表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
484/530

森の恵み

 治療を必要とした魔獣は蛇のような細長い胴体に四本足を付けたトカゲのような魔獣だった。

 大きさは人と同じくらいありかなり大きい。

 欠損した個所は右前足であり、とても痛ましい傷跡は見るに堪えないものだった。

 時間をかけて回復させた後さすがに限界が来てしまったようでその後の記憶がない。

 そして目が覚め、気が付けば空が明るくなっていた。いや、気を失う前にはもう夜が明けてたかな?

 さらにすぐに柔らかい物が僕にくっついている事に気が付く。

 ナスだ。ナスが寝ている間に来てくれていたんだ。


「寝ちゃってたか……」


 ずっと抱いていたヒビキは相変わらず僕の腕の中にいて安らかに眠っている。

 助けた魔獣は僕を見守っていてくれたのか僕をじっとみつめていた。


「僕の事見守ってくれていたの?」


 魔獣はこくんと頷く。

 この蛇のようなトカゲの魔獣は蛇のように声帯を持っていないようで話す事が出来ない。


「ありがとう」


 お礼を言うと尻尾を振って応えた後僕に背中を向け大森林の方へ去って行った。愛嬌のある可愛い魔獣だ。

 僕にくっついて寝ているナスと腕の中にいるヒビキを起こさないようにそっと立ち上がり周りを見渡す。

 少しは慣れた所にアースとヘレンもいる。そしてそのアースの背中にゲイルもいる様だ。皆来てくれたんだ。

 皆眠っている。

 僕はこれからどうしようか。シエル様の様子を聞いてみようか。


(シエル様、今大丈夫ですか?)

(ええ、大丈夫ですよ)

(ありがとうございます。主様達との話しはどうなりましたか?)

(とりあえず魔物を一掃する許可はいただけたのですぐに終わらせました。今は海に潜って魔魚や魔獣達と話をしつつ魔物を浄化しています。

 もうすぐ終わるので終わったら会いに行きますよ)

(分かりました。待っています)


 シエル様との会話が終わると自分がお腹が空いている事に気が付いた。

 思えば昨日ナス達を助けることを決めてから何も食べていない。

 なので非常食を食べようと荷袋の中を漁ってみるが無い。身体中を探してみたがどこにもなかった。

 どこかで落とした? アースの荷物を降ろした時? それとも食べきった事に気づいてなかった?

 

「……魔獣か精霊にお願いして森の食糧分けてもらうか」


 そう言えばサラサの友達の精霊であるエィーリャさんはどこだろう?

 魔眼を使って辺りをもう一度見まわしてみるが精霊がいる様子はない。

 どうしたものか。

 とりあえずナス達が起きるまで待っていようか。

 ナスがヒビキが起きないように地面に座る。

 ヒビキは僕が起きていた時も寝ていたけれどまだまだよく眠っているな。僕の睡眠時間が短かっただけかもしれないが。

 指先でくちばしを少し撫でてみるが起きる気配はない。昨日はみんな頑張ったからな。とくにナスとゲイルはずっと頑張っていたんだ。ゆっくりと休むのがいいだろう。


 しばらく魔獣達の寝姿を堪能していると遠くの大森林の方から声が聞こえて来た。

 声の聞こえて来た方を見てみると精霊がこっちに向かってきている。いなくなっていたエィーリャさんだ。

 エィーリャさんは手を振りながらこっちへやって来る。

 そして、僕の近くまで来るとナス達に配慮してか小さな声で話しかけて来て今までやっていた事を説明しだした。

 どうやら僕のご飯を魔獣達と一緒に魔物がいなくなって安全になった森で探していてくれたらしい。

 食料は十分な量を確保できたようだ。そこへ先ほどの治療した魔獣がエィーリャさんの所に行って僕が起きた事を知らせたらしい。

 ただ一つ問題があるようで人間が食べて大丈夫な物を把握しきれていないから食べる時はきちんと確認して欲しいとの事だ。

 これで朝食のあてが出来たエィーリャさんに感謝を述べて魔獣達を待つ事にする。


 待っている間エィーリャさんが相手をしてくれる事になり、その間にうるさくしてしまったのかナスも起きてしまってナスも交えて話をして待つ事となった。

 話の内容は僕達が来るまでのナスとゲイルの活躍だ。

 目だった傷もなく戦い抜いたゲイルとナスに助けられた魔獣もいるらしくエィーリャさんも大層感謝してくれた。

 そうして話しているうちに森の方から森の恵みを持った大勢の魔獣がやって来た。

 そして、僕の前に次々と果物や木の実、きのこを置いて行く。

 各々口で咥えたり両手で持ったりで数を持てないようだけれどその分魔獣の数で補っているんだ。

 こんなにも大勢の魔獣が僕の為に……涙が出てきてしまいそうだ。


 十数匹魔獣達が集まり騒がしくなってくるとさすがにゲイルとヘレンも起き出してきた。

 起きてきたゲイルは事情を知ると食料の選定を手伝ってくれた。

 大森林にいた頃人間に悪戯していた時に喜ばれた物を覚えているらしく、その喜ばれていた物を優先して分けてくれた。


 僕も分ける。キノコはさすがに素人の僕では食べられる物かどうか見極める事が出来ないので持ってきた仔には悪いがキノコは全て除かせてもらう。

 一方で果物や木の実は春先に採れる物ばかりでほとんどが食べられるものだ。

 

 選定し終わると殻のある木の実の殻を割り可食部分を取り出しておく。

 それから流体操作で水の鍋を作り、その鍋に木の実を大きさで分けてから炎熱操作で加熱する。

 いい感じに焼けたら取り出し次の大きさの木の実を入れる事を三回繰り返したあと一つ木の実を取って味見をしてみる。

 悪くない。味付けが出来ないから味は薄いが焼いたおかげか木の実本来の甘さがちゃんと出ている。歯ごたえもポリポリとして本当に悪くない。

 本当料理に便利だなヒビキの固有能力。ヘレンの流体操作も即席の調理道具を作れるし、ヒビキとヘレンがいればどんな場所でも料理するのに困らないかもしれないな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >本当料理に便利だなヒビキの固有能力。ヘレンの流体操作も即席の調理道具を作れるし、ヒビキとヘレンがいればどんな場所でも料理するのに困らないかもしれないな。  便利だけど、調理器具はいらない…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ