人生遊戯
人生〇〇〇は商標的に問題あるかもと思い表記を人生遊戯に変更しました
「六か。えっと……小冊子の十六ページね。もう一度振って……二。体育の授業で活躍できた。あっ、体力が三上がった」
「ねーちゃんの体力がもー二十超えそーだ!」
「こりゃ将来は冒険者だな」
この人生遊戯で僕の操作している駒の能力値は十歳時点で知力と信仰心が低く体力が高い。
能力値は三つあり将来就ける職業に影響していて、知力は商人、信仰心は神官、体力は冒険者に関係している。
能力値ではないが職業には階級があり仕事をこなしていき階級を上げて行く事もこのゲームの目的の一つの様だ。
さらに他にも資金と幸福度という項目もあり小冊子を読む限り資金は商人が安定して稼ぎやすく幸福度は神官が安定して稼ぎやすく、冒険者は活躍できればどちらも一気に稼げるようだ。
最初は皆能力値は全て一で統一されているのだけど僕は始まってすぐからずっと体力関係のマスに停まってばかりでついに二十近くまで来てしまった。
このゲームは一ターンが一年で設定されていて最初は全員ゼロ歳から始まる。
一回に上がる能力値は一から三のどれかで十歳で上がる能力値は複数あり何もないマスや一回休みのマスもあるから一つの能力値が二十近くまで上がるのは相当運が良くないとできないだろう。
「いーないーな。あたし全然能力上がんないのにー」
「アイネちゃんはお金貰えてるだけいいじゃないですカ。ワタシなんて能力値はどれも低いしお金ももらえていまセーン」
「ミサさんは何もないマスばっかり止まりますからねぇ」
「人数が多いとそりゃ極端な結果になる人も出ますよ」
僕とアイネとミサさん以外はようやく多少能力値や資金に偏りが出始めたくらいだ。
わいわいがやがやと楽しんでいるといつの間にかお昼に近づいていた。
「あっ、もうこんな時間だ!」
「お昼作らなきゃ!」
今日のお昼の料理当番であるアールスとアイネが慌てて椅子から立ち上がる。
「じゃあ一旦ここまでにしようか。駒の状態を記録しておかないと」
「まだ半分も行っていまセーン。時間のかかる遊びですネー」
「あはは、そうですね。人数が多いですしね。でも皆でワイワイと話しながらやるのは楽しいですよ」
「ん~、それはその通りですネー。こういう遊びも楽しい物デス。ワタシはほとんどいい出来事のマスに止まれませんでしたガ」
「あはは……ダイス運無かったですよね」
しかし僕も人の事は言えない。冒険者にはなれたがそこからサイコロの出目が悪くなり中々階級が上がらない。
もう二十歳を過ぎているというのに中級に上がれていないんだ。
「でも何が驚いたかって言うと精霊達がさっさと結婚した事ですね」
「あー、皆早いですよネ。人間は皆まだ独身で恋人すらいないと言うのニ」
「サイコロの目次第とはいえここまではっきり分かれるとは」
ちなみにアロエ以外の全員が結婚した相手の名前を契約者にしているが、アロエはミサさんとレナスさんどちらの名前にするか悩んだ挙句何故かゲイルにしていた。
「そういえばアリスちゃんも何か遊びを用意しているみたいですがどんな遊びなんですカ? なにやらレナスちゃんと精霊達が協力して準備しているみたいですが誰も内容をまったく教えてくれまセン」
「まだ内緒です……って言っても前準備がいるのでアイネの遊びが終わったら公開しますけど」
「楽しみですネー。アロエはもちろんエクレアも楽しそうにしていましたヨ」
「そう思ってくれたなら嬉しいですね」
昼食が終わると人生遊戯を再開する。
このゲームはサイコロの目で前後するが大体八十ターンでゴールする事を想定されているらしい。二十ターン目で中断したのだけどまだ四分の一しか進んでいない。
まぁ人数が多いから進みが遅いのは仕方ない。
吹雪が一旦止む夕方までにどこまでいけるだろうか?
そして、再開後僕のサイコロの出目はようやく復調してきた。
階級が上がり恋人も出来た。
「またなにもありまセーン!」
しかし、僕とは違いミサさんは相変わらず低迷している。ミサさんのダイス運はどうなってるんだ。
「全のーりょくまだ一桁台ってもー手遅れなんじゃ」
アイネもミサさんの低迷具合に引き気味だ
「い、一発逆転があるのが冒険者デース」
「そうですね。まだ諦めるのは早いですよ。マス目からしてまだ序盤ですからね」
「でもさー、はちじゅー? くらいまで冒険者として働く人っているのかな」
「長くても大体四十歳前にやめていますよねぇ」
「やめなくても隠居をする人ばかりだとは聞いていますね」
「だ、大丈夫デス。這い上がれるまで生涯現役デース」
「その意気です」
「でもさー、ミサねーちゃんの駒のじんせーってどんなじんせーなんだろーね」
「特別な出来事が何も起こってないから自発的には何も動かない消極的な性格……でしょうカ?」
「いえ、こういうのは駒の主の意向も反映するべきです。ミサさんの場合は一発逆転を狙っているので駒も諦めずに一発逆転を狙っている……と考えてもいいと思いますよ」
「なるほド。自分の人生を豊かな物にする為に一発逆転を狙い冒険者になり生涯現役も辞さない覚悟を持っている人……と言ったところでしょうカ」
「その覚悟に反してのこの能力値の低さは……」
「怠け者で賭け事感覚で一発逆転を狙ってるとか?」
「そういうのは嫌ですネー」
「でしたら体に障害があって能力値が上がりにくくなってるとかですかね。
どこか先天的に動かしにくいとか欠損しているとか……そういう障害にくじけず頑張っているみたいな」
「なるほどなるほド。身体の一部を欠損していてそれを治す為に頑張ってるみたいな感じですかネ?」
「いいですねそれ」
「しょーにんになれるほど頭良くないからぼーけんしゃになったって感じかなー」
「腕を欠損していて……知力は高くないですから神官ではなく魔術士か精霊使いだと思いマース」
ミサさんの言い方だと頭が悪くても魔術士になれるように聞こえるな。いや、実際その通りではあるんだけど。
魔術士は強くなるには頭を使う必要があるけど名乗るだけなら魔法陣さえ使えればいいので小さな子供だってなれる。
「欠損しているから仕事を受けるのにも苦労してそうですよね。そうなると腕を使わなくてもこなせる仕事を中心に……ってなると初級時代が長くなりそうですね」
「ああ、だから中々階級が上がらないのですネ」
「悪い出来事も起こってないからふつーに頑張って暮らしてそーだよね」
「だねぇ」
「こうやって設定を考えていくと言うのも楽しいですネ」
「んふふ。そうですね」
「ナギねーちゃんの駒はどんな人かなー」
「僕の? んー」
能力は高いけど中々階級が上がらなかったし、その時は悪い出来事があった。
悪い出来事というのはすごろくで定番の一回休みだったり資金や幸福度が下がるものだ。
起こった出来事を元に考えると……。
「学校を卒業するまでは能力が高くてうまく行っていたけどそのおかげで傲慢な性格に育ってしまってしまったんだ。
自分の才能を生かそうといざ冒険者になってみるとその傲慢な性格から初級の仕事が中々うまく行かず信用を得られない為階位を上げられなかったけど、自分の傲慢さと行動を顧みて反省したおかげでようやく階位を上げられたんだ。
けど沁みついてしまった傲慢さは完全には拭えず私生活とかではまだ傲慢さが出る事がある……みたいな?」
「おお……けっこー考えてるんだね」
「ミサさんの駒の設定考えてたら自分のもやりたくなってね。アイネの方はどうなの?」
「あたしは全然考えてなかったなー。うーん……」
設定を考えるのは結構好感触だな。これなら僕の用意したのもいけるか?




