聞き取りの後
レナスさんとカナデさんが部屋にやって来たのは最初に運び込んだ箱の中の石を全て魔法石に変え、外に出した後増えていた箱を部屋の中に運び込む作業の最中だった。
運ぶのを手伝ってもらった後聞き取りが終わったばかりの二人にはとりあえず休んでもらい、魔法石を作りながら今の状況を説明してから僕の聞き取りの結果を二人に話した。
「……というわけで特に問題なく信じてもらえました。後サラサの事も話しておいたよ」
「確認が私の方にも来ました。それでサラサさんの処遇はどうなるのでしょう? 私達には口外しないよう言われましたが」
「神霊化の件と一緒に上に判断仰ぐみたいだよ。ただ軍の方はやっぱり神霊にはなって欲しくないみたいだったな」
「契約できなくなると遠距離の連絡も出来なくなりますからね~。連絡が取れなくなると困っちゃいますよねぇ」
「困る所の話じゃありません。軍の連携や有事の際の対応に支障が起き死活問題ですよ」
「とはいえ神聖魔法を使えるようになるのは悪くないんだよね。特にシエル様の攻撃神聖魔法は魔物に特攻で人間にはそれほど被害が出ない。
フォース以外は消費が激しいのが欠点だけどマナの量が多い精霊なら問題ない」
「悩ましい所ですね。軍はどう判断するでしょうか」
「分からないけどサラサは何か言われなかった?」
「シンレイの事を口外しない事以外特に何も言われてないわね」
「じゃあ判断待ちか。今僕達が考えても仕方ないかな。他の皆はこれからどうするの?」
「アールスさん達はシンレイの件もあって一先ず軍で身柄を預かるそうです。扱いは客人として私達とは変わらないそうですよ」
「アリスさんのご両親は予定通り避難してきた人達用の家に泊まるそうですよぉ。さすがに早いので受け入れ準備のお手伝いをするそうですね~」
「滞在する場所は間違っていませんがお母様の方はたしか魔創石の制作を手伝う為にここに通うようです」
「そうなんだ。だったら会う機会もあるかな」
「今日の所はルイスさんの所に顔を出すようなので会えないと思います」
ルイス大丈夫かなぁ。魔物進行の話を聞いて怖くて泣いたりしてないかな……。
「……話す事はこれくらいでしょうか? そろそろ私達も手伝いましょう」
「そうですねぇ」
レナスさん達も箱に入っている魔創石に手を触れ次々と魔法石にしていく。
「う~ん。箱分けてやった方がよさそうだね。誰がどれを魔法石にしたかわかんないや」
「確かにそうですね。間違えて魔法石に魔法を込めようとしたら発動してしまいますね」
「あっ、ほんとですね~」
レナスさんが言ってる傍からカナデさんが魔法石の魔法を発動させて光が出てしまっている。
「う~、手にぴりっときましたぁ」
「んふふ。当たるとビックリしますよね。念の為手の当たった所を見せてください」
「はぁい」
カナデさんが差し出してきた手を取って調べてみると少し赤くなっている。
前に僕が自分の手で試した時も同じような症状が出ていたっけ。
ヒールをかけると赤みはすぐに消えた。
「ありがとうございます~。でもぉ、わざわざやっていただかなくても~」
「調査のついでですよ」
「……あっ、しまったー。私も間違えて発動させてしまいましたー」
横でレナスさんも間違えてしまったようで魔法石から光が出ている。
「あらら、やっぱ分けておいた方が良いね。手見せて」
「くふっ……はい」
レナスさんの手を取って調べてみると色白だからか赤みが目立つ。
さっさとヒールをかけて元の白いきれいな肌に戻してしまおう。
夕食時になると部屋に兵士さんが訪れ食堂へ案内してくれた。
食堂といっても客人用の部屋で、支部で働いている兵士さんや職員の使う食堂とは別の食堂だった。
席に座り料理を待つようにと案内してくれた兵士さんが伝えてくれる。
そして、僕達から少し遅れてアールス達もやってきた。
「あっ、ナギ達だー」
「ほんとだ」
「お昼ぶりですネー」
アールス達の言葉にとりあえず手だけ振って応える。
そして、アールス達が席に座ってから話しかけた。
「三人は聞き取りの後どうしてたの?」
「これからの事相談してたんだよ。私達ナギがシエル様の使者だって発表されるまで敷地内から出たら駄目なんだって」
「あらら……」
「ほんとーは建物からも出ないよーにって言われてたんだけど、アールスねーちゃんがこーしょーしてくれたんだ」
「そうなんだ?」
「さすがに訓練できなきゃ体がなまるし、ナス達にも会えないのはねー」
「一週間以内に発表するとは言っていましたガ、アリスちゃんは詳しい事聞いてマス?」
「いや、僕も聞いてないですね」
「昨日の今日で早すぎる気もしますが本当に一週間以内に発表できるのでしょうか?」
レナスさんの疑問に僕も同意だ。
この疑問に解答を出してくれたのはアールスだった。
「むしろ一週間以内に発表しなくちゃいけないんじゃないかな。
今の状況で使者の事発表するならそれって皆を少しでも安心させて統制しやすくするためだと思うんだよね。
そうなると壁が壊されてから発表してたんじゃ遅いし、今回の規模だと都市からも避難させなきゃいけないかもしれないから発表してる余裕なんてないと思う」
「しかし、今発表しても逆に混乱を大きくさせてしまいませんか?」
「二、三日あれば魔物の侵攻の報で発生した混乱も多少は収まるから大丈夫じゃないかな。そこら辺を考慮しての一週間なんだと思うよ。発表までにサンライトの有効性を示せたら効果大だしね」
「うわっ、緊張してきた……サンライトの戦果が微妙だったらどうしよう……」
「うーん。戦果が良くても宣伝効果が弱いという事も考えられますよ。魔素を除去できると言ってもそれがどう戦果に繋がるのか魔物と戦っていない人には情報だけでは実感しにくいと思います」
「うん。僕が言うのもなんだけど軍団相手だと先頭の魔物にしか当たらないからすぐに倒せないサンライトだけだと押し切られちゃうよね」
「そうなんだよね。サンライトだけじゃ宣伝は微妙かも。でも相手の魔素に邪魔されないで魔法を当てられるのは戦術に幅が出来るからすごく有効だと思うんだよね。広範囲魔法や爆発魔法がすっごく使いやすくなるよ。
後はオーク、オーガ、トロールにどう効くか次第だよね。オーゲストは大きかったから投射面積が広い分効いてたみたいだけど」
「どうなんだろうねぇ」
っと、話していると給仕の人がやって来て食事の用意が整った事を伝えてくれた。
話はいったん中断し料理が来るのを待つ事にした。
2023/05/18
描写が不十分だったので加筆修正しました
>カナデさんが差し出してきた手を調べてみると少し赤くなっている。
から
>カナデさんが差し出してきた手を取って調べてみると少し赤くなっている。
>レナスさんの手は色白だからか赤みが目立つな。
から
>レナスさんの手を取って調べてみると色白だからか赤みが目立つ。




