな。
さらに詳しく聞いてみると、どうやら学校関係者と寮に住んでいる子供とその家族は寮の近い北側の検問所から入って来るらしい。
大司教様に挨拶してから北の方に行くか……。
「そういえばナギちゃんはずっと都市の方にいたんでしょ? カイル君の無事って分かる?」
「いや、何も分からないよ。ラット君から前線基地に勤めていた事は聞いてるけど……」
「そう……ナギちゃん仲良かったし心配だよね」
「うん。魔の荒野に面してても大森林に近い所以外の南の方は魔物が来てないそうだからそこに配属されている事を願うよ」
「そうだね……ああ、それと村の被害とかは聞いてる?」
「さすがに分からないけど、壁を越えてきたり地中に潜っていた魔物が地上に出てきたから家畜や森の野生動物に被害出てるかもね
「うちは果物しか取り扱ってないけど……影響ありそうだなぁ」
「大森林に近い村は森から逃げてきた動物に荒らされてるかもしれないよ」
「えぇ……確認しなきゃなんないじゃん……教えてくれてありがと」
それから友人と話をして時間を潰し、大司教様が休憩に入るのを確認してから挨拶に向かった。
大司教様と少し話した後邪魔にならないうちに退散に学校の寮へ向かった。
しかし、寮に尋ねてみても人がいる気配はなかった。
まだ子供達は寮に戻っていないのか。家族と一緒にいるのだろうか?
とりあえず北の検問所へ行くと僕の事を知っている学校の先生が話しかけて来て、寮に住んでいる子供達は検問所近くの広場に家族と一緒に一旦集められている事を教えてくれた。
先生にお礼を言ってすぐに広場に向かうとすぐにお父さんを見つけられた。身体が大きいから分かりやすくて助かる。
お母さんもすぐ近くにいるがルイスの姿はない。お友達の所にいるのだろうか?
とりあえずお父さん達に声をかけよう。
「お父さん! お母さん!」
声を上げると二人はすぐに僕の方を向いてお父さんは手を振って来た。
「おおっ、アリス!」
「無事だったのね!」
二人の傍に駆け足で近づくとお母さんが両手を広げ僕を迎え抱きしめてくれた。
「二人ともお帰り」
「ええ、ただいま」
「ルゥは友達の所?」
「そうよ。アリス怪我はない?」
「したとしても治せるけど、仲間のお陰で怪我は全然ないよ。皆強いんだ」
「そう……良かった」
「そっちはどうだった? ルゥ泣いたりしてない?」
「あの子は旅行気分で楽しんでたわ。村に戻った時の事考えたらこっちは頭が痛いっていうのに……」
「あ、あはは……畑の事とか心配だもんね。手伝えたらいいんだけど僕の方もちょっとこれからどうなるか分からないんだよね」
「やっぱり色々予定入ってるの?」
「はっきりとは決まってないんだけどね」
「そう……何か困った事があったらいいなさい。貴女の問題だと私達の力になれる事はないかもしれないけど」
「うん。何かあったら相談するよ。村にはいつ帰るの?」
「まぁ村の事も気になるし明日だな。だがアンナはこっちに残ってもいいんじゃないか?」
「あらどうして?」
「しばらくこっちもごちゃつくだろうしこっちにいた方が二人に何かあった時対処しやすいだろう。特にアリスはしばらく落ち着きそうにないらしいしな……特に神の使者の件で」
「……そうね。そうしようかしら」
「あー……神様が今回の戦争に介入した件について周囲の反応はどうだった?」
「もっと早く呼べなかったのかっていう声は上がってるが大半は喜んでるな。特に教会関係者は降臨した事に神託の時以上に騒いでたな」
「なるほどね……」
批判はやっぱり出ているか。
「だからまぁさすがにな……アリスの事が分かった時にどうなるか心配だ。
しかし、本当なら俺が残りたい所なんだがさすがに自警団として畑や村の状況を確認しなきゃならん」
「う~ん。神の使者もやっぱり誰だか気になってる感じ?」
「そうね。神様が降臨したのは神の使者のお陰って考えてる人が多いから皆気にしているわ」
「神託の時はそっとしておいてほしいとは言われていたが、それも今となってはな。皆好奇心に勝てないみたいだ」
今の所氏名は伏せて存在は確認し軍や教会が繋がりを得た事だけは公表するつもりだとは聞いているが実際はどうなるだろう。
「そっか……そうなると民衆に押されて早く公表する事になるかもしれないね」
そうなると本当に早くアールス達と合流しないと時間が無くなるかもしれないな。




