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ヘレンの力

 仕事からアールスとアイネが帰って来て再会を喜び合った後ヘレンの事を紹介した。

 その際アイネは大きさに喜び背中に乗りたいと言ってきたのでヘレンに許可を貰ってからアイネをヘレンの背中に乗せた。

 相変わらず高い所が好きなようでよくはしゃいでいる。背中に乗られはしゃがれているのがヘレンは嬉しそうだ。


「ねぇナギ」

「ん? なに? アールスも乗りたい?」

「乗りたい! ……じゃなくてヘレンちゃんって何できるの?」

「きちんと確かめたわけじゃないけど、固有能力は液体固定で特殊スキルがペネトレイト・ホーンってあったから多分液体を角みたいに固める事が出来るんじゃないかな。

 他に何が出来るかは明日都市の外に出て確かめるつもりだよ」


 ああ、そう考えると今日毛の手入れをしなくて良かったかもしれない。明日外に出れば汚れるかもしれないからな。


「ナギと魔獣達だけで行くの?」

「まだ誰にも明日の予定は聞いてないけど一応そのつもり。帰ってきたばかっりだからゆっくりしたいだろうしね。魔獣もヘレン以外はついてきたい仔だけにするつもりだよ」

「そっか。それじゃあ私もついて行こうかな。明日は休みにするつもりだったし」

「折角の休みに僕の用事に付き合っちゃっていいの?」

「いいよいいよ。久しぶりにナギと話したいし」

「分かった。じゃあ明日は一緒に行くという事で」

「何か持っていくものとかあるかな?」

「特にないと思うからいつも通りでいいと思うよ」


 いつも通りというのは外に出る場合の事で武装をするという事だ。




 そして次の日、結果としてついてくる人はアールス以外にはいなかった。

 ついてくるかと思ったアイネは仕事でレナスさんは仕事の報酬を銀行に預けに行き、ついでに買い物をしてくるそうだ。

 ミサさんとカナデさんは家で休んでいる。

 魔獣達もついてきたのはナスだけだった。

 ヘレンはナスが人の言葉を話している事に驚き自分も話せるようになりたいと言ってたが、まずは他人の言葉を理解できないと話せるようになるのは難しい……が、そこは僕と話をしていればナス達みたいに自然と覚えられるだろう。


 都市を出てさほど離れていない所でヘレンにペネトレイト・ホーンを試しにやってみせて貰う。

 するとヘレンは自分の頭に水を生み出し徐々に伸ばしていく。

 水を生み出すと同時に固定しているのだろう。水はやがて広がりを見せ、そこからさらに角が生えまるで手のような形になった。

 そして指先に当たる部分は鋭くとがっている。まさしくヘラジカの角に似た形だ。


「おー、すごい。ヘレンちゃんかっこいい!」

「どれぐらいの強度があるんだろ。ヘレン。今的作るからそれに攻撃して見せてくれるかな?」

「くー」


 とりあえず手始めにアースウォールを使い攻撃しやすい高さになるように的を作ってみる。

 硬さはさほどないただの土の塊だ。

 その土の塊をヘレンは頭を下げ、突進をし土の塊に水の角を突き立てた。

 先端の角は土に埋まっている。ヘレンはそこからさらに頭を上げ土の塊を完全に地面から分断させ持ち上げた。


「すごい首の力だね。あれやって傷めないかな……」

「角を自由に動かせればもっと使いやすそうだけどなー。固めた液体って形変えられないのかな」

「聞いてみようか」


 聞いてみると出来ることは出来るが柔らかくしないと出来ないらしい。

 ならばと僕はさらに聞いてみる。

 液体を部分的に硬く出来れば本当の手のように骨に当たる部分を作り周りに肉となる柔らかい液体を纏えれば応用が利く。

 しかし、部分的に強度を変えるというのは出来ない様だ。


 ならばとアールスが鎧は作れないかと聞くとそれは出来た。

 最初関節部分を気にしないで作ってしまったため動けなくなってしまったがその次の実験ではきちんと動けるように出来ていた。

 そこまでやってどれくらいの強度があるのかを確かめたくなった。

 ヘレンに液体を身体から離れた場所まで伸ばしてもらい確かめてみる。

 最初に手袋越しに触ってみると硬い金属のような感触がした。剣の持ち手部分で叩いてみると金属がぶつかり合う音がする。

 アールスも同じ事をして感嘆の溜息をつき言った。


「こうしてみると本当固有能力って不思議だよね。ただの水が金属みたいになっちゃうんだから」

「そうだね。これなら鎧として十分機能しそうだ。

 ヘレン。次は動かせるぐらい柔らかくしてくれるかな」

「くー」


 ヘレンが返事をすると水の塊が徐々に柔らかくなっていく。

  

「……この感触覚えがあるな」


 柔らかくも触れても手が濡れない。これはジーンさんの魔獣であるラサリザのヴェロニカさんが纏っていた液体の感触に似ている。

 なるほど、もしかしたらヴェロニカさんもヘレンと同じ固有能力を持っていたのかもしれないな。


「あははっ変なのー」


 水の塊はぷにぷにと弾力が出るようになった。しかし不思議な物で先端部分を曲げようとしてもまるで芯があるかのように動かせない。ぷにぷにと弾力があって押せばへこんで芯が無いように思えるのに。


「ヘレン。この強度を保ったまま動ける?」

「くー」


 出来るという返事だけで動こうとはしない。きっと動いたら僕達が危ないと思ったからだろう。


「ふむふむ。ちょっと切ってみていいかな?」

「くー」


 許可が出たので剣を抜き切ろうとするが水の塊は妙な手ごたえがあるだけで切れなかった。


「無理か」

「私もやってみる」


 そう言ってアールスは自分の剣を抜いた。

 そして目にも止まらない速度で剣を振るうと水の塊は切れた。


「あれ?」

「んー? ナギの剣貸して?」

「う、うん。いいよ」


 アールスに僕の剣を貸しもう一度水の塊を切ってもらう。すると今度は切れなかった。


「切れたのは剣の切れ味の差だね」

「なるほど。僕の剣はそれほど切れ味良くないからね」


 切れない事は無いが重さで叩き切る剣だ。

 それに対してアールスの剣は切れ味を高めた剣で刀によく似た細身の剣である。


「ある程度斬撃に対する強度があるのは分かったね」


 そうなると一つヘレンに提案がある……あるのだが僕的には少し提案しがたい内容だ。


「……ヘレン。この柔らかい水を全身に纏って物にぶつかっても大丈夫なように出来るかな」

「くー?」

「あっ、口と鼻、耳、後目の周辺は覆わなくていいからね」


 ヘレンは僕の言う通り全身に水を纏う。


「冷たくない?」

「くー」


 温度は大丈夫と。凍って無いって事は外気温よりも水温が高いって事だろうから大丈夫か?

 しかし、常時水を纏っていたら体毛が痛みそうだ……。


「じゃあそのままの状態で僕が土人形作って操るから色々実験しようか」


 そして、実験した事によっていろいろな事が分かった。

 まず打撃耐性が非常に高い事。ある程度の厚みがあれば半分も行かずに打撃は無力化される。

 二つ目は柔らかい水の塊で潰そうとしても厚みに余裕があれば潰すことは出来ない。窒息させる事は出来るかもしれないが、魔物は呼吸をしないので魔物には通じないだろう。

 三つ目は長時間維持し続ける事が出来るという事。どうやら一度固定化したら集中をとぎらせても効果は続く様だ。

 四つ目はマナを共有すれば僕でも水の塊を動かすことは出来る。

 しかし、ヘレン自身の操作でもそうなのだけど、水の塊はどんなに柔らかくしても素早く器用に動かすことは出来ない。

 ゆっくりとおおざっぱになら自由に形を変える事は出来るが実戦で利用するのは難しいだろう。

 そして、最後に調べるのが怖かったが電気の通しやすさを実験した。

 結論から言うと電気は全く通さなかった。試しに火で焙っても変化がなかった事から固定化されるとまるでブリザベーションがかけられたかのように影響を受けない、もしくは受けにくくなるのかもしれない。


 ヘレンの固有能力もナスやヒビキに負けないくらい強力な物だ。特殊スキルの名前で攻撃に向いた物かと思ったがとんでもない。

 これほど守りに向いた固有能力は僕はちょっと知らないな。

 マナの届く範囲ならどこでも出せるアースのソリッドウォールと違って範囲は狭いが壁を作るならソリッドウォール以上の使いやすさだだ。


 そして、ヘレンは傷つけるだけじゃないく守る事に向いた魔獣だという事が僕はとても嬉しく思うのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 返事の返事失礼しますね。 自分だったら教えるかな? 似た能力を使ってくる敵がいて、想定される使い方として教えて、その警戒や対抗手段を考えてもらう・一緒に考える為にも。 万一の自衛手段として…
[一言] 操作できる液体の範囲はどれ位? 動物の血も水分があるわけで、それを操作・固定化出来たら物騒どころの話じゃなくなる。 ただの水でも相手の体内へ送り込んで、内蔵で大きな水の突(細)剣にして……巨…
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